著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Jurnal Studi Pendidikan Anak Usia Dini
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の背景と目的
インドネシア・プカンバル市のプルティウィ幼稚園で、5〜6歳の子どもたちに栄養のある食べ物について学んでもらうため、調理体験を取り入れた授業を行った研究です。著者らによると、この幼稚園ではそれまで、ワークシートと口頭での説明が中心の授業でした。その結果、子どもたちは栄養のある食べ物の種類や、健康的な食べ物の良さ、食べ物の選び方を十分に理解できていなかったといいます。
最初の観察では、多くの子どもが健康的な食べ物とそうでない食べ物を区別できていませんでした。また、飴や色付き飲料などの砂糖・塩・着色料を多く含むおやつを日常的に食べており、お弁当も加工食品や包装食品が中心だったと報告されています。授業前の評価では、全体の達成度は39%でした。項目別では、栄養のある食べ物の例を挙げる力が30%、食材を知っている力が45%、健康的な食べ物とそうでない食べ物を区別する力が25%、健康的な食べ物の良さを挙げる力が32%にとどまりました。
幼い子どもは実際に体験しながら学ぶという考え方に基づき、研究チームは、子どもが自分で食材に触れて調理する「クッキングクラス」によって、栄養のある食べ物についての知識を高めることを目指しました。
どのように調べたか
研究には「授業改善研究(クラスルーム・アクション・リサーチ)」と呼ばれる方法が用いられました。これは、教育現場の実際の課題について、計画、実践、観察、振り返りの流れを繰り返し、授業を少しずつ改善していく方法です。対象は、この幼稚園の年長クラスにあたる5〜6歳児14人全員です。研究者が授業を行い、担任の先生が観察と振り返りに協力しました。
授業前の状態を確認したあと、2回の改善サイクルを実施しました。各サイクルは2回の授業で構成されています。第1サイクルでは、子どもたちがフルーツの串刺しと健康的なサンドイッチを作りました。第1サイクルの振り返りを踏まえて、第2サイクルでは説明をより順序立てたものにし、本物の食材をより具体的に使い、子どもの参加と先生の問いかけを増やしました。そのうえで、緑豆のおかゆとうずらの卵のスープを作りました。どの回も、食材の紹介、質疑応答、先生の実演、グループでの簡単な調理、作った料理の種類や良さについての話し合いという流れで進められました。
子どもの様子は観察記録と写真などの記録で把握しました。評価の中心となったのは、栄養のある食べ物の例を挙げる、使った食材を知る、健康的な食べ物とそうでない食べ物を区別する、健康的な食べ物の良さを挙げる、という4つの力です。これに加えて、協力する、先生の指示に従う、片付けをするなど、活動への関わり方も観察しました。それぞれの子どもは「まだ発達していない」「発達し始めている」「期待どおりに発達している」「とてもよく発達している」の4段階で評価されました。成功の目安は、75%以上の子どもが上位2段階に達することとされました。
主な結果
観察結果の平均の割合は、授業前の39%から、第1サイクルの2回目で57%に上がりました。さらに第2サイクルでは1回目が73%、2回目が84%となり、目安の75%を超えたと報告されています。
子ども一人ひとりの段階で見ると、第1サイクルで上位2段階に入ったのは14人中6人(42.86%)でした。一方、第2サイクルでは14人全員が上位2段階に達し、そのうち12人が最上位の「とてもよく発達している」と評価されました。
研究の終わりの時点で最も高い達成度を示したのは、健康的な食べ物とそうでない食べ物を区別する力で、93%でした。授業前には特に低かった項目です。著者らは、本物の食材を使った体験や、食べ物を仲間分けする活動、話し合いによって、子どもたちがこの違いを具体的に理解できるようになったと説明しています。また第2サイクルでの伸びには、本物の食材の使用、実際に手を動かす学び、先生による繰り返しの問いかけと説明、第1サイクルの反省を踏まえた改善が関わっていたと考えられる、と振り返っています。
この研究が示すこと
この研究は、一つの幼稚園の14人のクラスで、調理体験を取り入れた授業を段階的に改善していくなかで、栄養のある食べ物についての子どもたちの知識の評価が上がっていった様子を報告したものです。著者らは、ワークシートや言葉による説明だけでなく、食材を見て、触れて、調理し、話し合うといった体験を組み合わせることが、幼い子どもにとって栄養の考え方を身近なものにする授業方法の一つになりうると結論づけています。
原著論文の著者・所属:Sepri Zela(Universitas Lancang Kuning, Indonesia)、Heleni Filtri(Universitas Lancang Kuning, Indonesia)、Yesi Novitasari(Universitas Lancang Kuning, Indonesia)、Suharni(Universitas Lancang Kuning, Indonesia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sepri Zela, Heleni Filtri, Yesi Novitasari, et al. Kegiatan Cooking Class Sebagai Upaya Peningkatan Pengetahuan Makanan Bergizi Pada Anak Usia 5-6 Tahun di TK Pertiwi Kota Pekanbaru. Jurnal Studi Pendidikan Anak Usia Dini 2026-09-08. DOI: 10.58540/jspaud.v2i3.2425. 原著ライセンス:CC BY.