著者の所属・活動拠点の国は、イタリア、エクアドル、ウルグアイです。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
研究の目的:環境にも配慮した食事は睡眠とどう関わるか
睡眠と食事は互いに影響し合い、健康に重要な役割を果たすと考えられています。一方で、環境への負荷も考慮した持続可能な食事パターンと睡眠、さらに肥満がどう関わり合うのかは、まだ十分に分かっていません。
研究チームが注目したのは「プラネタリー・ヘルス・ダイエット(地球の健康のための食事)」です。これは、人の健康と環境的に持続可能な食料システムの両立を目指して国際的な委員会が提案した食事パターンです。野菜、果物、全粒穀物、豆類、ナッツ、植物油を中心にし、魚や鶏肉、卵、乳製品は適量にとどめ、赤身肉や加工肉、添加糖、飽和脂肪は大きく控えることを勧めています。
著者らによると、この食事パターンについては糖尿病や心血管疾患、うつ・不安などとの関連を調べた研究が増えている一方で、睡眠との関係は比較的研究が少ない状況でした。そこで研究チームは、地中海沿岸に暮らすイタリアの成人を対象に、この食事パターンをどの程度実践しているかと睡眠の質との関連を調べました。あわせて、その関連が体重の状態によって異なるかどうかも探りました。
何を調べたか
分析には、イタリア南部シチリア島のカターニア市街地で2014〜2015年に行われた住民調査のデータが使われました。かかりつけ医の患者名簿から無作為に選ばれた18歳以上の男女のうち、食事記録の信頼性が確認された1936人が対象です。ある一時点での状態を調べる「横断研究」と呼ばれる方法で、時間を追って変化を観察したものではありません。
食事は、過去6か月に110品目の食品をどれくらいの頻度で食べたかを尋ねる質問票で調べました。その結果をもとに、プラネタリー・ヘルス・ダイエットへの近さを0〜150点で表す指標を算出しました。この指標は、ナッツや豆類、果物、野菜、全粒穀物など十分にとりたい食品、卵や魚、乳製品など適量が望ましい食品、赤身肉や添加糖など控えたい食品といった16の項目から構成されています。参加者は点数に応じて4つのグループに分けられました。
睡眠の質は、広く使われている「ピッツバーグ睡眠質問票」で評価しました。この質問票は、本人が感じる睡眠の質、寝つくまでの時間、睡眠時間、睡眠効率(床にいる時間のうち実際に眠っている割合)、睡眠中の妨げ、睡眠薬の使用、日中の活動への支障という7つの側面から睡眠を点数化します。合計点が5点未満の人を「睡眠の質が適切」と分類しました。
分析では、年齢、性別、BMI(体格指数)、身体活動、学歴、職業、喫煙、総摂取エネルギーの影響を統計的に調整しました。そのうえで、点数が最も低いグループと比べて、他のグループで睡眠の質が適切である「オッズ」(起こりやすさを表す統計上の指標)がどれだけ違うかを推定しました。
主な結果
プラネタリー・ヘルス・ダイエットにより近い食事をしている人ほど、睡眠の質が適切である傾向が見られました。点数が最も高いグループでは、最も低いグループと比べて、睡眠の質が適切であるオッズが約1.65倍でした。ただし、グループ間の差は点数の順に一様に大きくなっていたわけではありません。
睡眠の側面ごとに見ると、本人が感じる睡眠の質との関連が最も一貫していました。睡眠中の妨げなど一部の側面では、特定のグループでのみ関連が見られ、著者らはこれらを探索的な結果と位置づけています。一方、睡眠時間、睡眠効率、睡眠薬の使用については関連が見られませんでした。
体重の状態で分けて分析すると、過体重または肥満の人で関連がよりはっきりしていました。このグループでは、点数が最も高い人で睡眠の質が適切であるオッズが約2.4倍でした。一方、標準体重の人では、全体的な睡眠の質との明確な関連は見られませんでした。ただし、体重による違いを統計的に正式に検定したわけではないため、著者らはこの結果も探索的なものだとしています。
この研究が示すこと
著者らは、健康的で持続可能な食事パターンを実践することが、特に体重が多めの人で、より良い睡眠と関係している可能性があると結論づけています。
一方で、この研究は一時点の調査に基づくため、食事が睡眠を良くしたという因果関係は示せません。著者らは、この食事パターンが地中海食などの植物性食品中心の食事と多くの特徴を共有しており、今回の関連がプラネタリー・ヘルス・ダイエット特有のものかどうかは判断できないと述べています。また、診断されていない睡眠時無呼吸症候群が、体重別の結果に影響している可能性も指摘しています。
今回の研究は、持続可能な食事、体重、睡眠の関係についてまだ限られている知見に、新たなデータを加えるものといえます。
原著論文の著者・所属:Justyna Godos(Department of Biomedical and Biotechnological Sciences, University of Catania, 95123 Catania, Italy)、Giuseppe Caruso(Departmental Faculty of Medicine, UniCamillus-Saint Camillus International University of Health Sciences, 00131 Rome, Italy; IRCCS San Camillo Hospital, 30126 Venice, Italy)、Alice Rosi(Human Nutrition Unit, Department of Food and Drug, University of Parma, 43125 Parma, Italy)、Maria Antonieta Touriz Bonifaz(Facultad de Ciencias Médicas, Universidad de Guayaquil, Avenida 10 NO, Guayaquil 090613, Ecuador; Facultad de Ciencias de la Salud, Universidad Católica de Santiago de Guayaquil, Av. Pdte. Carlos Julio Arosemena Tola, Guayaquil 090615, Ecuador)、Francesca Scazzina(Human Nutrition Unit, Department of Food and Drug, University of Parma, 43125 Parma, Italy)、Maria Paula Roca-Solano(Escuela de Humanidades, Universidad Espíritu Santo, Samborondon 0901952, Ecuador)、Florencia Ceriani(Nutrition School, Universidad de la Republica (UdelaR), Montevideo 11200, Uruguay)、Massimiliano Tucci(Division of Human Nutrition, Department of Food, Environmental and Nutritional Sciences (DeFENS), Università degli Studi di Milano, 20133 Milan, Italy)、Daniela Martini(Division of Human Nutrition, Department of Food, Environmental and Nutritional Sciences (DeFENS), Università degli Studi di Milano, 20133 Milan, Italy)、Giuseppe Grosso(Department of Biomedical and Biotechnological Sciences, University of Catania, 95123 Catania, Italy)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Justyna Godos, Giuseppe Caruso, Alice Rosi, et al. Planetary Health Diet, Obesity and Sleep Quality in Italian Adults. Nutrients 2026-10-29. DOI: 10.3390/nu18213586. 原著ライセンス:CC BY.