イタリア南部が特産地として知られるベルガモット(Citrus bergamia Risso)は、香り高い柑橘として紅茶の香り付け(アールグレイ)などに利用される一方、強い苦味のためそのまま食べられることはほとんどありません。しかしベルガモットの果実にはフラボノイドをはじめとする健康に関わる可能性のある成分が豊富に含まれているとされています。今回紹介する研究は、この「食べにくいけれど成分が豊富な果実」を、可食部だけでなく皮なども含めた果実全体のまま、乳酸菌の一種であるラクトバチルス・プランタルムで発酵させることで、どのような変化が起こるのかを調べたものです。

研究でわかったこと

研究チームは、ベルガモット果実全体をすりつぶしたもの(ホモジネート)にラクトバチルス・プランタルムを接種し、30℃で6日間培養しました。同時に、菌を加えていないホモジネートも対照群として同じ条件で培養しています。発酵0日目、2日目、3日目、4日目、6日目にサンプルを採取し、総フェノール含量、DPPH法とABTS法による抗酸化能、そしてネオエリオシトリン、ナリンギン、ネオエリオシトリン・ジオキサレート、ネオヘスペリジン、ネオヘスペリジン・ジオキサレート、メリチジンといった個別のフェノール化合物の含有量が分析されました。

その結果、発酵させたグループでは総フェノール含量が20.17から21.74 mg GAE/mLへと増加した一方、菌を加えていない対照群では6日目時点で有意な変化は見られなかったと報告されています。また、ABTS法による抗酸化能は、発酵によって8.56から9.72 mmol Trolox/Lへと増加したのに対し、対照群では7.63 mmol Trolox/Lへと低下したとされています。

個別の成分では、ネオエリオシトリン、ナリンギン、ネオエリオシトリン・ジオキサレートの含有量が発酵4日目に有意に増加し、それぞれ297.23 µg/L、160.37 µg/L、55.86 µg/Lに達したことが示されました。一方でメリチジンの含有量は、発酵期間を通じて減少していったとされています。研究チームは、ベルガモット発酵中のネオエリオシトリン含量の変化を明らかにしたのは本研究が初めてであるとし、発酵4日目が生理活性成分を増やしつつ抗酸化能を維持できる、最適な段階であることが示されたとしています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、乳酸菌発酵によってベルガモット果実中のフェノール化合物や抗酸化能がどのように変化するかを、実験室レベルで経時的に調べたものです。ヒトが実際にこの発酵物を摂取した場合の健康への影響を検証したものではなく、あくまで果実の成分・抗酸化能の変化を分析した基礎研究である点には注意が必要です。また、一つの研究であり、結論が確定したわけではありません。

まとめ

苦味のため生食されにくいベルガモット果実も、乳酸菌で発酵させることでフェノール化合物量や抗酸化能に変化が生じ、特に発酵4日目がその変化のピークとなりうることが、この研究では示唆されています。捨てられがちな非可食部分を含む果実全体を活用する一つの可能性を示すデータとして、今後の研究の広がりが期待されるところです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:ラクトバチルス・プランタルムによるベルガモット(Citrus bergamia Risso)果実の発酵:フェノール化合物含量、抗酸化能、プレバイオティクス潜在能(ポーリッシュ・ジャーナル・オブ・フード・アンド・ニュートリション・サイエンシズ・2026年07月)