著者の所属・活動拠点の国は、イタリア、アメリカです。

掲載誌:Microbiology Spectrum

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

難消化性でんぷん(レジスタントスターチ)は、小腸で消化されずに大腸まで届き、そこに棲む腸内細菌のエサになる食物繊維の一種です。腸内環境や代謝の健康に関連するとされ、食事による介入方法として注目されてきました。ただし、レジスタントスターチには物理的・化学的性質が異なる複数のタイプがあり、それぞれが腸内細菌にどのような影響を与えるのかは、これまで十分に解明されていませんでした。イタリア・トレント大学とアメリカ・コーネル大学の研究者らによる今回の研究は、この違いをより詳しく調べることを目的としています。

研究チームは、以前に実施された無作為化比較試験(ClinicalTrials.gov登録番号:NCT05743790)で採取された試料を対象に、二次解析を行いました。この試験は、参加者がレジスタントスターチのタイプ2(RS2)、タイプ4(RS4)、そして対照として消化されやすいでんぷんを、期間を分けて順番に摂取するクロスオーバー方式で行われたものです。研究チームは、ショットガンメタゲノム解析という手法を用いて、腸内細菌の種類だけでなく、細菌が持つ遺伝子の機能まで高い解像度で調べました。

研究でわかったこと

解析の結果、RS2とRS4はいずれも腸内細菌の構成に変化をもたらしましたが、その変化の中身は互いに異なるものでした。RS2の摂取では、でんぷん分解の中心的な役割を担うとされる菌種Ruminococcus bromiiと、Blautia glucerasea という菌が増加しました。一方、RS4の摂取ではParabacteroides distasonisや、機能がまだよくわかっていないLachnospiraceae科の細菌などが増加する傾向が見られました。さらに、Bifidobacterium adolescentisという菌については、同じ菌種の中でも系統(株)によってレジスタントスターチへの反応の仕方が異なることも確認されたということです。

機能面では、レジスタントスターチの摂取後に、複雑な炭水化物を分解・利用する能力に関わる遺伝子の増加が見られました。具体的には、α-アミラーゼや糖質加水分解酵素、でんぷん利用にかかわる遺伝子群(スターチ利用システム)などのほか、現時点では機能が特定されていない遺伝子も増えていたとされています。また、これらの変化は摂取を続けている間に限られた一時的なもので、可逆的である点も報告されています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、既存の臨床試験で得られた試料を使った二次解析という位置づけです。腸内細菌の反応には個人差があることが知られており、この研究でもレジスタントスターチのタイプによってどの菌が反応しやすいかが異なることが示されています。研究チームは、どの菌株や遺伝子がどのタイプのレジスタントスターチに反応するかを特定することが、将来的に個人ごとに合わせた栄養戦略(精密栄養)につなげる基礎になるとしています。ただし、これは一つの研究であり、ここで観察された腸内細菌の変化が健康効果に直結すると断定されたわけではありません。

まとめ

今回の研究では、レジスタントスターチのタイプ2とタイプ4が、腸内細菌の構成や機能に対してそれぞれ異なる、しかし一時的な変化をもたらすことが示されました。今後、こうした菌レベル・遺伝子レベルでの違いをさらに調べることで、個人に合わせた食物繊維の摂取提案につながる可能性があるとされています。

著者:Elisa Piperni(Department CIBIO, University of Trento, Trento, Italy)、Aitor Blanco-Míguez(Department CIBIO, University of Trento, Trento, Italy)、Claudia Mengoni(Department CIBIO, University of Trento, Trento, Italy)、Gianmarco Piccinno(Department CIBIO, University of Trento, Trento, Italy)、Michal Punčochář(Department CIBIO, University of Trento, Trento, Italy)、Jennifer Ren(Division of Nutritional Sciences, Cornell University, Ithaca, New York, USA)、Nicola Segata(Department CIBIO, University of Trento, Trento, Italy)、Francesco Asnicar(Department CIBIO, University of Trento, Trento, Italy)、Angela C. Poole(Division of Nutritional Sciences, Cornell University, Ithaca, New York, USA)

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Elisa Piperni, Aitor Blanco-Míguez, Claudia Mengoni, et al. Resistant starch types 2 and 4 induce distinct and reversible changes in the human gut microbiome. マイクロバイオロジー・スペクトラム (2026). DOI: 10.1128/spectrum.00763-26.