ブドウはみずみずしくて美味しい果物ですが、収穫後は水分が抜けたり酸化が進んだりして、あっという間に品質が落ちてしまいます。特に冷蔵設備(コールドチェーン)が整っていない地域では、常温での保存期間の短さが大きな課題になっています。今回紹介する研究は、こうした課題に対して、化学薬品を使わない方法でブドウの日持ちを良くできないかを調べたものです。

研究チームが注目したのは、収穫後の「温水処理(HWT)」と「紫外線(UV-C)照射」を組み合わせる方法です。実験では、収穫したばかりのサルタナ種のブドウの房を温水処理したうえで紫外線を照射し、何も処理をしていない対照群と比較しました。保存条件は室温(25±1.5℃)とし、7日間にわたって果実の様々な性質の変化が調べられました。

研究でわかったこと

比較の結果、処理と保存日数の組み合わせは、調べたほぼすべての性質に影響を与えていたと報告されています(果汁のpHを除く)。保存7日目の時点では、処理を行ったブドウは対照群と比べて、硬さがおよそ13.3%高く、重量減少はおよそ6.5%少なく、細胞からの電解質の漏出(細胞の傷みの指標とされる)もおよそ11.3%少なかったとされています。

また、酸化ストレスの指標となる物質についても、スーパーオキシドアニオンという活性酸素の一種の量がおよそ85%、過酸化水素の量がおよそ50.8%、それぞれ対照群より抑えられていたことが示されました。これは、活性酸素を消去する酵素(スーパーオキシドディスムターゼ、カタラーゼ、ペルオキシダーゼ、アスコルビン酸ペルオキシダーゼ)の働きが処理群で高まっていたことや、ポリフェノール類、クロロフィル(葉緑素)、ビタミンCの一種であるアスコルビン酸が、より多く保持されていたこととあわせて考えられると報告されています。

こうした変化の結果として、温水処理と紫外線照射を組み合わせたブドウでは、市場に出荷できる状態の果実の割合がおよそ19.7%増加したと報告されています。研究チームは、この組み合わせ処理がブドウの老化(品質劣化)を遅らせ、常温保存下での品質維持に役立つ可能性があると結論づけています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、サルタナ種のブドウを対象に、室温という特定の条件下で行われたものです。今回の結果がすべての品種や保存条件にそのまま当てはまるかどうかは、この要旨だけからは分かりません。また、論文の著者ら自身も、この処理によってどのような分子レベルの反応が起きているのかを明らかにするための今後の研究が必要であり、大規模な導入に向けてはさらなる検証が求められると述べています。あくまで一つの研究による知見であり、結論が確定したものではない点には留意が必要です。

まとめ

この研究では、収穫後のブドウに温水処理と紫外線照射を組み合わせることで、常温保存中の硬さや水分保持、酸化ストレスの抑制に良い影響が見られ、市場に出荷できる果実の割合も増加したことが報告されました。化学薬品に頼らない保存技術として、冷蔵設備が十分でない地域での応用が期待される研究といえそうですが、実用化に向けてはさらなる研究の積み重ねが必要とされています。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:収穫後の温水処理と紫外線照射処理は常温保存中の物理化学的特性を維持することで生食用ブドウの市場出荷可能期間を延長する(国際食品特性ジャーナル・2026年08月)