著者の所属・活動拠点の国は、イタリアです。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

肉の代わりに植物のたんぱく質を使う「代替肉」では、たんぱく質を加工して肉のような繊維状の食感を持たせた素材がよく使われます。その一つが、押出成形という加熱・加圧の工程で作られる「テクスチャー化植物性たんぱく質(TVP)」です。乾燥した多孔質の素材で、水で戻してから使います。代替肉の用途の中でもバーガーは代表的なものですが、TVPだけでは、まとまりや保水性、加熱時の形の安定が十分でないことが多いとされています。

そこで、水と結びついてとろみやゲルを作る多糖類(ハイドロコロイド)が「つなぎ」として加えられます。代表的なのは、セルロースを化学的に加工したメチルセルロース(MC)と、その仲間のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)です。どちらも加熱するとゲル化する性質を持っています。一方、セルロース由来の素材に代わるものとして関心を集めているのが、オオバコ属植物に由来する水溶性食物繊維のサイリウムです。サイリウムは水を含むと、加熱によるゲル化とは異なる仕組みで、弱いゲルのような性質を示します。

著者らは、エンドウ豆由来のTVPとサイリウムの組み合わせはまだほとんど調べられていないと指摘しています。さらに、材料を混ぜるときの温度とつなぎの種類が、生地や焼いた後のバーガーの性質にどう影響し合うのかについても情報が限られているとしています。研究チームは、サイリウムがMCやHPMCに匹敵する働きをするか、そして混ぜる温度との組み合わせで結果がどう変わるかを調べました。

何をどう調べたか

研究チームは、黄色エンドウ豆由来のTVPに、MC、HPMC、サイリウムのいずれか、または3種を等量ずつ混ぜたものを、乾燥原料全体の1%加えました。つなぎを加えないTVPのみの試料も比較対象として用意しています。添加量をあえて低く抑えたのは、少量でもつなぎの違いが表れるかを確かめるためです。

まず粉砕したTVPとつなぎの混合物について、水や油をどれだけ抱え込めるか、水にどれだけ溶け出すか、泡立ちやすさと泡の持ちといった基本的な性質を測りました。次に、水と混ぜた状態での粘り(粘度)や、こねるときの抵抗の大きさ(トルク)を、5、10、15、25℃の4つの温度で調べました。

さらに実際にバーガーを作りました。材料をあらかじめ4つの温度のいずれかに調整してから混ぜ合わせ、成形してオーブンで焼きました。なお、混ぜた後の生地の温度は測っておらず、論文中の温度は材料を調整した温度を指しています。焼く前と焼いた後の硬さ、焼いたときに重さがどれだけ減るか(加熱減量)などを測定し、統計解析でつなぎの種類と温度の影響を分けて評価しました。

主な結果

基本的な性質では、つなぎを加えても水への溶け出しやすさや油の抱え込みにはほとんど影響がありませんでした。一方、サイリウムを加えた試料は、TVPのみの試料より水を抱え込む量が少なくなりました(1gあたり約2.3gに対し約2.0g)。サイリウムは本来水と強く結びつく素材なので、直感に反する結果です。著者らは、サイリウムが水を周囲に引き留め、TVP内部に保持される水が減った可能性を挙げています。ただし、これは今後確かめるべき仮説だとしています。3種混合の試料は、泡立ちやすさと泡の持ちが最も高くなりました。

粘度は、温度が25℃から5℃へ下がるほど、どの試料でも高くなりました。つなぎの種類によっても粘度は異なり、MCやHPMCを加えると、おおむねTVPのみより粘度が高くなりました。こねるときの抵抗は主につなぎの種類に左右され、その影響の出方は温度によって変わりました。MCは5℃で最も低く、10℃で最も高い値を示しました。3種混合は15℃と25℃で比較的高い抵抗を示しました。

バーガーの硬さでは、焼く前と焼いた後で影響する要因が入れ替わりました。焼く前の硬さには主に混ぜる温度が影響し、つなぎの種類の影響は統計的に明確ではありませんでした。焼いた後の硬さには主につなぎの種類が影響し、混ぜる温度の影響ははっきりしませんでした。焼いた後の硬さは、10℃と15℃ではサイリウム入りがMCやHPMC入りより低くなりました。

加熱減量は、温度、つなぎの種類、両者の組み合わせのすべてに影響されました。MCは温度による違いが大きく、10℃では加熱減量が最も少なかった一方、25℃では最も多くなりました。3種混合は15℃で最も加熱減量が少なくなりました。サイリウムは温度による変動が比較的小さかったものの、ほかのつなぎより一貫して加熱減量を抑えたわけではありませんでした。バーガーの水分量や水分活性には、配合による差は見られませんでした。また、複数の測定値をまとめた解析から、焼く前の生地の硬さは焼いた後の食感と直接には結びついていないことが示されました。

研究が示すこと

著者らは、つなぎの働きは水を含ませる条件、混ぜる温度、その後の加熱によって変わると結論づけています。調べたすべての性質で一貫して優れていた配合はありませんでした。サイリウムは一部の性質で温度の影響を受けにくい傾向を示しましたが、MCやHPMCをそのまま置き換えられる万能のつなぎとは言えない結果でした。

また、焼く前の生地の状態からは焼き上がりの食感を予測しにくいことも示されました。植物性バーガーの配合では、つなぎを選ぶ際に混ぜる温度や加熱の工程まで含めて考える必要があることがうかがえます。なお、今回の結果は添加量1%という低い濃度での結果であり、著者らはその範囲内で解釈すべきだとしています。

原著論文の著者・所属:Andrea Bresciani(Department of Food, Environmental and Nutritional Sciences (DeFENS), Università Degli Studi di Milano, Via G. Celoria 2, 20133 Milan, Italy)、Francesca Girotto(Department of Environmental Science and Policy (ESP), Università Degli Studi di Milano, Via G. Celoria 2, 20133 Milan, Italy)、Alessandra Marti(Department of Food, Environmental and Nutritional Sciences (DeFENS), Università Degli Studi di Milano, Via G. Celoria 2, 20133 Milan, Italy)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Andrea Bresciani, Francesca Girotto, Alessandra Marti. Effects of Hydrocolloid Type and Mixing Temperature on the Properties of Pea-Based Texturized Vegetable Protein Burgers. Foods 2026-10-22. DOI: 10.3390/foods15213785. 原著ライセンス:CC BY.