著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Ranah Research Journal of Multidisciplinary Research and Development
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
輸出を支える外交の役割を調べる
著者らは、2015~2025年のインドネシア産バナメイエビの輸出を対象に、米国、日本、欧州連合(EU)の貿易政策と、それに対応するインドネシアの経済外交を分析しました。生産量や価格だけでなく、食品安全や原料の追跡に関する条件が輸出を左右するなか、外交が市場への参入・取引の継続をどこまで支えたかを検討する研究です。
研究では、インドネシア政府の文書、国際機関の報告、輸出先の規制文書、学術文献などを用いた質的な事例分析を行いました。輸入政策を食品安全、原料の追跡可能性、持続可能性などのテーマに分け、各市場の特徴とインドネシアの対応を比較しています。
米国、日本、EUで異なる輸入条件
著者らの分析では、米国市場は、反ダンピング関税など国内産業を守るための貿易措置と、危険性に応じた食品安全監視、原料の由来を確認する仕組みを組み合わせている点が特徴です。輸出側には、貿易上の調査に備えることに加え、残留薬剤や汚染への対策、原料から製品までの記録の整備が求められるとしています。
日本市場については、品質、食品安全、供給者への信頼が重視されると報告しています。大きさ、色、食感、鮮度などを安定して保つことが重要で、価格だけでなく、買い手との長期的な関係や問題発生時の対応も取引を支える要素と位置づけています。
EU市場では、食品安全と原料の追跡に加え、環境や社会面での持続可能性が重要だとしています。行政の規制だけでなく、小売企業などが設ける独自の認証や監査もあり、輸出業者は双方の条件に対応する必要があるという分析です。
市場の維持と、付加価値を高める難しさ
論文によると、インドネシアは貿易交渉、食品安全をめぐる当局間の技術的な対話、販路開拓の支援、国内の検査・認証体制の強化を組み合わせて対応してきました。著者らは、こうした経済外交は市場へのアクセスを維持し、大きな混乱を防ぐ点では比較的有効だったと評価しています。
一方、国際的な生産・加工・流通のつながりの中で、インドネシアがより多くの付加価値を得る立場へ移る成果は限定的だったとしています。養殖場から集荷業者、加工工場へと渡る過程で情報が途切れやすいことや、認証・監査の費用が高いことが課題として挙げられています。特に小規模な養殖業者は、こうした費用を負担しにくいと指摘しています。
著者らはさらに、大手の買い手が製品仕様や価格、基準を決める構造のもとで、インドネシアによるブランド構築や販売網への関与はなお限られると分析しています。主要市場への依存も、交渉の余地を狭める要因としています。
輸出先の信頼と国内の仕組みをつなぐ
この研究が示すのは、エビ輸出を支える経済外交は、商談や交渉だけでは完結しないということです。著者らは、市場を維持する成果と、取引の中でより有利な立場を得る成果を区別しています。その両方を考えるうえで、輸出先との信頼関係と、養殖場から輸出まで品質や記録を確かめられる国内の仕組みとの結びつきが重要だと結論づけています。
原著論文の著者・所属:Amellia Amellia(Program Studi Hubungan Internasional, Universitas Paramadina)、Tatok Sudiarto(Program Studi Hubungan Internasional, Universitas Paramadina)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Amellia Amellia, Tatok Sudiarto. Analisis Diplomasi Ekonomi Indonesia dalam Ekspor Udang Vannamei ke Amerika Serikat, Jepang dan Uni Eropa Periode 2015-2025. Ranah Research Journal of Multidisciplinary Research and Development 2026-08-25. DOI: 10.38035/rrj.v8i5.2287. 原著ライセンス:CC BY.