著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Nutrients

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

10〜12歳は体が急速に成長し、学業の負担も増え始める時期で、健康的な生活習慣を身につけるうえで大切な年代とされています。世界的には子どもの筋力や持久力などの体力低下が報告されていますが、中国西部のように経済発展が比較的遅れた地域で、近年の子どもの体力がどう変化しているかを示すデータは限られていました。

研究チームが対象としたのは、中国西部の寧夏です。都市と農村の格差が大きく、食生活の変化も続いている地域です。この期間には新型コロナウイルスの流行がありました。また2021年には、学業負担や放課後の学習塾通いを減らし、学校での運動時間を確保することを目指す「双減」政策が全面実施されています。著者らは、流行前の2019年と2024年を比べて10〜12歳の子どもの体力がどう推移したかを調べ、あわせて朝食や卵、牛乳、甘い飲み物といった食習慣と体力との関連を検討しました。

何をどのように調べたか

データには、中国全国の学生の体格と健康を調べる大規模調査を用いました。2019年と2024年にそれぞれ別の子どもたちを調べた結果を比較する方法で、同じ子どもを追跡したものではありません。データの不備などを除いた結果、分析対象は3970人となりました。内訳は2019年が1447人、2024年が2523人で、男女はほぼ半数ずつでした。

体格については、身長と体重から肥満度の指標であるBMIを計算し、普通体重・過体重・肥満に分類しました。体力については、訓練を受けた体育教員が標準的な手順で測定しました。測定項目は、50メートルを8回往復する持久走、上体起こし(腹筋運動)、長座体前屈(柔軟性)、50メートル走(スピード)、1分間の縄跳び(協調性)です。結果には肺活量も含まれています。

食習慣は4つの質問で尋ねました。過去7日間に朝食を食べた日数、卵を1個以上食べた日数、牛乳・ヨーグルト・豆乳を1杯以上飲んだ日数、そして過去30日間に甘い飲み物を1日に何回飲んだか、です。分析は男女別に行いました。年齢、BMI、調査年、身体活動量、睡眠時間の影響を統計的に差し引いたうえで、食習慣と体力の関連を調べています。多くの比較を同時に行うと偶然の差が「意味のある差」に見えやすくなるため、その点を補正する手法も用いました。

主な結果

2019年から2024年にかけて、多くの体力指標が改善していました。男子では、肺活量、上体起こし、往復持久走のタイム、縄跳び、長座体前屈がいずれも有意に向上しました。なかでも肺活量の伸びが大きかったと報告されています。一方、男子の50メートル走はタイムが遅くなっていました。女子でも肺活量、上体起こし、長座体前屈、往復持久走、縄跳びが向上しましたが、50メートル走には有意な変化がありませんでした。

同じ期間にBMIは男女とも上昇しました。男子では過体重と肥満の割合が増え、体格区分の分布に有意な変化がみられました。女子では区分の分布に有意な変化はありませんでした。

食習慣と体力の関連は、全体として弱いものでした。男子では、朝食を食べる日が多いほど1分間縄跳びの成績が良いという関連があり、補正後も統計的に意味のある関連として残りました。卵と上体起こし、牛乳と縄跳びの間にも正の関連がみられましたが、補正後には有意ではなくなりました。女子の卵と上体起こしの関連も、補正後は有意水準をわずかに上回りました。

甘い飲み物については、男子では飲む頻度の区分によって上体起こしの成績に差がみられました。女子では上体起こし、50メートル走、往復持久走、縄跳びの4項目で差がありました。著者らは、甘い飲み物を多く飲む区分ほど、スピードや敏捷性、跳ぶ能力に関わる成績が低い傾向があったと述べています。

この研究が示すこと

著者らによると、寧夏の10〜12歳の子どもは、この5年間で体力が全体として向上していました。その一方で、特に男子では体重増加への懸念も同時に生じています。体力の向上については、学校体育の充実や「双減」政策などが背景にある可能性が挙げられています。ただし、これらの政策の実施状況は直接測定されていないため、著者らはあくまで考えられる説明の一つとして位置づけています。

食習慣と体力の結びつきは、個々の習慣だけを見ると控えめでした。著者らは、体力の変化には食習慣だけでなく、生活習慣や環境が複合的に関わっていると考えています。また、この研究は異なる時点の集団を比べたものであり、食習慣が体力の差を引き起こしたとまでは言えません。食事の質全体や家庭の経済状況、思春期の発達段階を調べていない点も限界として挙げられています。著者らは、体力の向上と体重増加が同時に起きている現状を踏まえ、運動の促進、健康的な食習慣、体重の定期的な把握を組み合わせた取り組みが大切だと結論づけています。

原著論文の著者・所属:Junying Liu(Faculty of Education, Shaanxi Normal University, Xi’an 710119, China)、Xinxin Zhang(School of Physical Education, Shaanxi Normal University, Xi’an 710119, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Junying Liu, Xinxin Zhang. Trends and Associations of Physical Fitness and Dietary Behaviors Among Children Aged 10–12 Years in Ningxia Between 2019 and 2024. Nutrients 2026-08-03. DOI: 10.3390/nu18152510. 原著ライセンス:CC BY.