著者の所属・活動拠点の国は、タイです。
掲載誌:Applied Sciences
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
研究の目的
タイ南部では、交雑在来鶏「カオドークケー」が、地元産の高付加価値な鶏肉として市場を広げています。一方で、この鶏肉を長期間冷凍保存したときに品質がどう変わるかについては、実測データがほとんどありませんでした。
研究チームは、カオドークケーの鶏肉を−18±2℃で480日間冷凍保存し、微生物の増え方を追跡しました。あわせて、肉の色、pH、加熱による重さの減り方などを一般的な市販ブロイラーと比べ、品種と部位のどちらが品質に強く影響するかを調べました。
どのように調べたか
タイ南部3県の生産地から、カオドークケー20羽とブロイラー20羽を集めました。いずれも生後16週で処理しています。ブロイラーは通常もっと早く出荷されますが、飼育期間による違いを除いて品種同士を比べるため、カオドークケーと同じ16週齢にそろえました。
胸肉ともも肉を一つずつ真空包装し、冷凍庫で保存しました。微生物検査はカオドークケーのみを対象とし、保存0日目から480日目までの7時点で実施しています。調べたのは、肉に含まれる生きた細菌の総数を示す「一般生菌数」と、酵母・カビの数です。
肉の色、pH、加熱前後の重さの減少割合(加熱損失)は、両方の品種の胸肉ともも肉について測りました。ただしこれらは保存期間中の1時点だけの測定で、それが保存何日目だったかは記録に残っていません。肉の色は、明るさ・赤み・黄色みを数値で表す方法で評価しました。
主な結果
カオドークケーの一般生菌数は、保存開始時の肉1グラムあたり約340個から、480日目には約1,610個へと緩やかに増えました。酵母・カビは全期間を通じて1グラムあたり1,000個未満でした。いずれもタイの工業規格と国際的な微生物基準の上限(一般生菌数は1,000万個、酵母・カビは1万個)を大きく下回っています。統計解析でも、保存日数とともに菌数がわずかに増える傾向が確認されました。ただし著者らは、この増加の一部は菌が実際に増えたためではなく、解凍の過程や測定のばらつきによる可能性もあると述べています。
肉の色は、品種よりも部位の違いに大きく左右されていました。品種の違いは明るさに表れ、カオドークケーのもも肉はブロイラーのもも肉より色がやや暗く、赤みの値が高い結果でした。著者らは、放し飼いに近い環境で運動量が多く、赤い色素を含む筋肉が発達したことと関連する可能性を挙げています。カオドークケーのpHは5.73〜6.13で、死後の肉として正常な範囲にありました。品質異常の目安とされる、色が薄く水っぽくなる状態は見られませんでした。
加熱損失は、胸肉が約34%、もも肉が約22〜24%でした。部位の違いがばらつきの約94%を説明した一方、品種による差は統計的に意味のある水準ではありませんでした。「在来鶏は肉汁を保ちやすい」という一般的な見方とは異なり、少なくとも加熱損失で見る限り、肉が水分を保つ力を左右していたのは品種ではなく部位だったことになります。
この研究が示すこと
今回測定した微生物と理化学的な項目の範囲では、カオドークケーの鶏肉は−18℃の冷凍条件で480日間、許容できる品質を保っていました。また、肉の色や加熱損失には品種よりも部位が強く関わっていたことから、品質管理では部位ごとの扱いが重要になると著者らは考えています。
一方で、著者らはこの結果を予備的なデータと位置づけています。試料数が少ないこと、脂質の酸化など冷凍肉の劣化を示す主要な指標を測っていないことを、限界として明記しています。著者らは今回の成果を、タイ南部の交雑在来鶏について報告された冷凍保存の定量的なモデルとして、最初期のものの一つと位置づけています。
原著論文の著者・所属:Jareewan Chankong(Department of Agribusiness, Faculty of Agriculture, Rajamangala University of Technology Srivijaya, Nakhon Si Thammarat 80110, Thailand)、Apinya Vanichpun(Department of Food and Service Management, Faculty of Agro-Industry, Rajamangala University of Technology Srivijaya, Nakhon Si Thammarat 80240, Thailand)、Kittiphoom Suppalakpanya(Department of Food and Service Management, Faculty of Agro-Industry, Rajamangala University of Technology Srivijaya, Nakhon Si Thammarat 80240, Thailand)、Mahamasuhaimi Masae(Department of Industrial Engineering, Faculty of Engineering, Rajamangala University of Technology Srivijaya, Songkhla 90000, Thailand)、Tawich Klathae(Department of Civil Engineering, College of Industrial Technology and Management, Rajamangala University of Technology Srivijaya, Nakhon Si Thammarat 80210, Thailand)、Kuliga Tanasavate(Department of Foreign Languages for Communication, Faculty of Liberal Arts, Rajamangala University of Technology Srivijaya, Songkhla 90000, Thailand)、Jiranart Rongchoung(Department of Food and Service Management, Faculty of Agro-Industry, Rajamangala University of Technology Srivijaya, Nakhon Si Thammarat 80240, Thailand)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jareewan Chankong, Apinya Vanichpun, Kittiphoom Suppalakpanya, et al. Microbiological, Physicochemical, and Functional Quality of Crossbred Native Chicken (Khao Dok Khae) During Extended Frozen Storage. Applied Sciences 2026-09-03. DOI: 10.3390/app16178766. 原著ライセンス:CC BY.