著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。

掲載誌:Journal of food science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

ジュースを作る過程では、果肉や皮などの搾りかすが大量に発生します。これらは栄養価が高いにもかかわらず、多くが廃棄されているのが現状です。ブラジル・南リオグランデ連邦大学の研究グループは、いちご・パイナップル・生姜のジュース搾りかすを粉末に加工し、植物性バーガーの材料として活用できるかを調べた研究をジャーナル・オブ・フードサイエンスに発表しました(2026年08月掲載予定)。

使用した搾りかすは、実際にジュースメーカー(Super Labs社、ブラジル)から供給されたもので、いちご45%、パイナップル(皮を除いたもの)45%、生姜10%という、実際の製造現場で生じる配合比そのままが用いられています。研究チームはこれを45℃で16時間乾燥させたのち粉砕し、粒径30メッシュ以下の粉末(ミックスフルーツ残渣粉末)を作りました。

ミックスフルーツ残渣粉末には何が含まれていたか

分析の結果、この粉末には乾物あたり35.76g/100gという高い食物繊維含量が確認され、その約76%を不溶性食物繊維が占めていました。また、ポリフェノール化合物として、プロトカテク酸、p-クマル酸、カテキンなど7種類が同定され、合計含量は513.24mg/100gに達しました。アントシアニンについてはペラルゴニジンとシアニジンの2種(合計7.15mg/100g)が検出され、いちご由来と考えられるとされています。抗酸化力を示すORAC値は377.21µmol TE/gで、比較として論文中に挙げられている生姜の凍結乾燥品(約228µmol TE/g)やパイナップル粉末(約20µmol TE/g)の値と並べても高い部類に位置づけられています。

さらに研究チームは、この粉末の抽出液をFusarium proliferatumおよびFusarium verticillioidesという2種のカビ(フザリウム属)に対して培地に加える実験も行いました。濃度2.5%では菌糸成長の抑制率がそれぞれ25.53%、17.77%にとどまりましたが、濃度5.0%では73.38%、65.11%まで上昇し、濃度依存的にカビの増殖を抑える効果が確認されました。著者らは、この効果は粉末に含まれるp-クマル酸やクロロゲン酸などのポリフェノール化合物によるものと考察しており、天然の保存性を持つ食品素材としての可能性を示唆しています。

植物性バーガーに加えてみると

次に研究チームは、ひよこ豆をベースにした植物性バーガーに、このミックスフルーツ残渣粉末を10%(H10)または15%(H15)の割合で加え、粉末を加えていない対照品(H0)と比較しました。なお、H10・H15では対照品に含まれていたオートミールと亜麻仁粉がこの残渣粉末に完全に置き換えられており、著者らは「残渣粉末単独の効果というより、配合全体の違いとして結果を解釈すべきである」と限界を明記しています。

成分を見ると、灰分(ミネラル分の指標)は対照品の1.70g/100gからH10で2.95g/100g、H15で3.36g/100gへと増加し、食物繊維量も7.19g/100gから8.28、8.99g/100gへと粉末の添加量に応じて増えました。一方で水分含量は61〜62%台とほぼ同水準に保たれ、他の植物性バーガー製品と比べても遜色ない範囲だったとされています。テクスチャー分析でも構造の安定性や調理特性は損なわれておらず、粉末を加えても製品としての品質は保たれていたと報告されています。

97名の訓練を受けていない一般消費者による官能評価では、9段階の嗜好尺度(1=非常に嫌い〜9=非常に好き)で総合評価がH10で7.56点、H15で7.40点となり、7項目中5項目で受容指数(満点に対する割合)が80%を超えたということです。官能評価の自由記述では、粉末に含まれる生姜の風味が製品の香りや味わいに影響していたことが報告されており、著者らはこの残留香が消費者受容にとってのリスクになり得るとも述べています。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

この研究は、実際の産業由来の搾りかすを対象に、粉末化から食品への応用、抗酸化・抗カビ作用の評価、消費者による官能評価までを一連で検証した点に特徴がありますが、単一の研究であり、ここで得られた数値や効果がそのまま他の果物残渣や製品に当てはまるとは限りません。また、バーガーの配合比較は前述の通り複数の材料変更を伴っており、残渣粉末だけの効果を切り分けたものではない点も留意が必要です。抗カビ活性についても、あくまで培地上でのカビの増殖抑制を調べた実験であり、実際の食品保存における効果を直接示したものではありません。

今回の研究結果は、廃棄されがちな果物加工副産物を食物繊維やポリフェノールを含む機能性素材として活用し、植物性食品の栄養価向上や食品廃棄物の削減につなげる可能性を示すものです。ただし、健康効果や保存効果を断定するものではなく、今後さらなる検証が必要な段階にあるといえます。

原著論文の著者・所属:Espinosa LDC(Bioactive Compounds Laboratory, Food Science and Technology Institute, Federal University of Rio Grande do Sul, Porto Alegre, Rio Grande do Sul, Brazil.)、Crizel TM(Bioactive Compounds Laboratory, Food Science and Technology Institute, Federal University of Rio Grande do Sul, Porto Alegre, Rio Grande do Sul, Brazil.)、Souza P(Bioactive Compounds Laboratory, Food Science and Technology Institute, Federal University of Rio Grande do Sul, Porto Alegre, Rio Grande do Sul, Brazil.)、Varesano GR(Bioactive Compounds Laboratory, Food Science and Technology Institute, Federal University of Rio Grande do Sul, Porto Alegre, Rio Grande do Sul, Brazil.)、Corrêa ANR(Laboratory of Nanotechnology and Applied Microbiology, Food Science and Technology Institute, Federal University of Rio Grande do Sul, Porto Alegre, Rio Grande do Sul, Brazil.)、Köhn CR(Bioactive Compounds Laboratory, Food Science and Technology Institute, Federal University of Rio Grande do Sul, Porto Alegre, Rio Grande do Sul, Brazil.)、Brandelli A(Laboratory of Nanotechnology and Applied Microbiology, Food Science and Technology Institute, Federal University of Rio Grande do Sul, Porto Alegre, Rio Grande do Sul, Brazil.)、Flôres SH(Bioactive Compounds Laboratory, Food Science and Technology Institute, Federal University of Rio Grande do Sul, Porto Alegre, Rio Grande do Sul, Brazil.)、Rios AO(Bioactive Compounds Laboratory, Food Science and Technology Institute, Federal University of Rio Grande do Sul, Porto Alegre, Rio Grande do Sul, Brazil.)

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Espinosa LDC, Crizel TM, Souza P, et al. Upcycling of Mixed Fruit Juice By-Products for Flour Production and Application in Plant-Based Burgers. ジャーナル・オブ・フードサイエンス (2026). DOI: 10.1111/1750-3841.71331. 原著ライセンス: cc-by.