ソルガムは乾燥や高温に比較的強い作物として知られ、世界的な気候変動と水資源の減少が進むなかで注目されている穀物のひとつです。ただし、どれだけ肥料や水を与えれば栄養価の高い種子が得られるのかは、これまで十分に整理されていませんでした。トルコのイスパルタ応用科学大学農学部(Isparta University of Applied Sciences)のMehmet Alagöz氏とMevlüt Türk氏は、窒素肥料の量と灌漑(かんがい)の量を組み合わせて変化させ、ソルガムの種子の品質にどのような影響が出るのかを調べました。

研究チームは2022年に、点滴灌漑(地中に埋設したチューブから水を供給する方式)を用いた圃場試験を実施しました。窒素施肥量は無施肥(0)、80、160、240、320キログラム毎ヘクタールの5段階、灌漑量は雨水のみに頼る無灌漑(0%)から25%、50%、75%、100%(標準的なフル灌漑)、さらに125%までの6段階を設定し、これらを組み合わせて分割区法という実験デザインで比較しました。調べた項目は、粗タンパク質や遊離アミノ酸の総量、脂肪酸の組成、総フェノール化合物量、抗酸化能、糖含量、そして水の利用効率など多岐にわたります。

窒素と水、それぞれの効果は逆方向だった

結果として、調べた品質項目の多くは、窒素の量、灌漑の量、そしてその組み合わせによって有意に変化することが示されました。窒素施肥量を増やすと、粗タンパク質、遊離アミノ酸の総量、総フェノール化合物量、抗酸化能、還元糖含量が高まる傾向が見られました。一方で灌漑については逆の傾向が見られ、水を控えめにする『不足灌漑』条件のもとでこれらの成分が全般的に増加し、逆に灌漑量を増やしていくと減少する傾向が確認されました。油分含量や、フェノール化合物などの二次代謝産物についても、特に水を制限した条件下で増加する傾向が報告されています。

水の使い方の効率という観点では、水利用効率(WUE)と灌漑水利用効率(IWUE)はいずれも、灌漑量が中程度の条件で最も高くなることがわかりました。また、種子に含まれる脂肪酸の構成については、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸が主成分であり、窒素施肥や灌漑条件を変えても、その割合はわずかにしか変化しなかったと報告されています。さらに主成分分析やヒートマップ、相関分析といった統計的な手法を用いて品質に関わる各指標同士の関係を調べたところ、これらの指標同士に強い関連性があることも示されました。

これらを総合し、研究チームは、灌漑量を標準の50%とする条件(I50)と、窒素施肥量を1ヘクタールあたり160〜240キログラムとする条件を組み合わせることが、種子の品質と水利用効率のバランスが最も良い、持続可能な栽培管理の方向性になりうると結論づけています。

この研究を読むうえで押さえておきたいこと

この研究は2022年にトルコで行われた1年間・1圃場での試験に基づくものであり、気候や土壌条件が異なる地域でも同じ結果が再現されるかどうかは、この論文の要旨からは明らかではありません。また、ここで報告されているのはあくまで種子に含まれる成分量や抗酸化能といった品質指標の変化であり、これらの成分が健康にどのような影響を与えるかを人や動物で検証したものではない点にも注意が必要です。ソルガムの栽培管理に関する一つの知見として位置づけられる研究であり、この結果だけで栽培方法や食品としての価値が確定するわけではありません。

まとめ

今回の研究では、点滴灌漑下のソルガム栽培において、窒素施肥量と灌漑量の組み合わせが種子のタンパク質、フェノール化合物、抗酸化能、糖含量などに影響を与えることが示されました。特に、水を適度に抑えつつ中程度の窒素を施す管理方法が、品質と水利用効率の両立という観点から一つの目安になりうることが示唆されています。今後、異なる地域や年次での追試を通じて、この知見がどこまで一般化できるかが明らかになっていくと考えられます。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Mehmet Alagöz, Mevlüt Türk. Interactive effects of nitrogen fertilization and irrigation regimes on seed quality, fatty acid composition, phenolic compounds, and antioxidant capacity of sorghum. サイエンティフィック・リポーツ (2026). DOI: 10.1038/s41598-026-67408-x. 原著ライセンス: cc-by.