著者の所属・活動拠点の国は、アメリカです。
掲載誌:Frontiers in Plant Science
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
パセリに含まれる成分を光で増やせるか
パセリは、アピゲニンという成分を比較的多く含む植物として知られています。アピゲニンはフラボノイドと呼ばれる植物成分の一種で、植物が紫外線から身を守るためにつくる物質です。論文によると、これまでの研究で抗がん作用や抗炎症作用などが報告されており、医薬的な価値が注目されてきました。化学合成も可能ですが、何日もかかるうえに収率が低いことが課題とされています。
パセリに含まれるアピゲニンの多くは、糖が結びついた形で存在しています。一方、糖が結びついていない「遊離アピゲニン」も少量含まれていて、糖を切り離す処理をしなくても抽出・測定できます。研究チームは、この遊離アピゲニンに注目しました。照明を強くしたり紫外線を当てたりすると、室内で育てたパセリの遊離アピゲニンが増えるのかを調べています。過去の研究では、紫外線を当てるとパセリでアピゲニンを合成する酵素の働きが強まることが報告されていました。そこで著者らは、紫外線を当てれば遊離アピゲニンが増えるという仮説を立てました。
照明の強さと紫外線を当てた日数を変えて栽培
研究チームは、イタリアンパセリの品種「ジャイアント・オブ・イタリー」を3台の栽培室(グロースチャンバー)で育てました。照明はLEDで、1日16時間点灯しました。1日に植物が受ける光の総量を、栽培室ごとに3段階に設定しています。1つはパセリの推奨量で、残り2つはそれより25%多い量と50%多い量です。
種まきから8週間後、紫外線を当てていない対照群の葉を収穫しました。残りの株には、LEDの光に加えて紫外線を照射しました。照射には、紫外線Aと紫外線Bを含む蛍光管を使い、1日16時間の点灯時間を通して1日・2日・4日・8日のいずれかの期間照射しました。どの株も、収穫前には8時間暗い状態に置いています。収穫した葉は凍結乾燥し、高速液体クロマトグラフィー(成分を分離して量を測る分析法)で遊離アピゲニンを測定しました。著者らは、この測定法でパセリの抽出液からアピゲニンを妨害なく分離でき、回収率も良好だったと報告しています。
照明の強さでは差がなく、紫外線を当てた期間が長いほど増加
LED照明を推奨量より強くしても、遊離アピゲニンの量に統計的に意味のある差は見られませんでした。照明が強いほどやや少なくなる傾向はうかがえたものの、偶然の範囲を超えるものではなかったと著者らは述べています。照明の強さと紫外線の効果が互いに影響し合う関係(交互作用)も認められませんでした。
一方、紫外線の照射は遊離アピゲニンの量を大きく増やしました。乾燥した葉1キログラムあたりの量で比べると、照射しなかった対照群は平均約1.08ミリグラムでした。これに対して、1日照射では約4.30ミリグラム、2日では約7.44ミリグラム、4日では約7.11ミリグラム、8日では約10.44ミリグラムでした。2日と4日の間には有意な差はありませんでしたが、8日照射が最も多く、対照群に比べて867%の増加にあたります。
紫外線を当てていない対照群のパセリからも、少量ながら遊離アピゲニンが検出されました。このことから研究チームは、遊離アピゲニンがつくられるうえで紫外線は必須ではないと結論づけています。また、この実験の紫外線量は自然の日光より多い条件でしたが、見た目で分かる悪影響は観察されなかったと報告しています。
室内栽培での「光の当て方」の工夫として
この研究は、室内の管理された環境で育てたパセリに紫外線を補うと、葉に含まれる遊離アピゲニンを増やせる可能性を示しました。照明を単に強くするだけでは変化が見られず、紫外線を加えることが鍵だったと示唆されます。ただし、今回測定したのは糖が結びついていない遊離アピゲニンだけです。パセリに多く含まれる、糖が結びついた形のアピゲニンがどう変化したかは、まだ分かっていないと著者らは述べています。
原著論文の著者・所属:Rebekah C. I. Maynard(Department of Biology, University of North Georgia)、Samuel O. Ogundipe(Department of Food Science and Technology, University of Georgia)、Rhuanito Soranz Ferrarezi(Department of Horticulture, University of Georgia)、Joon Hyuk Suh(Department of Food Science and Technology, University of Georgia)、Leonardo Lombardini(Department of Horticulture, University of Georgia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Rebekah C. I. Maynard, Samuel O. Ogundipe, Rhuanito Soranz Ferrarezi, et al. Ultraviolet irradiation increases free apigenin (aglycone) accumulation in parsley under controlled environments. Frontiers in Plant Science 2026-10-21. DOI: 10.3389/fpls.2026.1975585. 原著ライセンス:CC BY.