この研究は、韓国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Probiotics and Antimicrobial Proteins

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

肥満は世界的に増え続けている健康課題で、著者らは現在10億人を超える成人が該当するとの推計を紹介しています。食事や運動、薬による対策は進んでいるものの、長期にわたって体重を管理し続けることは依然として難しく、新たな選択肢が求められてきました。

近年注目されているのが腸内細菌と体の代謝との関わりです。生きた微生物を摂取するプロバイオティクスは、腸内の細菌構成や代謝の働きに影響を与える方法のひとつとされてきましたが、その効果は菌の種類(菌株)ごとに大きく異なり、一貫した結果が得られていないと著者らは指摘しています。

今回研究チームが取り上げたのは、韓国・済州島のキャベツから分離された乳酸菌、ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティスCAB701という菌株です。これまでの細胞や動物を用いた基礎研究では、脂肪細胞への分化や脂肪の蓄積を抑える働きが報告されていましたが、人での効果を確かめた無作為化比較試験はありませんでした。そこで著者らは、この菌株を12週間摂取した場合に体脂肪量が減るかどうかを、人を対象に検証しました。

どのように調べたか

研究は韓国の釜山大学校梁山病院の1施設で行われた、無作為化・二重盲検・プラセボ対照の12週間試験です。無作為化とはくじ引きのように参加者をグループに振り分けること、二重盲検とは参加者も研究者もどちらのグループかを知らされないことを指します。プラセボは見た目や包装が同じで有効成分を含まない対照用のカプセルで、この試験ではマルトデキストリンなどが使われました。

対象となったのは、BMIが23〜30 kg/m²の19〜75歳の成人100人です。参加者の平均年齢は48.9歳、平均BMIは25.8 kg/m²で、男性は19%でした。100人が1対1の比率で振り分けられ、一方のグループはCAB701を1日150 mg(製造時点で150億個の菌数に相当)含むカプセルを、もう一方はプラセボを、1日1回12週間にわたって食後に飲みました。開始前には3週間、他のプロバイオティクス製品を控える期間が設けられています。

主要な評価項目は、二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)で測った全身の体脂肪量が開始時から12週後までにどれだけ変化したかです。DXAは体脂肪と除脂肪組織を分けて精密に測る方法で、体重だけでは分からない体組成の変化をとらえられると著者らは説明しています。このほか体重、BMI、体脂肪率、ウエスト周囲径、血中脂質、アディポネクチン、炎症の指標なども測定し、安全性として肝機能や腎機能、血糖、血圧、有害事象を確認しました。食事内容と身体活動も開始時と12週後に調べ、生活習慣が大きく変わっていないかを確認しています。93人が12週間の摂取を完了し、カプセルの服用率は平均で約95%でした。

報告された主な結果

著者らの報告によると、振り分けられた全員を対象とする解析では、CAB701群の体脂肪量の変化はプラセボ群と比べて1.59 kg少なく(95%信頼区間 −2.50〜−0.67、p<0.001)、規定どおりに参加を完了した人だけを対象とした解析でも1.54 kg少ないという同様の結果でした(95%信頼区間 −2.25〜−0.83、p<0.001)。体重とBMIについてもCAB701群で有意な減少が報告されています。体脂肪率は、規定どおり完了した人の解析でのみ有意な差が認められ、全員を対象とした解析では有意差に至りませんでした。

一方で、ウエスト周囲径、総コレステロールや中性脂肪などの血中脂質、脂肪組織から分泌されるホルモンであるアディポネクチン、炎症の指標については、両群の間に統計的に意味のある差は認められませんでした。アディポネクチンについては差が有意水準の境目にとどまり、著者らは慎重に解釈すべきだとしています。介入期間中、総摂取エネルギーと身体活動量に両群の差はなかったと報告されていますが、食事調査が1回の24時間思い出し法によるもので感度に限りがあるため、日常的な食事のわずかな違いを完全には除けないという限界も著者ら自身が挙げています。

安全性については、血圧、肝酵素(AST、ALT)、空腹時血糖、血清クレアチニンのいずれにも両群で差は見られず、試験薬に関連する重篤な有害事象の報告はなかったとされています。

この研究が示すこと

この試験は、キャベツ由来の乳酸菌CAB701を12週間摂取したグループで、DXAによって測定された体脂肪量がプラセボ群より有意に減少し、忍容性も良好だったことを報告するものです。これまで肥満に関するプロバイオティクスの臨床研究の多くはラクトバチルス属やビフィズス菌を対象としており、ラクトコッカス属についての知見は限られていました。また、体重だけでなく体組成を精密に測る指標を主要な評価項目に据えた点も、この研究の特徴として挙げられています。

ただし著者らは、この試験の設計では人の体内でどのような仕組みが働いたのかを直接確かめることはできないと述べています。腸内細菌の解析や短鎖脂肪酸の測定といった作用機序に関わる項目は今回測定されていません。また、プロバイオティクスの効果は菌株ごとに大きく異なるため、ある菌株の結果を他の種類や製品に当てはめて考えることは適切ではない、という点も著者らが繰り返し強調しているところです。

こうした限界を踏まえたうえで、今回の結果は、特定の菌株を厳密な試験デザインで一つずつ評価していくことの意味を示しています。腸内細菌を手がかりに体の代謝を考えるという視点が、人を対象とした検証の段階に進みつつあることを伝える報告といえます。

著者:Jung In Choi(Family Medicine Clinic and Biomedical Research Institute, Pusan National University Yangsan Hospital, Yangsan, 50612, Republic of Korea)、Ye Li Lee(Integrated Research Institute for Natural Ingredients and Functional Foods, Yangsan, 50612, Republic of Korea)、Sang Yeoup Lee(Department of Medical Education, Pusan National University School of Medicine, Yangsan, 50612, Republic of Korea. [email protected]

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jung In Choi, Ye Li Lee, Sang Yeoup Lee. Lactococcus Lactis Subsp. Lactis CAB701 Reduces Body fat mass in Adults with Overweight or Obesity: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial. Probiotics and Antimicrobial Proteins 2026-09-02. DOI: 10.1007/s12602-026-11198-1. 原著ライセンス:CC BY.