赤ちゃんが離乳を終えるころ、成長に必要な栄養を補う「おやつ」の役割が注目されています。共働き家庭の増加もあり、手軽で栄養価の高いベビーフードへの需要は広がっていますが、保護者が食品を選ぶ際にはアレルギーの心配も大きな判断材料になります。とりわけ乳児に人気のケーキ類は、食物アレルギーを起こしやすいとされる鶏卵、小麦、乳を材料に使うものが多く、これらを避けたい家庭にとっては選択肢が限られがちです。今回紹介する研究では、こうした特定原材料を使わずに、しかもおいしく食べてもらえる離乳期用ケーキの開発が試みられました。
地域の野菜と代替素材でケーキを試作
研究グループは、東広島産の野菜を使って自分たちで開発していた離乳用の野菜ペースト(ほうれん草、人参、ごぼう)と、同じ地域でとれた米粉、えごまパウダー、はと麦粉を組み合わせ、さらに卵白の代わりにアクアファバ(ひよこ豆のゆで汁)を使用した、5種類のケーキを調製しました。作り方は、粉類を規定量ふるって混ぜ合わせ、エスプーマ状(泡立てた状態)にしたひよこ豆のゆで汁と野菜ペーストを加えて生地を作り、ワッフルメーカーで焼き上げるというものです。出来上がったケーキは、使用した野菜ペーストの色がそのまま反映され、一口サイズに仕上げられました。
焼成後の物性と食べやすさの評価
焼成してから2時間後、24時間後、8日後の時点で、ケーキの色調と物性(最大荷重、最大応力、破断荷重)が測定されました。その結果、最大荷重と最大応力については、時間が経過しても差は見られませんでした。一方で破断荷重については、えごまパウダーを使っているかどうかによって、時間の経過とともに変化が見られるケーキがあったものの、いずれも離乳食完了期の目安とされる「歯ぐきで噛める」硬さに近い物性であったと報告されています。さらに、5歳以下の子どもを持つ保護者23人と学生15人を対象に官能評価(実際に食べてもらい評価してもらう調査)が行われました。0を「どちらでもない」とする±3の7段階評価で、5種類のケーキ全体の総合評価はおおむね1.5前後となり、保護者と学生の間、またケーキの種類間でも統計的に有意な差は認められなかったとされています。
この研究を読むうえで押さえておきたいこと
この研究は、東広島の地域食材を使い、卵・小麦・乳といった特定原材料を使わない離乳期用ケーキが物性・嗜好性の両面で一定の評価を得られる可能性を示したものです。ただし、これは一つの研究発表要旨に基づく結果であり、対象者数も保護者23人・学生15人という規模にとどまります。特定のアレルギー対応食品としての効果や安全性を保証するものではなく、今後さらなる検証が必要な段階にあるといえます。
まとめ
本研究は、東広島産の野菜ペーストや米粉、えごまパウダー、はと麦粉、そしてアクアファバを組み合わせることで、特定原材料を使わない離乳期用ケーキを試作し、その物性と嗜好性を検討したものです。焼成後の硬さは離乳食完了期に適した範囲にあり、保護者・学生いずれの評価でもケーキの種類間に大きな差は見られなかったと報告されています。地域食材を生かしたアレルギー配慮食品の開発に向けた一つの取り組みとして、今後の研究の広がりが期待されます。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Madoka Matsumoto, Atsuyo Tanomi, Mihoko Tominaga. 東広島の地域食材を使用した特定原材料不使用の離乳期用ケーキの物性と嗜好性. 日本調理科学会大会研究発表要旨集 (2026). DOI: 10.11402/ajscs.37.0_53.