炭火で肉を焼くと香ばしい風味が生まれる一方で、焦げや煙とともに多環芳香族炭化水素(PAH)と呼ばれる化学物質が生成されることが知られています。PAHは主に有機物の不完全燃焼によって発生し、食品中の含有量は国際的に注目されてきたテーマです。今回紹介する研究は、トルコの伝統的な食品であるアクチャアバット・ミートボール(Akçaabat meatball)を対象に、調理方法の違いがPAH生成量にどう影響するかを調べたものです。
何を、どうやって調べたのか
研究チームは、8つの異なる生産者から入手したアクチャアバット・ミートボールのサンプルを用意し、基本的な化学的性質に加えて、HPLC-FLD(高速液体クロマトグラフィー蛍光検出法)という分析手法でPAH含有量を測定しました。比較したのは、油を使わずフライパンで焼く方法(ドライパン調理)、電気グリル、オーブン焼き、木炭バーベキュー、ヘーゼルナッツ殻炭バーベキューという5種類の調理法です。評価の指標には、食品安全分野で重視される代表的な4種のPAH(優先PAH4種)の合計量(∑PAH4)が用いられました。
調理法によってPAH量に大きな差
分析の結果、基本的な成分特性はサンプルごとにばらつきが見られたものの、最も顕著な違いが表れたのは調理方法に応じたPAH量でした。∑PAH4の値は、すべての調理条件を通じて7.70〜112.38µg/kgという幅広い範囲に及んだと報告されています。中でも木炭バーベキューおよびヘーゼルナッツ殻炭バーベキューでは、他の調理法と比べてPAH濃度が最も高くなり、規制基準値を超える例も多く見られたとされています。一方、電気グリルで調理した場合はPAH濃度が最も低く、食品安全基準への適合度が最も高かったと述べられています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
この結果は、同じ食品であっても調理法の選び方によってPAHの生成量が大きく変わりうることを示すものです。研究チームは、電気グリルが比較的安全な選択肢となりうる一方、伝統的な炭火調理はPAH曝露の観点から相応のリスクを伴う可能性があると考察しています。ただし、これは特定の生産者から得たサンプルを対象とした一つの研究であり、対象食品や調理条件が異なれば結果も変わりうる点には留意が必要です。日本の食生活における焼き肉や炭火調理への直接的な言及は、本研究の要旨には含まれていません。
まとめ
この研究は、トルコの伝統料理であるアクチャアバット・ミートボールを題材に、調理方法がPAH生成量に大きく関わることを、実際の生産者サンプルの分析を通じて示しました。炭火バーベキューは高いPAH値を示しやすく、電気グリルは相対的に低い値にとどまったと報告されています。焼き調理と化学物質生成の関係を考えるうえで参考になる知見といえますが、一つの研究結果として受け止め、今後さらなる検証が重ねられることが期待されます。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Sinan Bostan, Abdulkadir Gül, Ömer Karpuz, et al. Impact of cooking methods on PAH formation in traditional Akçaabat meatballs. ギュミュシュハネ大学理学研究科紀要 (2026). DOI: 10.17714/gumusfenbil.1867998.