外はカリッと硬く、中はもちっとした独特の食感が魅力のフランス菓子カヌレ。小麦粉、卵、乳製品を主原料とし、生地をひと晩休ませてから焼き上げるという手間のかかる製法で知られています。近年は食物アレルギーへの配慮や植物性食品への関心の高まりから、乳製品や小麦粉を別の素材に置き換えた焼き菓子の開発が求められていますが、カヌレは外側の硬い焼き皮と内部の気泡構造という繊細な特徴を持つため、代替素材でその品質を再現するのは容易ではないとされています。こうした背景のもと、文教大学の研究グループが、牛乳を豆乳に、バターをオリーブオイルに、小麦粉を米粉に置き換えたカヌレを実際に調製し、その品質特性を検証しました。

豆乳・オリーブオイル・米粉に置き換えるとどうなるか

研究では、通常のカヌレ(基準試料)に加えて、牛乳を豆乳に置き換えたもの、バターをオリーブオイルに置き換えたもの、小麦粉を米粉に置き換えたものを焼成し、外観の観察、テクスチャー(硬さなど)の測定、色の測定、そして人が実際に食べて評価する官能評価を行いました。さらに、副材料として塩麴を加えた試料についても検討しています。

その結果、豆乳を使った試料では内部に細かい気泡構造が観察されました。一方、オリーブオイルを使った試料では気泡が粗く大きくなり、焼き色も強く出る傾向が見られました。外側の硬さを数値で比べると、基準試料が2.71ニュートンだったのに対し、豆乳試料は0.94ニュートン、オリーブオイル試料は0.57ニュートンと、いずれも大きく低下しました。一方で、内側の硬さについては目立った差は見られなかったとのことです。官能評価でも、オリーブオイル試料は焦げたような風味やカリカリとした食感が強く感じられると評価されました。

小麦粉を米粉に置き換えた試料では、硬さなどの物性面で大きな違いは見られなかったものの、中心部の気泡が少なく、生地が詰まったような内部構造になっていたことが報告されています。また色の測定では、内部の明るさを示すL値と、黄色みを示すb値に統計的に意味のある差が確認されました。塩麴を加えた試料については、添加量を増やすほど内側のテクスチャーの値が低下する傾向が見られたとされています。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

著者らは、植物性素材や米粉を使った条件下でもカヌレを作ること自体は可能であるとしつつ、カヌレの特徴である外側のパリッとした硬さや内部の気泡構造を、従来のレシピと同じように再現するには課題が残ると結論づけています。この研究は学会発表の要旨として報告されたもので、原材料の分量や具体的な官能評価の手法など詳細な数値条件までは述べられていません。あくまで一つの試作・評価の結果であり、今後さらに検討が重ねられていく段階の研究と捉えるのがよいでしょう。なお、この研究は日本の大学に所属する研究者らによって行われたものです。

まとめ

フランス菓子カヌレを植物性素材や米粉で作る試みでは、豆乳やオリーブオイルへの置き換えによって外側の硬さが下がり、オリーブオイルでは焦げ感やカリカリ感が強まること、米粉への置き換えでは中心部の気泡が減って詰まった内部構造になることなどが確認されました。カヌレらしい食感を代替素材だけで完全に再現するのは依然として難しいことが示唆されていますが、アレルギー対応や植物性食品へのニーズに応える焼き菓子づくりの手がかりとして、今後の研究の発展が期待されます。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Mitose Tsuchida, Nobuaki Hosoya, Takuto Yamazaki, et al. 植物性素材および米粉置換がカヌレの品質特性に及ぼす影響. 日本調理科学会大会研究発表要旨集 (2026). DOI: 10.11402/ajscs.37.0_115.