ジャガイモといえば土の中で育つ「イモ」を食べる作物というイメージが強いですが、種イモから出たばかりの若い芽(マイクログリーン)を食用として活用できないかという研究が報告されました。マイクログリーンとは、発芽してごく初期の段階で収穫する野菜の新芽のことで、ブロッコリーやバジル、ラディッシュなど様々な植物ですでに食材として使われています。今回トルコの研究チームは、ジャガイモ(Solanum tuberosum L.)の新芽に着目し、その中に含まれる成分や抗酸化に関わる働きを調べました。

研究に使われたのはトルコ・アフィヨンカラヒサール県サンドゥクル地域の農家が生産した「アグリア」という品種のジャガイモです。種イモを次亜塩素酸ナトリウム溶液で表面殺菌したのち、ピートと真珠岩(パーライト)を2対1で混ぜた培地の上に置き、室温約25度・16時間の光と8時間の暗闇という環境で栽培し、植え付けからおよそ20日後に緑色の芽の部分を収穫して分析に用いています。肥料は使用しなかったとのことです。

新芽に含まれていた成分と抗酸化の働き

分析の結果、新芽1グラムあたりの値として、全フェノール含量は1.22±0.14ミリグラム、フラボノイド含量は2.17±0.15ミリグラムと測定されました。フェノール類やフラボノイドは植物が持つ抗酸化性の成分として知られています。抗酸化能については、銅イオンを利用したCUPRAC法という手法で5.25±0.02マイクロモル(トロロックス換算)、鉄イオンを捕捉する力を調べるFIC法という手法で9.20±0.42マイクロモル(EDTA換算)という値が示されました。

糖や栄養成分については、水に溶けやすい可溶性糖の含量が124.72±0.38ミリグラム、還元糖が8.48±0.08ミリグラムと、糖の中でもかなりの部分を可溶性のものが占めていました。一方でタンパク質は1.76±0.38ミリグラム、デンプンはわずか0.08±0.01ミリグラムにとどまり、この時期の新芽ではデンプンとしてため込まれる量が少なく、糖が可溶性の形で存在している状態だとされています。

さらに各成分どうしの関係を統計的に調べた相関分析では、全フェノール含量とCUPRAC抗酸化能の間に非常に強い正の関係(相関係数0.99)が見られ、著者らはフェノール類が抗酸化能の主な担い手であると述べています。一方で、全フェノール含量と可溶性糖の量の間には強い負の相関(マイナス0.97)が見られ、糖やタンパク質といった基本的な代謝と、フェノール類のような成分の生成との間に、何らかのバランス関係がある可能性が示唆されています。またタンパク質含量と糖の量の間には強い正の相関が見られ、タンパク質の合成と糖代謝が同時並行で進んでいる可能性も述べられています。

この研究を読むうえで押さえておきたい点

この論文の著者らは、ジャガイモの新芽に関する研究がこれまで非常に限られていたと述べており、今回の測定は基礎的なデータを示したものという位置づけです。研究で扱われた品種は「アグリア」の1種類のみで、栽培条件も特定の環境(温度・光条件・培地など)のもとで行われたものです。著者ら自身も、今後は異なる品種や栽培条件、収穫時期を変えて、より詳しい成分の分析を行う必要があると述べています。今回の数値がすべてのジャガイモ新芽に当てはまるとは限らず、あくまで一つの研究で得られた結果として捉えるのがよさそうです。

なお、この研究結果は特定の健康効果を証明するものではなく、フェノール類などの抗酸化成分が新芽に含まれていることを実験的に確認したものです。

まとめ

今回の研究では、ジャガイモの新芽に一定量のフェノール類やフラボノイド、抗酸化に関わる働きが確認されるとともに、糖は可溶性の形で多く存在し、デンプンの蓄積は少ないという特徴が示されました。著者らは、ジャガイモの新芽が食品素材としての可能性を持ち、ジャガイモという作物の新しい活用法になりうると位置づけていますが、これは一つの研究による知見であり、今後さらに多くの品種や条件での検証が必要とされています。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Murat Mutlucan, Sabri Erbaş. Biochemical Composition, Antioxidant Capacity, and Correlation Analysis of Potato (Solanum tuberosum L.) Microgreens. トルコ農業・食品科学技術誌 (2026). DOI: 10.24925/turjaf.v14i8.2212-2218.8812.