日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。
掲載誌:Scientific Reports
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
短期間で体重を落としたいとき、真っ先に食事量を大きく減らす方法を思い浮かべる人は多いはずです。しかし極端にカロリーを制限すると、体脂肪だけでなく筋肉などの「除脂肪軟部組織(LST)」まで一緒に失われてしまうことが知られています。では、その食事の中身、特にタンパク質の量を工夫すれば、この筋肉の減少を防げるのでしょうか。今回紹介する研究は、1日約700kcalという非常に厳しい超低カロリー食(VLCD)を7日間続けた際に、タンパク質の摂取量の違いが体組成やからだの代謝反応にどう影響するかを調べたものです。
研究でわかったこと
この研究は、健康な若い女性19名を対象にしたランダム化比較試験(対象者をくじ引きのようにグループ分けして比較する試験デザイン)です。参加者は、摂取エネルギーのうちタンパク質が5%を占める「低タンパク質群(LP群)」と、15%を占める「高タンパク質群(HP群)」のいずれかに割り当てられ、どちらも1日約700kcalに制限した食事を7日間続けました。
その結果、体重の減少幅は両群ともおよそ4%とほぼ同程度でした。ところが、体の中身には違いが見られました。LP群では除脂肪軟部組織の割合が有意に減少し、それに伴って体脂肪率が増加したのに対し、HP群ではこれらの数値が安定して維持されていたと報告されています。
代謝面では、脂肪が分解されてエネルギー源として使われる際に生じる「ケトン体」の総量は両群とも有意に増加しましたが、遊離脂肪酸の有意な増加や、より幅広い種類のケトン体パラメータの増加が見られたのはHP群でした。これは、HP群でより活発に脂質(体脂肪)が動員され、エネルギー源として利用されていた可能性を示唆する結果とされています。さらにHP群では、健康関連QOL(生活の質)を測るSF-36v2という指標のうち、「役割/身体(Role Physical)」と「役割/情緒(Role Emotional)」の領域で有意な改善が見られ、睡眠の質に悪影響は見られなかったとも報告されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究では、たとえ0.5g/kg/日程度のタンパク質摂取であっても、0.1g/kg/日と比べれば、急激な厳しいカロリー制限下で除脂肪軟部組織を守り、脂質代謝を促す助けになりうることが示唆されています。研究チームは、これを短期的な体重管理における安全で効果的なアプローチの可能性として位置づけています。
ただし、この試験は健康な若年女性19名という限られた人数・期間(7日間)で行われたものであり、一つの研究であり結論が確定したわけではない点には注意が必要です。ここで示された結果が、性別や年齢の異なる集団、あるいはより長期間の食事制限にそのまま当てはまるかどうかは、この要旨だけからは判断できません。
まとめ
超低カロリー食を短期間行う場合でも、タンパク質の摂取量によって体組成や代謝への影響が異なる可能性があることを示した研究といえます。極端な食事制限を自己判断で行うことにはリスクも伴うため、体重管理を検討する際は、こうした研究知見も踏まえつつ、専門家に相談しながら進めることが望ましいでしょう。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):高タンパク質摂取は超低カロリー食7日間における除脂肪軟部組織の維持と脂質動員を促進する(サイエンティフィック・リポーツ・2026年08月)
著者:Daisuke Suzuki(Graduate School of Health and Sports Science, Juntendo University, Inzai, 270-1695, Japan)、Mizuki Takaragawa(Graduate School of Health and Sports Science, Juntendo University, Inzai, 270-1695, Japan)、Asako Maruyama(Faculty of Health and Sports Science, Juntendo University, Inzai, 270-1695, Japan)、Atsuko ’Sue’ Nakaniida(Faculty of Health and Sports Science, Juntendo University, Inzai, 270-1695, Japan)、Keishoku Sakuraba(Graduate School of Health and Sports Science, Juntendo University, Inzai, 270-1695, Japan)、Shinobu Sakurai(Graduate School of Health Care and Nursing, Department of Public Health Nursing, Juntendo University, Urayasu, 279-0023, Japan)、Yuko Nakanishi(Graduate School of Health Care and Nursing, Department of Public Health Nursing, Juntendo University, Urayasu, 279-0023, Japan)、Yoshio Suzuki(Graduate School of Health and Sports Science, Juntendo University, Inzai, 270-1695, Japan)