この研究は、タイの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Food Research

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の背景と目的

クリスピー・ラー(Crispy La)は、タイ南部に伝わる伝統的な菓子です。もともとは仏教の儀式で用いられてきたもので、現在では地域を代表するスナックとして広く知られています。こうした地域固有の伝統食品は、その土地の農業生産者や食品事業者を支え、地域の持続的な発展に結びつくものとして位置づけられています。

著者らは、グローバル化と「グローカル化」(世界的な企業が各地の市場に合わせて商品やサービスを調整すること)が同時に進むなかで、地域の生産者も競争力を保つための適応を迫られていると指摘します。そのためには消費者が何を求めているかを知ることが欠かせませんが、こうした文化に根ざした菓子について消費者の行動や好みを調べた研究はこれまで多くありませんでした。そこで本研究は、クリスピー・ラーを題材に、伝統に根ざした手づくりスナックを消費者がどのように選んでいるのかを明らかにし、その好みに応じて消費者を分類することを目的としました。

調査の方法

研究チームは「コンジョイント分析」と呼ばれる手法を用いました。これは、商品をいくつかの特徴(属性)の組み合わせとして捉え、特徴の水準を変えた複数の商品案を提示して、消費者の選択がどう変わるかを統計的に調べる方法です。本研究では、回答者に商品案のセットを好ましい順に並べてもらう「順位づけ型」の方式が採られました。

取り上げられた属性は7つです。食品標準の認証(国のGMP基準のみか、ハラル認証も加わるか)、100グラムあたりの価格、製品の形状(四角・厚い円形・円筒形)、味(従来の味か多様な味か)、包装の種類(アルミパウチ・PPプラスチック箱・個包装)、環境配慮型包装の有無、そして栄養面の改善(砂糖の低減・たんぱく質の追加・食物繊維の追加)です。

調査対象は、この菓子が主に生産・流通するナコンシータマラート県とソンクラー県の4つの地区で、21歳以上の勤労者層から目的的に選ばれました。地域ごとの標本数は販売量に応じて配分され、2024年1月から5月にかけて534人分の回答が集められました。集まった順位データは、ベイズ統計の枠組みでマロウズ・モデルを用いたクラスタリングにかけられ、好みの似た消費者グループへの分類が行われました。

報告された主な結果

著者らの報告によれば、消費者が最も重視していたのは栄養面の改善で、次いで包装の種類、100グラムあたりの価格の順でした。製品の形状、環境配慮型包装、味、認証は相対的に影響が小さい属性と位置づけられています。栄養面については食物繊維の追加と砂糖の低減が好まれ、価格は安いほど満足度が高いという関係が示されました。包装ではアルミパウチがPP箱より好まれ、形状では円筒形が最も、厚い円形が最も好まれない結果でした。味については、従来の味より多様な味の選択肢があることを評価する傾向がみられています。

分析モデルの内部的な妥当性については、予測された選好スコアと実際の順位との間にピアソンの相関係数0.974(p<0.001)、順位の並び方の再現度を示すケンドールのタウが0.788(p<0.001)と報告されました。ただし、モデルの推定に使っていない「ホールドアウト」の商品案に対する予測力は中程度にとどまり、統計的に有意ではなかった(p=0.087)と著者らは述べています。

クラスタリングの結果、534人は4つのグループに分かれました。グループ1(26.4%)はたんぱく質を加えた製品を好み、価格が高くても受け入れる層です。グループ2(26%)は食物繊維の追加と手ごろな価格を重視します。グループ3(30.7%)は本研究で最も大きな割合を占め、砂糖が少なく食物繊維の多い製品を、低〜中程度の価格で求める層です。グループ4(16.9%)も食物繊維の追加を好み、手ごろな価格を強く志向し、環境に配慮した包装を選ぶ傾向があるとされました。

この研究が示すこと

著者らは、タイの伝統菓子は地元の職人や地域の共同事業者によって作られることが多く、マーケティングの技能や資源が限られがちだと述べています。今回明らかにされた属性の重要度と消費者の分類は、そうした作り手や、事業支援にあたる関係機関が、どの層に向けてどのような製品を組み立てるかを考えるための手がかりになります。

同時に著者らは限界にも触れています。資源の制約から標本数には限りがあり、クラスタリング後の代表性には注意が必要であること、また調査がクリスピー・ラーの発祥地である南部で行われたため、回答の多くはこの菓子をよく知る人々から得られたものであることです。

それでもこの研究は、消費者が求めるものと市場に出回る商品との間にある隔たりを可視化し、伝統に根ざした手づくり菓子を現代の嗜好に照らして考え直す視点を提示しています。

著者:A.T. Thinsadao(Food Industrial Technology Management Program , Faculty of Agro-Industry , Prince of Songkla University , Hat Yai , Songkla , 90110 , Thailand)、K.J. Janthawornpong(Food Industrial Technology Management Program , Faculty of Agro-Industry , Prince of Songkla University , Hat Yai , Songkla , 90110 , Thailand)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):A.T. Thinsadao, K.J. Janthawornpong. Consumer preferences and segmentation for Crispy La snack in Southern Thailand. Food Research 2026-09-16. DOI: 10.26656/fr.2017.10(5).341. 原著ライセンス:CC BY.