著者の所属・活動拠点の国は、トルコです。
掲載誌:Scientific Reports
ライセンス: CC BY-NC-ND 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
「料理が得意な人ほど健康的な食生活を送っている」というイメージは根強くあります。実際、家庭で調理する頻度が高い人ほど加工食品への依存が減り、栄養バランスが整いやすいという見方は、これまでも多くの栄養教育プログラムの前提になってきました。しかし、料理や食品を準備するスキルそのものが、食事の質や体重と本当に結びついているのかについては、これまでの研究でも結論が一致していませんでした。トルコの研究チームが、19歳から64歳のトルコ人女性281人を対象にこの関係を調べた研究を行い、サイエンティフィック・リポーツに2026年9月に掲載予定です。
どのように調べたのか
研究チームは、便宜的な抽出方法(対象者を無作為ではなく集めやすい方法で募る手法)で集めた281人の女性を対象に、検証済みの33項目からなる「料理・食品準備スキル尺度」を用いて、参加者自身の調理技術への自信や実践度を評価しました。食事の質については、24時間思い出し法(前日に食べたものを聞き取る調査)を1回実施し、その内容をもとに栄養素の充足度を評価する指標であるNutrient Rich Food Index 9.3(NRF 9.3)を算出しています。この指標は、食事に含まれる好ましい栄養素と好ましくない栄養素のバランスを点数化するもので、点数が高いほど栄養素密度の高い食事とされます。加えて、参加者の体格指数(BMI)が正常範囲かどうかも合わせて確認しました。
研究でわかったこと
料理スキルの得点によって3つのグループ(三分位)に分けたところ、最も得点の高いグループ(平均214.5点、標準偏差1.1)は、調理技術への自信が有意に高く、週5回以上自宅で調理すると答えた人の割合も、得点の低いグループに比べて有意に多いという結果でした。一方で、料理スキルが高いグループでは、BMIが正常範囲から外れている人の割合が高く、統計的には約2.1倍のオッズ比(95%信頼区間1.14〜3.87)が示されました。ただし、この関連は年齢や教育、収入といった社会人口統計学的要因や食事内容を調整した分析を行うと有意ではなくなりました。また、食事の質を示すNRF 9.3の平均点は333.4点(標準偏差50.2)でしたが、料理スキルの高低と食事の質との間には統計的に意味のある関連は見られませんでした。つまり、交絡要因を考慮すると、料理スキルの高さが食事の質や体重の良し悪しを単独で説明するとは言えない、という結果になっています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
この研究は、トルコの一地域から便宜的に集められた19〜64歳の女性281人を対象とした横断研究であり、ある一時点でのデータをもとにした分析です。そのため、料理スキルと体重・食事の質との間に因果関係があるかどうかを示すものではありません。食事内容の把握も24時間思い出し法を1回行っただけであり、日々の食習慣の変動までは捉えきれていない点にも留意が必要です。今回の対象は日本人ではなくトルコ人女性であり、著者らの所属機関もトルコ国内の大学(バンドゥルマ・オンイェディ・エイリュル大学、ガズィアンテップ大学)です。食文化や生活習慣が異なる集団での結果がそのまま他の国や地域に当てはまるとは限らない点も念頭に置く必要があります。
まとめ
この研究では、調理・食品準備のスキルが高い女性ほど自宅での調理頻度や調理への自信は高い一方で、食事の質や体重との独立した関連は、社会人口統計学的要因や食事内容を調整すると認められませんでした。研究チームは、料理スキルを高めるだけでは食事の質の改善や体重管理にはつながりにくく、より広い栄養教育や生活習慣への働きかけと組み合わせる必要があると示唆しています。あくまで一つの横断研究による知見であり、結論が確定したわけではない点に注意して読む必要があります。
原著論文の著者・所属:Kezban Şahin(Department of Nutrition and Dietetics, Faculty of Health Sciences, Bandırma Onyedi Eylül University, Balıkesir, Turkey)、Hacı Ömer Yılmaz(Department of Nutrition and Dietetics, Faculty of Health Sciences, Bandırma Onyedi Eylül University, Balıkesir, Turkey)、Çağdaş Salih Meriç(Department of Nutrition and Dietetics, Faculty of Health Sciences, Gaziantep University, Gaziantep, Turkey)
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Kezban Şahin, Hacı Ömer Yılmaz, Çağdaş Salih Meriç. Associations of cooking and food preparation skills with diet quality and body weight among Turkish women. サイエンティフィック・リポーツ (2026). DOI: 10.1038/s41598-026-66250-5. 原著ライセンス: cc-by-nc-nd.