小麦アレルギーへの対応から、小麦粉の代わりに米粉を使った食品が広がっています。ただし米粉は小麦粉と特性が異なり、クッキーなどに使うと食感や口どけの面で工夫が必要になることが知られています。米粉クッキーの改良を続けてきた研究グループはこれまで、大豆たんぱく質を混ぜる方法を試したものの、好みは高まっても硬さや口どけの改善までは至らなかったことを報告していました。また、米粉と豆類の粉を使ったクリームの研究では、ソラマメ粉が風味の良さや口当たりの滑らかさの点で米粉と相性が良いという結果も出ていました。こうした経緯から、今回はソラマメ粉を混ぜた米粉クッキーについて、たんぱく質や食物繊維を豊富に含むソラマメ粉が物性や好まれ方にどう影響するかを調べています。

どうやって調べたのか

実験では、米粉100gだけで作ったクッキーを基準(コントロール)とし、米粉の10%・20%・30%をソラマメ粉に置き換えた生地をそれぞれ用意しました。焼き上げたクッキーは縦横30mm、厚さ4mmの大きさで、生地100gあたり約10枚分になるよう調整されています。評価は、表面の色を測る色彩測定、水分の量を調べる水分率測定、力を加えて割れ方を見る破断測定、走査型電子顕微鏡(SEM)による表面構造の観察、そして実際に食べて評価する官能評価という複数の角度から行われました。

ソラマメ粉を増やすとどうなったか

色の測定では、ソラマメ粉の配合を増やすほど明るさを示すL*値が下がり、赤みのa*値と黄みのb*値が上がる結果となりました。これは焼き色がつきやすくなったことを意味し、ソラマメ粉由来のたんぱく質が増えたことで、糖とたんぱく質が反応して焦げ色や風味を生むアミノカルボニル反応が進みやすくなったためと考えられています。

食感に関わる破断測定では、ソラマメ粉の割合が増えるにつれて硬さともろさが増していました。SEM観察では、生地の表面にすき間が広がっている様子が確認され、水分率の測定でも吸水率の上昇がみられています。研究では、こうした表面構造の変化や、食物繊維が水分を保持しやすい性質が影響した可能性が指摘されています。

実際に食べて評価する官能評価では、ソラマメ粉を混ぜたクッキー全体としては口どけが悪く、飲み込みにくいと感じられる傾向がありました。一方で、10%だけソラマメ粉に置き換えたクッキーについては、好まれるという結果が得られています。

この研究を読むうえで気をつけたいこと

この研究は、日本の調理科学分野の学会で発表されたもので、米粉という日本で広く使われる小麦粉代替素材を対象にしています。ただし、今回わかったのはあくまで今回作られた配合・大きさのクッキーについての結果であり、置き換え割合や配合方法を変えれば異なる結果になる可能性があります。また、栄養面の優れた食品を目指すという目的は述べられているものの、たんぱく質量や食物繊維量そのものを実際に測定した数値は要旨には示されていません。一つの研究成果であり、ソラマメ粉入り米粉クッキーの効果や食べやすさが広く確定したわけではない点には留意が必要です。

まとめ

この研究では、米粉クッキーにソラマメ粉を混ぜることで焼き色がつきやすくなり、硬さやもろさが増し、口どけがやや悪くなる傾向が示されました。その一方で、10%程度の置き換えであれば好まれる結果が得られており、配合割合によって食感と嗜好性のバランスを取れる可能性が示唆されています。米粉を使ったアレルギー対応食品の改良に向けた、一つの手がかりとなる研究といえそうです。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Shinohara Riko, Shimada Ryoko, Yoshimura Miki. 米粉クッキーのソラマメ粉混合による物性、嗜好性への影響. 日本調理科学会大会研究発表要旨集 (2026). DOI: 10.11402/ajscs.37.0_146.