著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Frontiers in Sustainable Food Systems
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
農業を農産物加工や観光・レジャーなどと結び付ける「農村産業の融合」は、中国で農家の所得向上を目指す重要な政策とされています。研究チームは、こうした取り組みが、投入した資源をどれほど効率よく経済的・社会的な成果へ変えているかを調べました。
評価では、産業の収益や農村住民の所得だけでなく、農地が穀物以外の生産に使われることや、農業に伴う汚染も考慮しました。所得向上と、食料安全保障・環境面の制約を併せて捉えることが研究の狙いです。
何を、どのように調べたか
研究チームは、中国の30の省級行政区を対象に、2012~2023年の効率とその変化を評価しました。統計年鑑や政府の公表資料などから2011~2023年のデータを集め、投資から成果が生まれるまでの時間を考慮して、各年の投入と翌年の成果を組み合わせました。
資本投資や政策支援などの投入に対し、農産物加工業の生産額、農業に関連するレジャー事業の営業収入、農村住民1人当たりの可処分所得などを成果として扱いました。一方、農地の非穀物生産への転換と、農地など広い範囲から生じる農業由来の汚染を、抑えるべき結果として評価に組み込みました。
分析には、複数の投入と成果をまとめて地域間で比べる「超効率SBMモデル」と、年ごとの生産性の変化を調べる「マルムクイスト指数」を用いました。後者では、各地域が効率のよい地域に追い付く動きと、比較の基準となる最良の生産・運営水準そのものの変化を分けて調べています。また、効率と関連する地域の条件も探索的に分析しました。
農業関連レジャー事業の収入は、2020~2023年に欠測が多く、主に各省の国内観光収入の増減率を使って補いました。研究チームは、別の補い方でも結果が大きく変わらないかを確認しています。
主な報告結果
論文が報告した全国平均の効率スコアは、2012年の0.446から2023年の0.663へ上昇し、期間全体の平均は0.507でした。これは所得の増加率ではなく、投入と成果を地域間で比較した、単位のない指標です。途中には低下した時期もありましたが、研究チームは全体として改善傾向があり、とくに2021~2023年の改善が目立ったと報告しています。
生産性の変化を分解すると、前半は地域の追い付きと最良水準の進展が交互に寄与していました。後半は、各地域が既存の最良水準へ近づく効率改善の役割が大きくなったと著者らは述べています。欠測値の補い方を変えた分析でも、後半の改善傾向と省別の順位はおおむね維持されました。
地域別では、概して東部、中部、西部の順に効率が高い傾向が見られ、2018~2019年には中部が一時的に東部を上回りました。ただし、この地域差は正式な統計検定では有意ではありませんでした。また、農村の人的資本と交通インフラは、効率と安定した正の関連を示しました。
この報告が示すこと
研究チームは、農村産業の連携を評価する際、事業規模の拡大だけでなく、投入した資源を所得や収益へ変える効率に目を向ける必要があると結論付けています。その際には、農地の保全と汚染抑制も評価に含め、地域ごとの課題に応じた対応を取ることが重要だとしています。
ただし、地域の条件と効率との分析は相関を調べたもので、人的資本や交通インフラが効率改善を引き起こしたと証明するものではありません。また、所得指標には出稼ぎ先からの送金など地域内の産業連携以外に由来する収入も含まれ、レジャー事業収入の一部は推計値です。省単位の分析では、省内の地域差を捉えられないという限界もあります。
原著論文の著者・所属:Zenan Sun(Management School, Nantong University)、Mo Chen(School of Business, Jiangsu Vocational College of Information Technology)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Zenan Sun, Mo Chen. Investigating the efficiency of rural industrial integration development in China: based on the undesirable super-efficiency SBM-Malmquist model. Frontiers in Sustainable Food Systems 2026-11-05. DOI: 10.3389/fsufs.2026.1894351. 原著ライセンス:CC BY.