著者の所属・活動拠点の国は、カナダ、アメリカです。
掲載誌:Frontiers in Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:緑茶カテキンの「吸収されにくさ」に取り組む
緑茶にはカテキンと呼ばれるポリフェノールが多く含まれ、その代表がエピガロカテキンガレート(EGCG)です。緑茶抽出物はサプリメントにも使われますが、論文によれば、カテキンは体内に吸収されにくいことが知られ、それが臨床での活用を制限してきたとされています。
研究チームは、緑茶抽出物とN-アセチルシステイン(NAC)を組み合わせた製品を、脂質を使ったミセル化技術で製剤化した「LipoMicel GTNAC」(論文中の略称LGT)について調べました。NACは抗酸化に関わる物質グルタチオンの材料となる成分です。研究の主な目的は、この製剤を飲んだときにカテキンがどのように血液中に現れるか(薬物動態)を通常の緑茶抽出物と比べることと、多めの量を続けて飲んだときの短期的な安全性を確かめることでした。
何をどう調べたか
比較の相手は、同じく緑茶抽出物330mgとNAC 240mgを含みながら、脂質などの添加物を加えていない標準的な製剤(SGT)です。つまり両者の違いは主に製剤の形にあります。LGT 330mg、SGT 330mg、そしてSGTを倍量の660mgにした条件が比べられました。
吸収の試験には健康な成人16人が参加しました。同じ人が時期を変えて複数の製剤を順に試す「クロスオーバー」という方法で、飲む順番は無作為に決められ、参加者や研究責任者はどの製剤を飲んでいるか分からない状態で実施されました。飲んだ後24時間にわたって血液中のEGCGやその代謝物の濃度を測り、濃度の時間的な広がり(どれだけの量が体内に入ったかの目安となるAUC)、最も高い濃度(Cmax)、そこに達するまでの時間(Tmax)などを比べています。
なお、飲む前の時点ですでにEGCGが検出される場合があったため、研究チームは服用前の値を差し引いた「増加分」(iAUC、iCmax)を、製剤による違いを比べる主な指標としてあらかじめ定めていました。
安全性については別に13人が参加し、緑茶抽出物として1日1,320mgという多めの量のLGTを30日間飲み続けました。肝臓や腎臓の機能、電解質などの血液検査値を開始前と比べ、体調の変化は週ごとの質問票で記録されました。
主な結果
EGCGについては、同じ量のSGTと比べてLGTで服用後の増加分が大きくなりました。服用前の値を差し引いた体内への取り込み量の目安(iAUC)はLGTで約4.2倍、最高濃度の増加分(iCmax)は約3.0倍で、いずれも統計的に意味のある差でした。差し引く前の最高濃度もLGTで高く、最高濃度に達するまでの時間は平均で約3.9時間と、SGTの約6.8時間より短くなっていました。一方、差し引く前のAUCはLGTの方が数値上は高かったものの、統計的に意味のある差には達しませんでした。
EGCGとその代謝物などを合計した値では、LGTは同量のSGTより数値上は高かったものの有意差はなく、倍量のSGTと比べると最高濃度は低いという結果でした。研究チームは、この合計値はあくまで探索的な指標であり、吸収改善の主な根拠はEGCGの結果にあると位置づけています。
30日間の安全性評価では、血液検査値や電解質に統計的に意味のある変化は見られず、多くの値は基準範囲内にとどまりました。ただし男性参加者では平均血糖値が上昇し、30日目には基準範囲の上限を超えていました。この変化は統計的に有意ではなく、男性が5人と少ないこと、ばらつきが大きいこと、比較対照群がないことから、慎重に解釈すべきだと論文は述べています。体調面では2人(約15%)が胸やけや膨満感、吐き気などの一時的な胃腸症状を報告し、うち1回は本人により重いと評価されましたが、いずれも医療的な処置なしにおさまり、服用の中止にも至りませんでした。
この研究が示すこと
研究チームは、脂質ベースの製剤にすることで、通常の緑茶抽出物と同じ量でもEGCGの血中濃度の増加分を高められる可能性が示され、30日間の短期使用では大きな問題は見られなかったと結論づけています。
一方で論文は、参加者が少なく健康な成人に限られていること、個人差が大きく推定の精度が限られることから、今回の結果は予備的なものだとしています。安全性の試験には偽薬などの比較群がなく、血液検査値の小さな変化が製剤によるものかどうかは判断できません。またNACがカテキンの働きにどう関わるかは今回測定されておらず、仮説の段階にとどまります。なお、試験製品は製造元のグループから提供され、著者の一部には関連企業との関係が申告されています。
この研究は、成分が同じでも「どのような形で飲むか」によって体内への取り込まれ方が変わりうることを、人での測定から示した報告といえます。
原著論文の著者・所属:Yiming Zhang(ISURA, Clinical Research)、Afoke Ibi(ISURA, Clinical Research)、Yun Chai Kuo(ISURA, Clinical Research)、Peony Do(ISURA, Clinical Research)、Min Du(ISURA, Clinical Research)、Yoon Seok Roh(ISURA, Clinical Research)、Roland Gahler(Factors Group R&D, Burnaby, BC, Canada)、Mary Hardy(Academy of Integrative and Holistic Medicine, San Diego, CA, United States)、Simon Wood(Food, Nutrition and Health Program, University of British Columbia; InovoBiologic Inc; School of Public Health, Faculty of Health Sciences, Curtin University)、Chuck Chang(ISURA, Clinical Research)、Julia Solnier(ISURA, Clinical Research)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yiming Zhang, Afoke Ibi, Yun Chai Kuo, et al. Enhanced bioavailability and short-term safety of a micellar green tea extract formulation co-delivered with N-acetylcysteine: a randomized crossover study in healthy adults. Frontiers in Nutrition 2026-09-23. DOI: 10.3389/fnut.2026.1940156. 原著ライセンス:CC BY.