著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:International Journal of Education, Information Technology, and Others
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
被災した村の暮らしを立て直すために
2025年11月下旬、インドネシアのスマトラ島では鉄砲水や土砂崩れを伴う大規模な気象災害が起きました。西スマトラ州アガム県にあるナガリ・スンガイランディア(ナガリは同地方の伝統的な村落単位)も大きな被害を受けた地域の一つです。論文によれば、村へ通じる道路が土砂崩れで寸断されて多くの世帯が一時孤立し、灌漑水路も壊れて、農業を主な生計とする住民の暮らしが大きく揺らぎました。
著者らは、災害からの復興には物資の支援や道路などの再建だけでなく、住民が地域の資源を生かして収入の道を取り戻す力を育てることが欠かせないと考えました。この村は観光村として登録されており、地元の主要な農産物である調理用バナナ「ピサン・ケポック」や、草木染めに使える多様な植物に恵まれています。一方で、バナナは主に生のまま安値で売られていました。
この論文は、パダン国立大学観光・ホスピタリティ学部で、学科ごとに組織された学生会が学科の枠を越えて連携し、地元の食材を生かした加工食品づくり、草木染めの衣料品づくり、包装の改善、デジタル販売を一つのまとまった取り組みとして実施した地域貢献プログラムを記録し、振り返ったものです。著者らは、こうした要素を一体的に組み合わせ、複数分野の学生組織が協力して進める形の実践例は、これまで十分に記録されてこなかったと述べています。
住民とともに進めた4週間
プログラムは2026年2月2日から28日まで行われ、同学部の家政教育学科の学生37人と、村の小規模事業者や主婦、若者など、災害後の事業づくりに関心のある住民が参加しました。手法には「参加型アクションリサーチ」が用いられました。これは、住民を支援を受けるだけの存在ではなく、課題の把握から計画、実行、評価までに関わる主体として位置づけ、ともに行動しながら進めていく方法です。
活動は4段階で進みました。まず現地調査で地域資源を把握して住民に計画を説明し、次にバナナ加工の研修と実演、続いて草木染め衣料品の制作と包装づくり、最後にインドネシア語と英語の2言語によるデジタル販売の研修と、オンラインストアの開設を行いました。記録は観察、写真、日誌、参加者の感想によって集められ、制作・包装できた製品の数、住民の参加の度合いや意欲、オンラインストア開設の成否という三つの観点で振り返りが行われました。
生まれた製品と身についた技術
食品づくりでは、3種類の味のバナナチップスと、冷凍タイプの扇形バナナ菓子2種、ピーナッツや干しエビ、こぶみかんの葉と合わせたバナナのふりかけ風惣菜の計6品が開発されました。事前の調査では、村の事業者のおよそ8割がバナナチップスを作る基本技術は持っているものの、品質をそろえる方法や味の幅、見栄えのよい包装は身についていなかったと報告されています。研修では、スライサーで厚みをそろえる方法や、中火で揚げる基準などが紹介されました。論文は特に、村にそれまでなかった冷凍食品の分野に踏み出したことを大きな工夫として挙げています。
衣料品づくりでは、葉などの植物を布に押し当てて色や形を写し取る草木染め「エコプリント」の研修が行われ、布地、トートバッグ、スカート、ベストの4種類が「エコプリント・ランディア」の名で作られました。チークやグアバ、シダなど村の植物からはっきりとした模様が得られ、色を定着させる薬剤の違いによって明るい色や暗い緑がかった色、落ち着いた色が生まれ、一つひとつ異なる風合いになったと報告されています。
包装については、もともと多くの製品が表示のない無地のビニール袋に入れられていたため、食品には真空包装と、原材料や内容量、製造日・賞味期限などを記した表示ラベルの作成が指導されました。衣料品には、お礼のカードやインドネシア語と英語の手入れ方法、素材の由来とミナンカバウ文化とのつながりを説明するカードを添えた箱が用意されました。最後に、動画や2言語の紹介文を使ったSNSでの発信を学び、通販サイト「Shopee」上に村の製品を扱うオンラインストア「Landia_Fresh」が開設されました。
報告が示すもの
著者らは、学生と住民が地域の資源を生かした新しい製品づくりに協力して取り組むことが、災害後の地域経済の立て直しを後押しする方法になりうると結論づけています。また、学部内の学科をまたいだ学生組織の連携によって、食品、衣料、包装、販売といった異なる分野を一つの取り組みとしてまとめられたこと、学生にとっても現場で知識を生かす学びの場になったことを挙げています。
この報告は、製品やオンラインストアといった具体的な成果と参加の様子を記録したもので、収入の変化などは評価の観点に含まれていません。著者らは、住民の自立を確かなものにするには、プログラム終了後も大学と地域、地元行政が協力して継続的に支えていくことが重要だとしています。
原著論文の著者・所属:Petra, Nebyola(Family Welfare Education, Universitas Negeri Padang, Indonesia)、Al Farizi, Salman(Family Welfare Education, Universitas Negeri Padang, Indonesia)、Ferdiansyah, Ferdiansyah(Family Welfare Education, Universitas Negeri Padang, Indonesia)、Rahend, Tsaniyah Athifah(Family Welfare Education, Universitas Negeri Padang, Indonesia)、Ryna, Reva Sava(Family Welfare Education, Universitas Negeri Padang, Indonesia)、Ramadhan, Fitra(Family Welfare Education, Universitas Negeri Padang, Indonesia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Petra, Nebyola, Al Farizi, Salman, Ferdiansyah, Ferdiansyah, Rahend, Tsaniyah Athifah, Ryna, Reva Sava, Ramadhan, Fitra Synergy Among Departmental Student Associations (HMDs) in Post-Disaster Recovery-Based Community Service Programs: Reflections on the Implementation of the Ikk FPP UNP Program in Nagari Sungai Landia 2026. International Journal of Education, Information Technology, and Others 2026-08-20. DOI: . 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。