掲載誌:IQRO

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的と食料安全保障の考え方

この論文は、食品産業の構造転換を通じて国の食料安全保障を確保するための理論的・実践的な側面を、ウズベキスタンを例に分析したものです。著者は、市場のグローバル化、世界人口の急増、気候変動、資源の制約によって食料への需要が高まり、その供給の仕組みが複雑になっていることを背景として挙げています。

論文では、食料安全保障を「食べ物が物理的にあるかどうか」や「経済的に手に入れられるかどうか」だけでなく、食品の質、安全性、そして供給の安定性も含めて捉えています。国連食糧農業機関(FAO)の定義に沿って、食料安全保障は「入手可能性」「アクセス」「利用」「安定性」の4つの要素から成ると説明されています。また、量だけでなく、残留農薬、重金属、カビ毒(マイコトキシン)、病原微生物といった有害な要因から守られていることも重要だと述べています。

食品産業の発展が果たす役割

著者は、食品産業の発展による食料安全保障の確保とは、原料を高度に加工すること、革新的な技術を導入すること、国内生産を支えること、そして製品の品質をISOやHACCPなどの国際規格に合わせることを意味すると整理しています。こうした取り組みは、手ごろで質が高く安全な食品を住民に届け、輸入への依存を減らし、輸出の力を高めるための基本的な要因だと位置づけられています。

論文は主な方向性として、農産物を原料のまま出荷せず加工品にして保存期間を延ばし無駄を減らすこと、省エネ型・自動化された生産ラインによるコスト削減、品質管理と規格化、輸入品の国産品への置き換えと輸出品目の拡大、冷蔵倉庫や物流拠点を含む「畑から食卓まで」の供給網づくりを挙げています。

一方で著者は、種子・肥料・農薬といった生産に欠かせない資材の多くが大手多国籍企業の管理下にあり、国際貿易における食品安全の基準も厳しくなっていることから、発展途上国が技術面で依存した状態に置かれ、追加の技術的な障壁に直面していると指摘しています。

統計と国際指数が示すウズベキスタンの変化

論文は、ウズベキスタンで近年、食品産業の育成、投資の誘致、輸出支援に向けた幅広い改革が進められてきたことを紹介し、その状況を統計で示しています。著者がまとめた数値によると、2024年時点で食品の生産額は61億米ドルを超え、年間輸出額は5億1000万米ドルを超えました。直近3年間で、輸入品に代わる国産品(75品目)が2億8990万米ドル分生産され、輸入量は7.4%減ったと報告されています。また、2016年から2022年にかけて食品産業の企業数は約9400社から2万2500社へと2.4倍に増え、2017年から2022年にかけて青果物の輸出は2倍(5億7700万ドル)になったとされています。

さらに論文は、113か国を対象に68の指標で食料の手ごろさ、入手可能性、質と安全性、持続可能性と適応力を測る「世界食料安全保障指数(GFSI)」を取り上げています。ウズベキスタンの評価は2017年の54.7点・88位から、2022年には57.5点・73位へと上がり、2019〜2022年に最も大きく伸びた10か国の中で1位だったと報告されています。特に改善が大きかった項目として、都市が食料の流れを受け入れて処理する能力、食品の安全性、農産物への輸入関税が挙げられています。

著者はこれらの数値について、国内生産が強まり、輸出の力が高まり、事業環境が改善していることを示すものであり、食料安全保障に向けた改革の成果を表していると解釈しています。

国家戦略と研究が伝えること

論文は、大統領令PF-36号で承認された2030年までの食料安全保障・健康的な食生活の戦略についても紹介しています。この戦略は、資源の効率的な利用、市場原理にもとづく戦略的備蓄の形成、自然災害や世界的な脅威へのリスク管理、支援を必要とする人々への食料供給の強化、市民参加と健康的な食生活の普及という5つの優先分野を定めています。

著者は結論として、食料安全保障は今日、経済と国家の安全保障にとって重要な要素になっており、農業と食品産業の近代化、生産と輸出の拡大、輸入代替品の育成といったウズベキスタンの改革は前向きな成果を上げていると述べています。この論文は、食料安全保障を農業生産だけの問題ではなく、加工、品質管理、物流までを含む食品産業全体の課題として捉える視点を示しています。

原著論文の著者・所属:Boliyeva Shoiraxon Shuxratjon qizi(Toshkent davlat iqtisodiyoti universiteti Iqtisodiyot yo'nalishi magistranti)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Boliyeva Shoiraxon Shuxratjon qizi. OZIQ-OVQAT SANOATINI RIVOJLANTIRISH ORQALI OZIQ-OVQAT XAVFSIZLIGINI TA'MINLASH MASALALARI. IQRO 2026-10-26. DOI: 10.5281/zenodo.23659318. 原著ライセンス:CC BY.