著者の所属・活動拠点の国は、イタリアです。

掲載誌:Food Science & Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

肉を柔らかくする方法の一つに、植物由来のプロテアーゼ(たんぱく質を分解する酵素)を使う方法があり、持続可能な手段として研究が進められています。ただし、その効果は酵素の性質や濃度に加え、どの動物のどの筋肉に使うかによって変わります。

研究チームは、ショウガ(学名 Zingiber officinale)の粗抽出物を、食品産業で広く使われている植物性プロテアーゼのブロメライン(パイナップル由来)とパパイン(パパイヤ由来)と比較しました。肉の構造を支える筋原線維たんぱく質に各酵素がどう作用するかと、実際の肉の品質にどう影響するかを調べています。

何を調べたか

論文の要旨によると、調査は二段階で行われました。まず、鶏むね肉と豚ロースから取り出した筋原線維(筋肉を構成する細い繊維)に、酵素たんぱく質の濃度を段階的に変えて作用させ、分解の進み方を調べました。その中から、触媒効率(酵素がどれだけ効率よく分解するか)が最も高かった各酵素の条件を選びました。

次に、選んだ条件で鶏むね肉と豚ロースの肉そのものを酵素入りの液に漬け込み(マリネ)、筋原線維の断片化、pH、加熱したときの歩留まり、保水性(肉が水分を保つ力)を測りました。さらに、人が実際に食べて評価する官能評価も行いました。

主な結果

鶏肉の筋原線維は、豚肉より分解されやすいことが示されました。ショウガ抽出物の働きは対象によって異なり、特に鶏肉の筋原線維に強く作用しました。

酵素で漬け込むと、どちらの肉でも筋原線維の断片化が進みましたが、pHは変わりませんでした。研究チームはこの点から、構造の変化は酵素の働きによるものだと判断しています。ショウガ処理では漬け込み6時間という早い段階で断片化が素早く進んだのに対し、ブロメラインとパパインは12時間の長い処理でより大きな分解をもたらしました。

加熱歩留まりと保水性は、主に肉の種類と漬け込み時間に左右され、鶏肉は一貫して豚肉より水分を保ちました。ショウガ抽出物による分解は控えめに抑えられ、ブロメラインやパパインと比べて加熱時の性能が保たれたと報告されています。6時間の漬け込み条件での官能評価では、ショウガで処理した肉、特に鶏肉で、ジューシーさ、柔らかさ、風味の感じ方、総合的な好ましさが高まったとされています。

研究が示すこと

研究チームは、ショウガのプロテアーゼを、作用する対象を選び、分解を適度にとどめる酵素として位置づけています。肉の構造を壊しすぎずに品質を高められる可能性がある点が、ブロメラインやパパインとの違いとして示されました。

原著論文の著者・所属:Alessandro Crinò(Department of Agricultural and Forestry Sciences (DAFNE) University of Tuscia Viterbo Italy)、Chiara Fabrizi(Department of Agricultural and Forestry Sciences (DAFNE) University of Tuscia Viterbo Italy)、Andrea Menci(Department of Agricultural and Forestry Sciences (DAFNE) University of Tuscia Viterbo Italy)、Katia Liburdi(Department of Agricultural and Forestry Sciences (DAFNE) University of Tuscia Viterbo Italy)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Alessandro Crinò, Chiara Fabrizi, Andrea Menci, et al. Proteolytic Activity of Zingiber officinale Extract: Interaction With Myofibrillar Proteins of Different Origins and Functional Effects in Meat Systems. Food Science & Nutrition 2026-10-01. DOI: 10.1002/fsn3.72459. 原著ライセンス:CC BY.