著者の所属・活動拠点の国は、タイです。
掲載誌:Cogent Social Sciences
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
研究チームは、タイ南部の先住民族マンニの移動生活を支える文化的な論理を明らかにしようとしました。背景には、先住民族の移動を扱う従来の研究では、とくに東南アジアの狩猟採集社会について、移動の背後にある文化や精神的信仰、倫理的な考え方が十分に重視されてこなかったという問題意識があります。
何を、どのように調べたか
著者らは文献・記録を用いる研究として、サトゥーン、ヤラー、ナラーティワートの各県に暮らすマンニの伝統的な生業を扱った民族誌、政府機関やNGOの報告書、口承の物語、歴史的な記録文書を分析しました。人々が行動にどのような意味を持たせているかを読み解く立場から、資料に現れる主題を整理し、移動と環境知識、精神的信仰との関わりを調べました。
主な報告結果
論文は、マンニの移動は無作為ではなく、食料不足、環境の悪化、病気、寄生虫の発生といった状況に応じて行われると報告しています。また、それぞれの移動には、生態環境に関する知識と精神的信仰の独自の組み合わせが関わっていました。著者らは、移動には健康を守るために状況へ適応する方策、生態環境の再生を促す仕組み、宗教的実践という側面があると解釈しています。一方、従来の移動のあり方は、一貫性を欠く自然保護政策や外部からの開発圧力によって、次第に脅かされていると述べています。
この報告が示すこと
研究チームは、マンニの移動を、生活を支える文化や信仰と切り離さずに理解する必要性を示しています。その理解は、森林の利用や保護をめぐって利害が対立する地域で、公共政策、持続可能性、先住民族の権利を考え直す視点になると位置づけています。
原著論文の著者・所属:Daycho Khaenamkhaew(Department of Community Development, Nakhon Si Thammarat Rajabhat University)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Daycho Khaenamkhaew. Spirits, scarcity, and sustainability: rethinking Indigenous mobility through the Manni experience in Thailand. Cogent Social Sciences 2026-11-02. DOI: 10.1080/23311886.2026.2758477. 原著ライセンス:CC BY.