ヨーグルトや乳酸菌飲料のように、生きた微生物と食物繊維などの働きを組み合わせた「シンバイオティック」食品は近年注目を集めています。ただし従来の多くは乳製品をベースにしており、乳製品を摂りにくい人には選択肢が限られていました。今回紹介する研究では、雑穀の一種であるパールミレット(真珠状の穀物で知られるトウジンビエ)と豆乳を組み合わせた、乳製品を使わない新しい発酵飲料が開発され、その特性が調べられました。
研究チームは、パールミレットと豆乳をベースに、乳酸菌の一種であるLactiplantibacillus plantarum(ラクティプランティバチルス・プランタルム)を使って発酵させた飲料を作成しました。応答曲面法という統計的な手法を用いて配合を検討した結果、パールミレット40%・砂糖10.41%という配合が最適とされ、官能評価(味や風味などの好ましさを評価する指標)ではすべての項目で8点を超える高い評価が得られたと報告されています。
できあがった発酵飲料は、発酵させていないものと比べて栄養面・理化学的な性質の両方で優れていたとされています。乳酸菌の数は1ミリリットルあたり10の8乗(1億)コロニー形成単位を超えており、飲料中での乳酸菌の生存率は87.83%と高い値が示されました。さらに、胃や腸の消化環境を模した液体(人工消化液)を用いた実験では、25日間保存した後でも、模擬胃液中で76.71%、模擬腸液中で73.87%の乳酸菌が生き残っていたことが確認されています。
これらの結果から、研究チームは雑穀(ミレット類)が、L. plantarumのような微生物株と組み合わせることで、乳製品を使わない発酵シンバイオティック飲料の原料として有望であると考察しています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
この研究は、特定の配合・条件のもとで作られた試作飲料についての実験結果を報告したものであり、健康効果や病気の予防・改善を直接示すものではありません。乳酸菌が製品中や模擬消化液中で高い生存率を示したという結果は、あくまで「生きた状態で腸まで届く可能性が示唆される」というレベルの知見であり、実際にヒトが摂取した場合の効果を確認したものではない点に注意が必要です。一つの研究であり、結論が確定したわけではありません。
まとめ
パールミレットと豆乳を組み合わせた乳製品不使用の発酵飲料は、応答曲面法による配合最適化を経て、良好な官能評価と高い乳酸菌の生存性を示したと報告されました。模擬消化液中でも一定期間、乳酸菌が生存し続けたことから、雑穀を活用した新しいタイプの発酵飲料開発の一例として位置づけられる研究といえます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:新規パールミレット・豆乳ベースシンバイオティック飲料の機能的・理化学的特性評価(フード・セーフティ・アンド・ヘルス・2025年01月)