著者の所属・活動拠点の国は、ドイツです。

掲載誌:Australian Journal of Agricultural and Resource Economics

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

輸出禁止は株式市場にどう表れたか

輸出禁止は国内価格を安定させるために使われる貿易政策ですが、意図しない影響を伴うこともあります。研究チームは、インドネシアが2022年4月に導入し、同年5月に解除したパーム油の輸出禁止を取り上げ、世界の農業関連株とパーム油生産国の株式市場がどう反応したかを調べました。

農業に特化した指数と国別の指数を比較

研究チームは、株価指数に含まれる産業の構成によって政策への反応が異なるという仮説を立てました。そのうえで、パーム油生産国の日々の株価データと、世界の農業関連株を対象とするMSCI指数を分析しました。比較したのは、さまざまな産業を含む国別の株価指数と、農業分野に特化した世界の株価指数です。

分析には、政策の導入や解除といった出来事に伴う株価の反応を調べる「イベント・スタディ」という手法を用いました。主な指標は、通常想定される収益率からのずれを対象期間で積み上げた「累積異常収益率」です。

農業関連株への影響は、解除後も相殺されず

論文によると、輸出禁止の導入後、世界の農業関連株の指数では、累積異常収益率が統計的に有意なマイナスとなりました。一方、複数の産業を含む国別指数では、統計的に有意な反応は確認されませんでした。

禁止の解除後には、世界の農業関連株の指数で統計的に有意なプラスの累積異常収益率が見られました。国別指数の反応は方向が分かれ、いずれも統計的に有意ではありませんでした。また、農業関連株の指数では、導入と解除に伴う変化が完全には打ち消し合わず、差し引きでマイナスの影響が残ったと報告されています。

著者らは、これらの結果が、政策の影響は主として世界の農業分野に表れ、産業構成が多様な国別株式市場への影響は限定的だったという見方と整合するとしています。同じ政策でも、特定産業の株価と幅広い産業を含む市場全体とでは、異なる反応が表れることを示す研究です。

原著論文の著者・所属:Tim Ölkers(Humboldt University zu Berlin Berlin Germany)、Charlotte‐Elena Reich(IDOS Bonn Germany)、Anna Roeland(University of Göttingen Göttingen Germany)、Oliver Mußhoff(Humboldt University zu Berlin Berlin Germany)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Tim Ölkers, Charlotte‐Elena Reich, Anna Roeland, et al. Unravelling the Effects of Indonesia's Oil Palm Export Ban on Global Stock Markets. Australian Journal of Agricultural and Resource Economics 2026-09-03. DOI: 10.1111/1467-8489.70151. 原著ライセンス:CC BY.