著者の所属・活動拠点の国は、インド、ソマリアです。

掲載誌:Cogent Economics & Finance

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

著者らは、途上国にとって急速な経済成長は欠かせない目標であり、輸出はその成長を引っ張る「エンジン」と考えられていると述べています。また、途上国の多くは農業を基盤とする経済であり、農産物の輸出は経済成長だけでなく、人々の社会経済的な暮らし向きの改善にも重要な役割を果たすとしています。

こうした問題意識から、研究チームは、インドとG20諸国の間の農産物貿易がどの程度効率的に行われているのか、また貿易を左右する要因は何かを推定することを目的としました。

何を調べたか

分析には「確率的フロンティア重力モデル」と呼ばれる手法が使われています。重力モデルとは、二つの国の経済規模が大きいほど貿易が増え、距離が遠いほど貿易が減るという、物体の引力になぞらえた考え方で貿易量を説明する枠組みです。これに「フロンティア」の考え方を組み合わせることで、条件から見込まれる最大限の貿易量と実際の貿易量との差を捉え、貿易がどれだけ効率的かを評価できるようにしています。

データは2005年から2024年までの期間を対象とした、複数の国と年にまたがるパネルデータです。論文では、インドと相手国の国内総生産(GDP)、首都間の距離、加重平均関税、自由貿易協定や地域貿易協定に関する変数、為替レートといった要因が、農産物貿易にどう関係しているかが検討されました。

主な結果

論文によると、インドの農産物輸出には大きな非効率が見られました。つまり、実際の輸出は条件から見込まれる水準に届いていないという結果です。

貿易を左右する要因については、インドのGDPと相手国のGDPの両方が、二国間の貿易に統計的に有意なプラスの影響を持つと報告されています。著者らはこれを、輸出国と輸入国の双方の市場や経済活動の大きさが貿易の拡大につながっていることを示すものと解釈しています。

一方、貿易にかかるコストの目安として使われた首都間の距離は、貿易にマイナスの影響を与えると報告されています。もう一つの貿易コストの指標である加重平均関税はマイナスの影響を示したものの、統計的に有意ではありませんでした。自由貿易協定や地域貿易協定に関する変数も有意ではなく、為替レートは農産物貿易に有意なプラスの影響を持つと報告されています。

研究が示すこと

この研究は、インドとG20諸国との農産物貿易が、効率の面でまだ改善の余地を残していることを示しています。著者らは結果を踏まえ、政策担当者は関税以外の貿易障壁を減らすこと、農産物の国際的な競争力を高めること、そして貿易の物流を改善することに力を入れるべきだと提言しています。

原著論文の著者・所属:Mohd Fateh(Department of Agricultural Economics and Business Management, Aligarh Muslim University)、Mohsin Taj(Department of Economics, Aligarh Muslim University)、Mohd Kadir Ansari(Department of Economics, Aligarh Muslim University)、Gayas Ahmad(VIT Business School, VIT Vellore, Vellore, India)、Bile Abdisalan Nor(Department of Banking and Finance within the Faculty of Management Science at SIMAD University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mohd Fateh, Mohsin Taj, Mohd Kadir Ansari, et al. Assessing agricultural trade efficiency and untapped export potential: evidence from India and G20 economies. Cogent Economics & Finance 2026-10-21. DOI: 10.1080/23322039.2026.2746218. 原著ライセンス:CC BY.