著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Frontiers in Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
思春期の若者に見られる心理的症状の増加は、世界的な公衆衛生上の課題とされています。研究チームによると、中国でも心理的症状は都市部だけでなく、経済的に恵まれない農村部の若者にも広がりつつあります。それにもかかわらず、これまでの研究は都市部や一般集団が中心で、農村部の若者を対象にした調査は限られていました。
この研究で著者らが注目したのは、二つの要因です。一つは、砂糖などで甘味を加えた清涼飲料、いわゆる加糖飲料をどのくらいの頻度で飲んでいるかです。もう一つは、ABSI(A Body Shape Index)と呼ばれる体型指標です。ABSIは身長、体重、腹囲から計算され、体重と身長だけで求めるBMIでは区別できない、おなかまわりへの脂肪の付き方を反映するとされています。研究チームは、中国農村部の中高生を対象に、これら二つの要因が心理的症状とどう関連するかを、それぞれ単独の場合と組み合わせた場合の両方から調べました。
どのように調べたか
調査は2024〜2025年度に行われました。中国の主要な地理区分を代表するように選ばれた広東、黒竜江、新疆、安徽、河南の5地域で、それぞれ6つの農村地区、各地区2校、合わせて60校の中学生・高校生を対象としています。分析対象は12〜18歳の5万2735人で、そのうち男子は2万6043人でした。一時点の状態を調べる横断研究という設計です。
加糖飲料の摂取頻度は食事の頻度をたずねる質問票で調べ、週2回未満、週3〜5回、週5回を超える、の3群に分けました。ABSIは身長・体重・腹囲の実測値から算出し、年齢と性別ごとに4つの段階(四分位)に分けています。心理的症状は15項目の質問票で、過去6か月の経験を回答してもらいました。この質問票は情緒の問題、行動の問題、社会への適応の難しさの三つの側面を含み、合計点が基準以上の場合を「心理的症状あり」と判定しています。
分析では、年齢、両親の学歴、通学手段、立ち幅跳びの記録、間食の頻度、睡眠時間といった他の要因の影響を統計的に調整しました。結果はオッズ比で示されています。オッズ比とは、ある条件の群で心理的症状が見られる見込みが、基準となる群と比べて何倍かを表す数値です。
主な結果
心理的症状が見られた生徒は全体の21.8%でした。男子は22.5%、女子は21.2%で、男子の方がわずかに高い結果でした。加糖飲料を週5回を超えて飲んでいた生徒は14.5%でした。
他の要因を調整したうえで、ABSIが最も高い段階の生徒は、最も低い段階の生徒に比べて、心理的症状が見られるオッズが約1.23倍でした。また、加糖飲料を週5回を超えて飲む生徒は、週2回未満の生徒に比べてオッズが約1.21倍でした。男女別に分けた分析でも、同じ傾向が見られたと報告されています。
二つの要因を組み合わせた分析では、加糖飲料の摂取が少なくABSIも最も低い段階の生徒を基準にしています。この基準と比べたとき、加糖飲料を週5回を超えて飲み、かつABSIが上から2番目の段階(51〜75パーセンタイル)にあった生徒で、オッズが最も高くなりました。その値は約2.40倍で、男女別の分析でも同様の傾向でした。ただし著者らは、この組み合わせの分析は二つの要因が重なった状態の分布を示したものだと述べています。両者が互いに影響を強め合うかどうかを正式に検定したものではない、という位置づけです。
研究が示すこと
この研究は、中国農村部の中高生において、加糖飲料を頻繁に飲むこととABSIが高いことが、それぞれ心理的症状と関連していることを示しました。二つが重なった群では、関連がより強く見られたことも報告しています。著者らは、心理的症状への取り組みを考える際の参考材料として、加糖飲料の摂取と体型の両方に目を向ける意義を挙げています。
一方で、この研究は一時点の調査に基づいています。そのため、加糖飲料や体型が心理的症状を引き起こすという因果関係までは示していないことを、著者ら自身が明記しています。これまで調査の少なかった農村部の若者について、大規模なデータから飲み物の習慣、体型、心の状態のつながりを描き出した点に、この研究の意味があります。
原著論文の著者・所属:Chao Gong Zeng(Physical Education College of Shanghai University)、Chengjun Chai(Physical Education College of Shanghai University)、JiaLi Xu(Physical Education College of Shangrao Normal University)、Mian Sha(School of Physical Education, Chizhou University)、Jian Xin(Party Committee Office of Gannan Medical University)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Chao Gong Zeng, Chengjun Chai, JiaLi Xu, et al. A cross-sectional study on the associations between sugar- sweetened beverage consumption, a body shape index, and psychological symptoms among rural Chinese youth. Frontiers in Nutrition 2026-10-26. DOI: 10.3389/fnut.2026.1913391. 原著ライセンス:CC BY.