著者の所属・活動拠点の国は、南アフリカです。

掲載誌:Journal of Ethnic Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

マゲウは南部アフリカで広く飲まれている、アルコールを含まない発酵穀物飲料です。伝統的には特定の菌を加えるのではなく、自然に存在する微生物によって発酵させる「自然発酵」で作られてきました。しかし近年は、品質のばらつきを抑え、安全性や保存性を高めるために、あらかじめ決まった微生物(スターター培養)を使って作る方法が広がりつつあります。今回紹介する研究は、こうした流れの中で、健康な南アフリカ人女性から分離された乳酸菌を使ってマゲウを発酵させ、その性質を詳しく調べたものです。

研究でわかったこと

この研究で使われた乳酸菌は、健康な南アフリカ人女性から分離され、女性の健康に役立つプロバイオティクス(体によい影響を与える可能性がある生きた微生物)としての可能性があるとされる菌株です。研究チームは、この5種類の乳酸菌株を、単独で、あるいはマゲウ発酵に関連する酵母(サッカロミセス・セレビシエ)と組み合わせて発酵に使い、性能を比較しました。評価の指標としては、pH(酸性度)、滴定酸度、固形分量、乳酸やエタノールの濃度、生きた菌の数、保存性、そして消費者による嗜好性の評価が用いられました。

その結果、いずれの菌株も問題なくマゲウの発酵を進めることができ、最終的なpHは4.0未満まで低下し、かつ製品中に生きた菌が維持されていることが確認されました。これはプロバイオティクスとしての機能を期待するうえで重要な条件とされています。また、酵母を組み合わせた混合培養では、単一株のみの発酵に比べて発酵時間が短縮され、酸の生成が増え、微生物の増殖も高まったと報告されています。できあがった製品はいずれも、エタノール量や固形分量に関する国の基準を満たしていました。消費者による嗜好性評価では、単一株のみで発酵させた製品よりも混合培養の製品の方が好まれる傾向が見られましたが、市販のフレーバー付きマゲウが依然として最も好まれたとされています。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

この研究は、マゲウという伝統的な発酵飲料に、非伝統的な乳酸菌スターターを使うことで、風味や食感の面で受け入れられる製品を作れる可能性を示したものです。あくまで発酵の性能や製品としての基準適合性、嗜好性を確認した研究であり、これらの乳酸菌を摂取することによる具体的な健康効果を証明したものではない点には注意が必要です。要旨の中でも、これらの菌株は「プロバイオティクスとしての可能性がある」という位置づけにとどまっており、機能性の実証は今後の課題と考えられます。一つの研究であり、結論が確定したわけではありません。

まとめ

今回の研究では、南アフリカ人女性由来でプロバイオティクスとしての可能性を持つ乳酸菌株を使い、伝統的な発酵飲料マゲウを作る試みが行われました。乳酸菌を酵母と組み合わせることで発酵が効率よく進み、消費者からの評価も単一株のみの場合より高かったと報告されています。これは、伝統的な発酵食品に新しい機能性を持たせる可能性を探る一つの取り組みとして興味深い成果といえるでしょう。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):機能性応用の可能性を持つ規定乳酸菌スターター培養によるマゲウ発酵の近代化(ジャーナル・オブ・エスニック・フーズ・2026年07月)

原著論文の著者・所属:Katherine Hartzenberg-Aeroe(Department of Chemical Engineering, Centre for Bioprocess Engineering Research, University of Cape Town, Rondebosch, Cape Town, 7700, South Africa)、Brian Kullin(Division of Medical Virology, Department of Pathology, Faculty of Health Sciences, University of Cape Town, Rondebosch, Cape Town, 7700, South Africa)、Jo‐Ann Passmore(Centre for Epidemic Response and Innovation (CERI), School of Data Science and Computational Thinking, Stellenbosch University, Stellenbosch, South Africa)、Anna‐Ursula Happel(Division of Immunology, Department of Pathology, Faculty of Health Sciences, University of Cape Town, Rondebosch, Cape Town, 7700, South Africa)、Hoyam Gamieldien(Division of Medical Virology, Department of Pathology, Faculty of Health Sciences, University of Cape Town, Rondebosch, Cape Town, 7700, South Africa)、Marijke A. Fagan-Endres(Department of Chemical Engineering, Centre for Bioprocess Engineering Research, University of Cape Town, Rondebosch, Cape Town, 7700, South Africa)