この研究は、中国の研究機関の研究論文です。
掲載誌:npj Science of Food
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
根以外の部位も含めて植物全体を調べる
ダイオウ(ルバーブ)はタデ科の多年草です。欧米では葉柄がジャムやパイ、ジュースなどの食品に使われています。中国では、根が伝統的な生薬として長く利用されてきました。根にはアントラキノン類と呼ばれる成分が豊富に含まれます。一方で、収穫時には根以外の部位が捨てられることが多く、研究チームはこれを資源の無駄と指摘しています。
研究チームは、青海・チベット高原に自生するRheum tanguticumを対象にしました。根、葉柄、葉の三つの部位について、含まれる成分と、組織の内部にすむ微生物(内生菌)を比較しています。内生菌とは、植物を病気にせずに組織の中で暮らす細菌や菌類のことです。植物は季節に応じて代謝を変え、内生菌の顔ぶれも時期によって移り変わると考えられています。そこで研究チームは、芽吹き直後の時期、生育期、枯れ始める時期という三つの生育段階で試料を採取しました。
成分の違いは「時期」より「部位」で大きい
研究チームはまず、あらかじめ対象を絞らずに幅広い物質を網羅的に測る手法(非標的メタボロミクス)を使いました。その結果、3479種類の代謝物を検出し、そのうち2164種類の物質の種類を推定しました。最も多かったのは、フラボノイドなどを含むフェニルプロパノイド・ポリケチド類でした。
統計解析では、成分の構成の違いを説明する度合いは、部位の違いのほうが生育段階の違いよりはるかに大きいという結果になりました。同じ時期に部位どうしを比べたときの違いは、同じ部位を時期ごとに比べたときの違いより大きかったと報告されています。
部位ごとに見ると、時期の影響の受け方にも差がありました。根の成分は時期を通じて比較的安定していました。これに対し、葉柄と葉は時期によって大きく変化し、特に葉で変化が目立ちました。葉には固有の代謝物が最も多く、根がそれに続きました。葉柄には固有の代謝物がほとんど見られませんでした。著者らは、葉柄が主に植物体を支え、水や養分を運ぶ役割を担っていることと関係する可能性を挙げています。同時に、葉柄は水分が多いため、量の少ない成分が測定で検出されなかった可能性もあると述べています。
アントラキノンは主に根に、有機酸は葉柄に
主要なアントラキノン類については、量を定める分析でも確かめられました。総アントラキノンのほか、アロエエモジン、レイン、クリソファノール、フィスシオンは、いずれも根で有意に多く含まれていました。ただしエモジンだけは葉に多く含まれていました。根のアントラキノン類の量は芽吹き直後の時期に最も高く、生育期に最も低くなりました。枯れ始める時期にはふたたび増えていました。著者らはこの分布について、葉で作られた成分が生育期の終わりに根へ移され、蓄えられるという考え方で説明しています。
葉柄には、リンゴ酸やフマル酸などの有機酸が多く蓄積していました。リンゴ酸、フマル酸、ピルビン酸は生育期に多く、ジャスモン酸やマロン酸は芽吹き直後の時期に多い傾向でした。また論文は、葉柄に含まれる下剤作用をもつ成分が根より大幅に少なかったと述べています。著者らはこれらの結果が、葉柄を食用資源として使うことを後押しする材料になると論じています。
内生菌の分布と成分との関係
内生菌の群集構成も、まず部位によって大きく分かれ、次いで生育段階の影響を受けていました。これは細菌と菌類の両方に当てはまりました。種類の豊富さや多様性の指標は、根、葉柄、葉の順に低くなりました。成分の場合と同じく、時期による変化は葉柄と葉で大きく、根では小さいという結果でした。細菌と菌類のつながりを表すネットワーク解析では、芽吹き直後の時期よりも生育期と枯れ始める時期のほうが、つながりが多くなっていました。
さらに研究チームは、量の多い菌の属と成分量との相関を調べました。その結果、細菌のアクチノプラネス属やストレプトマイセス属、菌類のティタエア属やダクティロネクトリア属などは、アントラキノン類の量とおおむね正の相関を示しました。一方、スフィンゴモナス属やシュードモナス属、クラドスポリウム属などは、多くのアントラキノン類と負の相関を示しました。これらはあくまで量の増減が連動していたという関連の報告であり、菌が成分を増やすという因果関係を示したものではありません。
研究が示すもの
この研究は、ダイオウの根・葉柄・葉で成分の特徴がはっきり異なることを示しました。根は時期を通じて安定しており、地上部は季節の進み方に敏感に反応していました。また、特定の内生菌とアントラキノン類の量との間に関連が見られました。著者らは、これらの知見が根だけでなく植物全体を資源として活用するための基礎になり、収穫時期の検討や微生物の利用を考える手がかりにもなると位置づけています。
著者:Jianan Li(Northwest Institute of Plateau Biology, Chinese Academy of Sciences, Xining, China)、Bo Wang(College of Life Sciences, Northwest Normal University, Lanzhou, China)、Xue Yang(Northwest Institute of Plateau Biology, Chinese Academy of Sciences, Xining, China)、Tao Wang(Northwest Institute of Plateau Biology, Chinese Academy of Sciences, Xining, China)、Huiyuan Ma(Northwest Institute of Plateau Biology, Chinese Academy of Sciences, Xining, China)、Qin Meng(Northwest Institute of Plateau Biology, Chinese Academy of Sciences, Xining, China)、Guoying Zhou(Northwest Institute of Plateau Biology, Chinese Academy of Sciences, Xining, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jianan Li, Bo Wang, Xue Yang, et al. Resource utilization and phenological dynamics in underground-aboveground parts of Rheum tanguticum via metabolomics and microbiomics. npj Science of Food 2026-10-02. DOI: 10.1038/s41538-026-01185-9. 原著ライセンス:CC BY.