著者の所属・活動拠点の国は、マラウイ、南アフリカ、ジンバブエ、イギリス、オランダ、メキシコです。

掲載誌:Sustainability

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的

研究チームは、マラウイ中部のムトゥンタマ農業普及計画地域で、環境を損なわずに農業の生産性を高める「持続可能な集約化」に向けた農法を、農家がどのように評価しているかを調べました。この地域では、雨に頼るトウモロコシ栽培を中心に、豆類や家畜を組み合わせた農業が営まれています。土壌の劣化や降雨の不安定化に対応するため、新しい農法の導入が進められていました。

研究の焦点は、農家が感じる利点やリスクと、土地、家畜、収入、労働力などの違いによって適した農法がどう変わるかです。どの農家にも同じ方法を勧めるのではなく、各世帯の条件に合う選択肢を考えることを目指しました。

何を、どのように調べたか

研究チームは、資源や生産の特徴に基づく四つの農家類型から、試験に参加する44戸を意図的に選びました。土地・収入・家畜が豊富な世帯、中程度の資源を持ち持続可能な農法を多く取り入れている世帯、小面積で労働投入が多く家畜が少ない世帯、資源が限られトウモロコシ中心の世帯です。質問調査の結果は43人分が報告されています。

対象となったのは、土壌の保全を重視する保全農業でトウモロコシだけを続けて栽培する方法、ササゲまたはフジマメとトウモロコシを帯状に並べて栽培する方法、それぞれの豆類とトウモロコシを交互に作る輪作、そして従来の畝立てによるトウモロコシの連作という六つの選択肢でした。農法は2023/2024年の作期に導入され、評価は導入後2作期の経験に基づいて行われました。

質問調査、グループ討議、圃場での観察と農家による評価を組み合わせ、好みの順位とその理由を調べました。評価には、生産性、導入のしやすさ、採算性、資源の使い方、ほかの圃場などへの広げやすさが含まれました。また、2か所の圃場見学会では、試験に参加していない253人から好みの投票を集め、その後の導入状況も追跡しました。

主な報告結果

農家の総合的な好みの順位では、保全農業でトウモロコシとササゲをそれぞれ2列の帯状に並べる方法が1位でした。続いて、保全農業によるトウモロコシの連作、ササゲとトウモロコシの輪作が選ばれました。ただし、農家類型によって順位には違いがあり、従来の畝立てやフジマメを使う方法では評価が分かれました。

農家が最もよく挙げた利点は収量の向上で、次いで土壌の肥沃さの改善でした。複数の作物を同じ区画から収穫できること、家庭で食べる食品の種類が増えること、余剰分を販売できることも評価されました。多くの農家は、植物で土を覆うことや作物残さによる被覆が土壌の水分を保ち、雨の少ない時期への対応に役立つと捉えていました。これらは、農家が述べた経験や認識として報告されています。

一方、導入に必要な資材や労力は重要な負担でした。多くの回答者が、実施には追加の資材や資源が必要だと述べました。特に導入初期の土地の準備や植え付け、複数作物の除草・管理に手間がかかるという意見がありました。一部では、土を覆うことで雑草が抑えられ、作業が減るという評価もあり、労働負担の受け止め方は一様ではありませんでした。

圃場見学会でも、トウモロコシとササゲの帯状栽培が両会場で最も支持されました。追跡調査では、見学者253人のうち68人、26.9%が、翌作期に外部の事業支援なしで少なくとも一つの対象農法を導入したと報告されています。中心となったのはササゲを取り入れた保全農業で、早生品種が不安定な降雨に適しているという認識と、地元の買い手にササゲを販売できることが導入理由に挙げられました。

この報告が示すこと

著者らは、農法の選択は生産面の利点だけでなく、必要な労働力、資材の入手しやすさ、管理の複雑さ、世帯の資源との相性に左右されると結論づけています。普及にあたっては一律の技術一式を勧めるより、農家が自分の目的と条件に合う方法を選べるよう、複数の選択肢を用意することが重要だとしています。

ただし、試験参加農家は無作為に選ばれたわけではなく、地域全体を代表するとは限りません。資源が豊富な類型は3戸と少なく、順位づけや二択式の回答では評価の細かな事情を十分に表せない可能性もあります。また、2作期後の評価であるため、長期的な継続利用を示すものではありません。この報告は、農家自身が感じる利点と実行上の負担を併せて捉えることが、条件に合った農法を考える鍵になると示しています。

原著論文の著者・所属:Kamwana-Ngwira Florence(Department of Agriculture Research Services, Chitedze Research Station, Box 158, Lilongwe 207258, Malawi; International Maize and Wheat Improvement Center (CIMMYT), Harare P.O. Box MP 163, Zimbabwe; School of Agricultural, Earth and Environmental Sciences, University of KwaZulu Natal, Private Bag X01, Durban 3209, South Africa)、Chiduwa Mazvita、Mabhaudhi Tafadzwanashe、Groot Jeroen、Santiago Lopez-Ridaura

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Kamwana-Ngwira Florence, Chiduwa Mazvita, Mabhaudhi Tafadzwanashe, et al. Farmers’ Perceptions of the Advantages, Risks and Farmer-Centred Targeting of Sustainable Intensification Innovations in the Mtunthama EPA, Central Malawi. Sustainability(出版社:Multidisciplinary Digital Publishing Institute) 2026-09-30. DOI: 10.3390/su181910008. 原著ライセンス:CC BY.