著者の所属・活動拠点の国は、トルコ、アメリカです。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

ココア飲料が分離しやすいという課題

牛乳にココアを加えた飲料は、時間がたつと成分が分かれやすい飲み物です。研究チームによると、ココアの粒子は液体中に散らばりにくい性質や構造を持つため、粒子が底に沈む「沈殿」や、脂肪分などが上に浮いて層になる「クリーミング」が起こりやすくなります。

この研究は、こうした物理的な不安定さを抑えるために、増粘安定剤のジェランガムの濃度と、製造時の均質化の圧力を組み合わせて調べたものです。均質化とは、液体に高い圧力をかけて細い隙間を通し、粒子や脂肪の粒を細かくそろえる処理です。研究チームは、この二つの条件が相乗的にどう作用するかを検討しました。

条件の組み合わせと多面的な分析

研究チームは「中心複合回転計画」と呼ばれる統計的な実験計画法を使いました。これは、複数の条件の水準を体系的に組み合わせて試し、効果を効率よく見積もって最適な条件を探す方法です。

評価項目は、液体中に水分を保持する能力(保水性)、沈殿、クリーミング、pH、粘度、トルクなどです。さらに、粒子の大きさの分布、粒子表面の電気的な性質を示すゼータ電位、赤外分光法、光学顕微鏡、電子顕微鏡による観察と元素分析も行い、飲料の物理化学的・構造的な性質を調べました。ゼータ電位の値の絶対値が大きいほど、粒子どうしが電気的に反発し合い、集まりにくいとされています。

加えて、ジェランガムと牛乳の主要なたんぱく質がどのように結びつくかを、コンピューター上で分子の結合を予測する「分子ドッキング」で検討しました。人による官能評価も行い、最適化した飲料を市販のココアミルク製品とも比較しました。

報告された主な結果

論文では、最適な条件はジェランガム濃度0.04%、均質化圧力214.82バールと報告されています。この条件で作った飲料は、保水性が93%と高く、沈殿は検出されず、クリーミングも0.012%とごくわずかでした。見かけの粘度は59.44mPa·s、平均粒子径は309.9ナノメートルに小さくなり、ゼータ電位はマイナス38.73ミリボルトでした。

分子ドッキングの結果は、ジェランガムが水素結合、疎水性相互作用、静電的な相互作用によって牛乳の主要たんぱく質と結びつき、安定化に役立っていることを裏付けるものだったと著者らは述べています。

また、最適化した飲料は官能評価で許容できる結果を示し、9か月間の冷蔵保存において、比較した市販製品よりも優れた物理化学的安定性を示したと報告されています。

研究が示すこと

著者らは、ジェランガムと最適化した均質化圧力を組み合わせることが、安定していて均一な品質の牛乳ベースのココア飲料を工業的に製造するための有効な手段になると結論づけています。添加物の量と製造工程の条件を一緒に調整することで、ココア飲料の分離という身近な課題に取り組めることを示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:Saniye Akyıl Öztürk(Azelis Application and Training Center , Istanbul , Türkiye; Yildiz Technical University , Chemical and Metallurgical Engineering Faculty , Food Engineering Department , 34220 , Istanbul , Türkiye)、Deniz Damla Altan、Necattin Cihat Icyer(Department of Food Engineering , Faculty of Engineering and Architecture , Mus Alparslan University , Mus , Türkiye)、Atefeh Karimidastjerd(Yildiz Technical University , Chemical and Metallurgical Engineering Faculty , Food Engineering Department , 34220 , Istanbul , Türkiye)、Ibrahim Palabiyik(Department of Food Engineering , Faculty of Agriculture , Tekirdag Namik Kemal University , 59030 , Tekirdag , Türkiye)、Senay Simsek(Whistler Center for Carbohydrate Research , Department of Food Science , Purdue University , West Lafayette , IN , 47907 , USA)、Omer Said TOKER(Yildiz Technical University , Chemical and Metallurgical Engineering Faculty , Food Engineering Department , 34220 , Istanbul , Türkiye)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Saniye Akyıl Öztürk, Deniz Damla Altan, Necattin Cihat Icyer, et al. Effects of Gellan Gum and Homogenization Pressure on the Stability of Milk-Based Cocoa Beverages. Foods 2026-10-26. DOI: 10.3390/foods15213832. 原著ライセンス:CC BY.