著者の所属・活動拠点の国は、メキシコです。
掲載誌:Emergentes - Revista Científica
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:授業での学びは学生本人と家族に届くのか
乳幼児期の食生活は、成長や発達、生涯にわたる健康と深く関わります。子どもの食べ方は、家庭の習慣や食べ物の手に入りやすさ、食事に関わる大人のふるまいなどの影響を受けて形づくられます。そのため、将来幼い子どもに関わる保育・幼児教育の担い手が、栄養についてどのような学びを得るかは重要だと著者らは指摘しています。
一方で、健康的な食事について知ることと、それを毎日の習慣に取り入れることは別の問題です。研究チームはさらに、大学で学んだことが家族へ伝わること(情報の共有)と、家族の食習慣が実際に変わること(実践の変化)も区別して考える必要があるとしています。
この研究は、幼児教育学士課程で「子どもの栄養」という授業科目を受講した学生が、受講後にどのような変化を感じたのかを調べたものです。とくに、栄養知識についての自己評価、本人の食習慣、そして学びが家庭に伝わったかどうかの3点に注目しています。
調べ方:受講を終えた61人へのアンケート
対象は、2024〜2025年度にこの授業科目を最後まで受講し、参加に同意した学生61人です。平均年齢は21.3歳で、83.6%が家族と同居していました。
学期末に、23問からなるオンラインのアンケートに匿名で回答してもらいました。質問は、属性、受講前と受講後の栄養知識の自己評価、本人の食習慣の変化、家族への共有と家族の食習慣の変化という4つの領域で構成され、選択式の質問と自由記述が含まれています。
注意点として、これは一時点で回答を集めた記述的な調査で、比較のための受講しなかったグループはありません。受講前の知識の評価も、学期末に「受講前はどうだったか」を振り返って答える形式でした。また、アンケートは教員による内容確認を経たものの、測定道具としての正式な妥当性・信頼性の検証は行われていません。このため著者らは、結果を授業の効果の証明ではなく、学生自身が感じた変化として読むべきだと明記しています。
主な結果:本人の変化は大きく、家族への共有は多いが、家族の実践の変化はそれより少ない
栄養知識の自己評価は、受講後に大きく上向きました。受講前について「とても低い」「低い」「普通」と答えた学生は82.0%でしたが、受講後は85.2%が「良い」または「とても良い」と答え、「低い」「とても低い」を選んだ人はいませんでした。一人ひとりで見ると82.0%が評価を上げ、受講前後の差は統計的にも意味のある大きさでした。ただし著者らは、これは客観的なテストで測った学習量ではなく、自分の知識に対する認識の変化であると強調しています。
86.9%の学生が、少なくとも一つの食習慣を変えたと答えました。増えたものとして多かったのは水(93.4%)、新鮮な果物(90.2%)、野菜(73.8%)で、減ったものとしては清涼飲料などの甘い飲み物(70.5%)、ファストフード(54.1%)、揚げ菓子類(50.8%)が多く挙げられました。1日3食をとる、加工食品を減らす、食事を計画するなど、食事の組み立て方に関わる変化を挙げた学生もいました。
家庭への広がりについては、91.8%が授業で学んだことを家族の誰かに伝えたと答えました。一方、家族の食習慣が実際に変わったと答えたのは55.7%で、23.0%は変化が見られなかった、21.3%はよくわからないと答えています。家族の変化として挙げられたのは、野菜や水、果物が増えたこと、清涼飲料やファストフードが減ったこと、一緒に食事をする機会が増えたことなどでした。
自由記述では、「目が開かれた」「自分は栄養をとっていたのではなく、空腹を満たしていただけだと気づいた」「自分が健康的に食べていないのに、子どもたちにそうするよう求めることはできない」といった声が見られ、食への気づきや将来の仕事とのつながりを語る回答があったと報告されています。
この研究が示すこと
著者らが特に重視しているのは、家族に「伝えた」学生(91.8%)と、家族の習慣が「変わった」と感じた学生(55.7%)のあいだにある36.1ポイントの差です。この差は、知識を伝えることと、それが実際の行動に結びつくことは関連しつつも別の過程であることを示している、と研究チームは解釈しています。食の選択は家庭の事情や文化、経済状況など多くの要因に左右されるためです。
この結果から著者らは、栄養の授業が大学の教室の中にとどまらず、学生自身の気づきや習慣、さらに家族との会話へと広がりうること、そして学生が家庭の中で学びの橋渡し役になりうることを示唆しています。同時に、すべては学生の自己報告に基づくもので、授業が変化を引き起こしたと結論づけるものではない、という慎重な位置づけも示されています。
著者:Inocencia De La Paz Orozco(Universidad Autónoma de Nayarit)、María del Carmen Llanos Ramírez(Universidad Autónoma de Nayarit)、Petra de Jesús Cortés García(Universidad Autónoma de Nayarit México)、María Guadalupe Pineda-Guerrero(Universidad Autónoma de Nayarit)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Inocencia De La Paz Orozco, María del Carmen Llanos Ramírez, Petra de Jesús Cortés García, et al. Nutrición Infantil como experiencia formativa: cambios reportados en estudiantes de Educación Infantil y transferencia de aprendizajes al entorno familiar. Emergentes - Revista Científica 2026-10-06. DOI: 10.60112/erc.v6.i3.916. 原著ライセンス:CC BY.