著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Food chemistry: X

ライセンス: CC BY-NC 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

ハダカムギ(裸麦)は食物繊維や機能性成分を含む穀物として知られ、発芽させることで栄養価がさらに変化することが注目されています。ただし発芽させたハダカムギを実際に食べられる形にするには加熱処理が欠かせません。電子レンジ、焙焼、炒め、蒸しといった調理法の違いが、栄養成分や体内での消化されやすさにどのような影響を与えるのかは、これまで十分に整理されてこなかったテーマです。今回紹介する研究は、発芽ハダカムギ(GHB)を対象に、この加熱方法による違いを詳しく調べたものです。

4種類の加熱処理を比較

研究チームは発芽させたハダカムギに対して、電子レンジ加熱、焙焼、炒め、蒸しという4種類の加熱処理を施し、それぞれの栄養成分、理化学的特性、そしてデンプンの消化特性を評価しました。加えて、疑似ターゲットメタボロミクスという手法を用いて、加熱処理後の試料に含まれる代謝物を網羅的に分析しています。

加熱方法によって保たれる成分に差

分析の結果、いずれの加熱処理でも結晶構造や官能基構造そのものは大きく損なわれないことが確認されました。一方で、栄養成分の含有量や吸水性といった特性は加熱方法によって変化することが示されました。特に、電子レンジ加熱や蒸し処理のように、短時間あるいは比較的低温で済む加熱方法は、栄養成分や生理活性成分をより効果的に維持する傾向が見られたと報告されています。

さらにメタボロミクス解析では、有機酸類、フェニルプロパノイド類、ポリケチド類など、合計1605種類にのぼる代謝物が同定されました。これらの中から、加熱処理によって変動し、健康面でのベネフィットの候補となりうるマーカー成分として、カフェ酸、アピゲニン、クリシン、3-ヒドロキシフェニル酢酸、3-メトキシチラミンの5種類が検出されたとされています。

この研究を読むうえでの注意点

この研究は、発芽ハダカムギという特定の穀物を対象にした一つの研究であり、ここで示された結果がすべての穀物や食品加工に当てはまるとは限りません。また、検出されたカフェ酸やアピゲニンなどの成分はあくまで「健康benefit候補マーカー」として挙げられているものであり、これらの成分を摂取することで具体的にどのような健康効果が得られるかを直接証明したものではない点に留意が必要です。研究の限界について要旨中に明記された記載はありませんでした。

まとめ

この研究では、発芽ハダカムギに対する電子レンジ、焙焼、炒め、蒸しという4種の加熱処理が、結晶構造などの基本的な特性を保ちながらも、栄養成分や吸水特性、そして代謝物のプロファイルに違いをもたらすことが示されました。中でも短時間・低温の加熱処理が栄養や生理活性成分の維持に有利である可能性が示唆されており、今後、加工食品の調理法を考えるうえでの基礎データの一つとなることが期待されます。

原著論文の著者・所属:Du W(School of Food and Bioengineering, Food Microbiology Key Laboratory of Sichuan Province, Chongqing Key Laboratory of Sichuan Chongqing Joint Construction of Specialty Food, Xihua University, Chengdu 610039, China.)、Wen J(School of Food and Bioengineering, Food Microbiology Key Laboratory of Sichuan Province, Chongqing Key Laboratory of Sichuan Chongqing Joint Construction of Specialty Food, Xihua University, Chengdu 610039, China.)、Sun Q(School of Food and Bioengineering, Food Microbiology Key Laboratory of Sichuan Province, Chongqing Key Laboratory of Sichuan Chongqing Joint Construction of Specialty Food, Xihua University, Chengdu 610039, China.)、Zhang Y(Tibet Chunguang Food Co., Ltd., Lhasa City 850100, China.)、Liu Y(Sichuan Union (Youlian) Food Co., Ltd., Chengdu City 610039, China.)、Zeng P(West China School of Public Health and West China Fourth Hospital, Sichuan University, Chengdu 610044, China.)、Zhang L(School of Food and Bioengineering, Food Microbiology Key Laboratory of Sichuan Province, Chongqing Key Laboratory of Sichuan Chongqing Joint Construction of Specialty Food, Xihua University, Chengdu 610039, China.)

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Du W, Wen J, Sun Q, et al. Study on the characteristics and nutritional properties of germinated highland barley treated by different thermal processing based on quasi-targeted metabolomics. フード・ケミストリー:エックス (2026). DOI: 10.1016/j.fochx.2026.104291.