更年期に差しかかると、ほてりや発汗、気分の落ち込みなど様々な不調(更年期症状)に悩まされる女性は少なくありません。近年は食生活と腸内細菌叢(腸内フローラ)の関係が更年期の健康にも関わるのではないかという関心が高まっており、発酵食品がその橋渡し役として注目されることがあります。今回紹介するのは、韓国の伝統的な発酵調味料であるコチュジャンを使い、更年期症状と腸内細菌叢への影響を調べたランダム化二重盲検試験です。Frontiers in Nutrition誌に2026年9月に掲載予定です。
どんな試験が行われたのか
対象は、中等度から重度の更年期症状(KMIスコア15以上)を持つ閉経後女性59名です。KMI(Kupperman Menopausal Index)は、ほてりや発汗、不眠、気分の変化などをスコア化して更年期症状の重さを評価する指標です。参加者は8週間にわたり、微生物組成の異なる3種類のコチュジャン製剤のいずれかを摂取しました。比較されたのは、微生物量を多く含むコチュジャン(HTG)、微生物量を抑えたコチュジャン(LTG)、そして市販のコチュジャン(CG)の3群で、プラセボ(偽薬)群は設けられていません。
主要な評価項目は、KMI総スコアの変化と腸内細菌叢の変化の二つで、これらは研究計画上「共同一次エンドポイント」として位置づけられていました。あわせて体組成や代謝に関するバイオマーカー、安全性も副次的に評価されています。なお腸内細菌叢そのものの詳しい変化や、便中の短鎖脂肪酸(SCFA、腸内細菌が食物繊維などを分解してつくる物質)濃度については、事後的に「探索的評価項目」として扱われた点も研究の設計上の特徴です。
何がわかったのか
8週間後、KMIスコアはHTG群で平均3.65点、LTG群で4.10点、CG群で3.42点それぞれ低下し、いずれの群でも統計的に有意な改善が確認されました。ただし、この改善幅は3群の間で統計的に意味のある差はなく、微生物量の多いコチュジャンが特に優れているという結果は得られませんでした。
体脂肪率についても3群すべてで低下がみられ、便中のSCFA濃度もすべての群で低下する傾向が確認されました。腸内細菌叢の構成は各群の中で変化が見られたものの、製剤の違いによって腸内細菌叢の変化パターンがはっきり異なるという頑健な根拠は得られなかったと報告されています。試験期間中、有害事象は報告されませんでした。
この研究をどう読むか
この試験には、結果を解釈するうえで重要な限界があります。最も大きいのは、コチュジャンを摂取しない対照群(プラセボ群)が設けられていないことです。そのため、観察されたKMIスコアの改善が、コチュジャンそのものの効果によるものなのか、他の要因(食生活への注意、時間経過、参加による心理的効果など)によるものなのかを、この試験単独で切り分けることはできません。また、3種類の製剤間で効果に統計的な差が見られなかったことから、微生物組成の違いが症状改善に寄与したかどうかも、この結果からは判断できません。著者らは、内分泌指標や機能的な腸内細菌叢の評価を含むプラセボ対照試験が今後必要だと述べています。
まとめ
この研究は、閉経後女性が8週間コチュジャンを摂取した後に更年期症状スコアや体脂肪率、便中SCFA濃度に変化がみられたことを報告するものですが、プラセボ対照がないため、これらの変化がコチュジャンの摂取そのものによるものと断定することはできません。また、微生物組成の異なる製剤間で明確な優劣も確認されていません。今後、より厳密な対照試験によって検証が重ねられることが期待される、一つの探索的な研究段階の報告といえます。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):A. Lum Han, Myeong Seon Ryu, Hee-Jong Yang, et al. Effects of gochujang formulations on menopausal symptoms and gut microbiota in postmenopausal women: an 8-week randomized, double-blind trial. Frontiers in Nutrition (2026). DOI: 10.3389/fnut.2026.1849944.