この研究は、パキスタン、アゼルバイジャン、サウジアラビア、ウガンダの研究機関の研究論文です。

掲載誌:International Journal of Food Properties

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

イチゴ(Fragaria × ananassa Duch.)は収穫後に傷みやすい果実で、日持ちのしにくさが流通のうえでの制約になっています。研究チームは、この課題に対して紫外線の一種であるUV–C光の照射が有効かどうかを確かめようとしました。

この研究の目的は、常温で保存するイチゴ品種「チャンドラー」について、UV–C照射が収穫後の品質を保ち、日持ちを延ばす効果を持つかを評価することです。UV–Cは波長の短い紫外線で、微生物の抑制などを目的に用いられるものです。

何をどう調べたか

著者らは、成熟度50〜60%で収穫したばかりの果実にUV–C(13.5 kJ m⁻²)を照射し、25±1.5℃で保存しました。実験は要因配置の完全無作為化法で行い、反復は4回としています。照射をしない果実を対照として、両者の品質を比べる設計です。

比較の対象となったのは、保存中の重量の減り方、カビによる腐敗の程度や腐敗した果実の割合、果実の硬さといった外観・物性の指標に加え、果実の内部で生じる活性酸素種(スーパーオキシドO₂–•と過酸化水素H₂O₂)の量、そしてそれらを処理する抗酸化酵素の働きです。さらに見た目の評価や出荷できる果実の割合、官能(味や香りなどの感覚)による評価も調べられました。

報告された主な結果

論文によれば、UV–Cを照射した果実は無処理の対照と比べて品質が有意に良好でした。生理的な重量減少は40%低く、カビによる腐敗指数は61.4%、腐敗果実の割合は63%それぞれ減少し、果実の硬さは25.6%高く保たれたと報告されています。

果実内部では、O₂–•とH₂O₂の量がそれぞれおよそ30%、39%抑えられました。同時に、抗酸化に関わる酵素の活性が高まり、スーパーオキシドジスムターゼが17.3%、カタラーゼが24%、ペルオキシダーゼが27.7%、アスコルビン酸ペルオキシダーゼが18.0%の増加を示しています。これらは果実が酸化的な傷みに対抗する働きを担う酵素です。

また、全体的な外観と出荷可能な果実の割合はそれぞれおよそ25%、30%改善し、官能的な評価も良好だったとされています。著者らは結論として、UV–C照射が収穫後の劣化を遅らせ、常温保存中のイチゴの理化学的・栄養的・官能的な品質を維持したと述べています。

この報告が示すこと

この研究は、収穫直後の一度の紫外線照射という比較的単純な処理が、常温という厳しい条件下でもイチゴの傷みを遅らせうることを、外観や腐敗といった目に見える指標と、果実内部の酸化ストレスや酵素の働きという二つの側面から示したものです。

著者らは今後の課題として、商業的な保存・輸送条件でのUV–C応用の評価と、抗酸化応答を調節する分子機構の解明を挙げています。ここで報告されているのは、あくまで設定された実験条件下で観察された結果です。

著者:Tanveer Hussain(PMAS-Arid Agriculture University)、Muhammad Wasim Haider(The Islamia University of Bahawalpur)、Ijaz Ahmad(Govt. Graduate College (B) Satellite Town)、Faig Khudayev(Ministry of Agriculture of the Azerbaijan Republic)、Wael Elmenofy(King Faisal University)、Paul Nampala(Bugema University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Tanveer Hussain, Muhammad Wasim Haider, Ijaz Ahmad, et al. Effect of UV–C light on shelf life and physicochemical characteristics of freshly harvested strawberries cv. Chandler under ambient storage conditions. International Journal of Food Properties 2026-09-20. DOI: 10.1080/10942912.2026.2737168. 原著ライセンス:CC BY.