卵を安定して生産するため、これまで多くの養鶏現場では飼料に抗生物質を加えて鶏の健康維持や成長促進に役立ててきました。しかし抗生物質を飼料に使い続けることには、薬剤耐性菌の出現などへの懸念があり、使用を控える動きが世界的に広がっています。その一方で、抗生物質を単純に取り除くだけでは鶏の健康や卵の生産性が損なわれかねないため、代わりとなる安全な方法が求められています。今回紹介する研究は、乳酸菌と酵母を使った代替策が採卵鶏にどのような影響を与えるかを調べたものです。

研究チームはヨーグルトと発酵させたトウモロコシの生地から微生物を分離し、乳酸菌の一種であるLactobacillus plantarum単体の製剤(プロバイオティクス1)と、これに酵母の一種であるSaccharomyces cerevisiaeを組み合わせた製剤(プロバイオティクス2)の2種類を用意しました。実験にはIsa Brown種の若い雌鶏240羽を使い、12羽ずつ5グループに分けたうえで、無添加の対照群、抗生物質(フラボマイシンを飲用水1リットルあたり14ミリグラム)を与える群、プロバイオティクス1を飲用水1リットルあたり1ミリリットル与える群、プロバイオティクス2を同量与える群の4つの条件で比較しました。

プロバイオティクスを与えた鶏に見られた変化

結果として、乳酸菌単体またはプロバイオティクス2を与えた群では、産卵率や卵の重さ、卵の総重量(卵重量×産卵率で算出される指標)が対照群より高くなり、飼料要求率(食べた餌の量に対してどれだけ体重や生産物に変換できたかを示す指標)も改善したと報告されています。卵の表面積や殻の厚さもこれらの群で高い値を示し、卵の中身についても、卵白の状態を示す指標や卵黄の重さ、卵の品質を評価するハウユニットという指標が改善したとされています。

血液の状態にも違いが見られました。抗生物質を与えた群では白血球数とヘモグロビン濃度が減少した一方、乳酸菌単体またはプロバイオティクス2を与えた群では白血球数が増加し、血中コレステロール値は低下したとのことです。また、ニューカッスル病ウイルスに対する抗体価(免疫がどれだけ働いているかを示す指標)は、抗生物質群を含むすべての処理群で対照群より高くなったと述べられています。腸内の盲腸を調べたところ、抗生物質群では細菌の総数が最も少なくなった一方、乳酸菌単体またはプロバイオティクス2を与えた群では、大腸菌群など好ましくないとされる細菌が減り、乳酸菌の量が増えていたと報告されています。

この研究を読むうえでの注意

この研究はバングラデシュの大学に所属する研究者らと、韓国の大学に所属する研究者が共同で行ったものであり、対象となったのはIsa Brown種という特定の鶏の品種、特定の菌株や投与量での結果です。異なる鶏の品種や飼育環境、菌の株や量を用いた場合に同じ結果が得られるかどうかは、この研究だけでは分かりません。1件の研究であり、ここで示された効果がすべての状況にあてはまると断定できるものではない点に留意する必要があります。

まとめ

今回の研究では、乳酸菌であるLactobacillus plantarumを単独で、あるいは酵母Saccharomyces cerevisiaeと組み合わせて採卵鶏に与えたところ、産卵性能や卵の品質、免疫の指標、腸内の細菌バランスに関して、抗生物質を使わない対照群よりも良好な傾向が示唆されたとまとめられています。抗生物質の使用を減らしたい養鶏の現場にとって、こうした微生物由来の代替策が一つの選択肢になりうることを示す研究といえますが、今後さらに幅広い条件での検証が必要と考えられます。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Md Shofiul Alam, Sonia Tabasum Ahmed, M S Islam, et al. Effects of Lactobacillus Alone and in Combination With Saccharomyces as Alternatives to Antibiotics on Performance and Immunity in Laying Hens. ベテリナリー・メディシン・アンド・サイエンス (2026). DOI: 10.1002/vms3.71120. 原著ライセンス: cc-by.