牛乳は栄養バランスの良い食品として知られていますが、そこに含まれるタンパク質は、分解されることで新たな働きを持つ「ペプチド(アミノ酸がいくつかつながった小さな断片)」に変わることがあります。乳酸菌によって牛乳を発酵させると、タンパク質が分解されてこうした機能性ペプチドが生まれ、もとのタンパク質にはなかった性質を示すようになると考えられています。今回紹介する研究では、牛の品種や発酵に使う乳酸菌の組み合わせを変えながら、牛乳由来ペプチドの抗酸化作用や、血圧に関わる酵素への働きかけを調べています。

どのように調べたのか

研究チームは、デシ牛(Desi cow)、アメリカ牛(American cow)、サヒワル牛(Sahiwal cow)、ホルスタイン・フリージアン牛(Holstein Friesian cow)という異なる品種の牛から採取した牛乳を用意しました。これらの牛乳を、Pediococcus acidilactici、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus rhamnosusという3種類の乳酸菌を組み合わせて発酵させ、酸性化の進み方やタンパク質の分解(プロテオリシス)の程度を確認しました。

そのうえで、発酵後の牛乳に含まれるペプチドについて、DPPH法・還元力測定・鉄イオン(Fe2+)キレート能という3種類の方法で抗酸化能を評価するとともに、血圧の調節に関わる酵素であるACE(アンジオテンシン変換酵素)を阻害する働きの強さも測定しました。

わかったこと

その結果、デシ牛の牛乳をLactobacillus rhamnosusとLactobacillus plantarumの組み合わせで発酵させた試料が、最も高いACE阻害活性(89.90%)を示したと報告されています。これに僅差で続いたのが、ホルスタイン・フリージアン牛の牛乳をLactobacillus plantarumとPediococcus acidilacticiの組み合わせで発酵させた試料で、88.82%の阻害活性が確認されたとされています。

これらの結果から、研究チームは、乳酸菌によって発酵させた牛乳が、ACE阻害作用や抗酸化作用を持つ機能性ペプチドの供給源となり得る可能性を示唆しています。

この研究を読むうえで

この研究は、牛乳の品種や乳酸菌の組み合わせを変えた際に、発酵によって生じるペプチドの性質がどう変化するかを実験室レベルで比較したものです。ACE阻害活性や抗酸化能の測定はいずれも試験管内での評価であり、ヒトが実際にこうした発酵乳を摂取した場合にどのような影響があるかについては、この要旨からは述べられていません。あくまで一つの研究であり、結論が確定したわけではない点に留意して読んでいただければと思います。

まとめ

今回紹介した研究では、牛の品種と乳酸菌の組み合わせによって、発酵牛乳から得られるペプチドのACE阻害活性や抗酸化能に違いが見られたと報告されています。発酵という身近なプロセスが、牛乳タンパク質から新たな機能を引き出す可能性を示す研究として、今後の展開が注目されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:乳酸菌発酵による牛乳由来生理活性ペプチドの抗酸化・降圧特性の検討(フード・セーフティ・アンド・ヘルス・2025年10月)