大きな地震や水害が起きたとき、困るのは人の食事だけではありません。ペットを飼っている家庭では、慣れない避難生活の中でイヌが食欲を落としてしまうことがあるといわれています。環境の変化によるストレスが影響していると考えられていますが、そうした状況でもイヌに食べてもらいやすく、しかも人も一緒に食べられる備蓄食があれば、災害時の負担を減らせるかもしれません。今回紹介する研究は、まさにそうした「イヌとヒトが共有できる災害時用備蓄食」を実際に作り、その味の評価(嗜好性)や栄養面の特徴を調べたものです。

どんな研究が行われたのか

研究チームは、4種類の手作り備蓄食を用意しました。それぞれについて「加熱のみで仕上げたもの」と「加熱したうえでトースターにもかけたもの」の2通りの調理方法を比較し、人による味の評価とイヌの食べ方(嗜好性)の両方を確認しています。

その結果、人の評価では「加熱+トースター」で仕上げた備蓄食のほうが、加熱のみのものより「味」の評価が有意に高くなったことが報告されています。トースターでの仕上げ調理が、香ばしさや風味の面でプラスに働いた可能性があるようです。

一方でイヌの嗜好性については、豚レバーを含む備蓄食がより多く選ばれる傾向が見られたとのことです。研究チームは、この背景として食品中の遊離アミノ酸が関係している可能性を示唆しています。遊離アミノ酸はうま味などに関わる成分で、動物の嗜好性に影響することが知られている物質です。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

この研究はあくまで、人とイヌが共有できる備蓄食を試作し、その嗜好性と特徴を検討した一つの研究です。今回の要旨では、栄養成分についてはさらに詳しい検討が必要であることも述べられており、備蓄食としての栄養バランスなどが確立したわけではありません。また、豚レバーを含む食品への嗜好性が高かったという結果も、遊離アミノ酸との関連は「示唆」の段階にとどまっています。特定の食品が健康や食欲改善を保証するものではなく、今後さらなる研究による裏付けが必要な段階だと理解しておくとよいでしょう。

まとめ

災害時、人もペットも安心して口にできる備蓄食があれば、いざというときの助けになりそうです。今回紹介した研究では、加熱に加えてトースターで仕上げることで人の味の評価が高まったことや、イヌには豚レバーを含む備蓄食が好まれやすい傾向があったことが示されました。栄養面の検討などまだ発展途上の研究ではありますが、災害時にイヌの食欲やストレスに配慮した備えを考えるうえで、一つの参考になる知見といえそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:イヌとヒトがともに摂取可能な災害時用備蓄食の作成および評価(J-STAGE 収録論文(日本)・2026年07月)