著者の所属・活動拠点の国は、トルコです。

掲載誌:Tarım Bilimleri Dergisi

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ローレル(月桂樹)とセージは、料理の香り付けや伝統的な民間療法などで古くから使われてきた地中海原産の香草です。その葉から得られる精油(植物の香り成分を濃縮した油)は、食品や医薬品、化粧品など幅広い分野で利用されており、これまでの研究でも抗菌・抗真菌作用などが報告されています。

精油は、葉を水とともに加熱し、立ちのぼる蒸気から香り成分を集める「水蒸留」という方法で取り出すのが一般的です。研究室ではクレベンジャー装置と呼ばれる器具がよく使われます。ただし著者らによると、蒸留時の加熱温度を変えると精油の抗菌性がどう変わるかを調べた研究は十分ではありませんでした。そこで研究チームは、加熱温度の違いがローレルとセージの葉の精油の化学組成と、カビ・酵母に対する作用にどのような影響を与えるかを調べました。

どのように調べたか

研究チームは、トルコのエーゲ海沿岸地域で2023年7〜8月に採取したローレルとセージの葉を陰干しし、クレベンジャー装置で110℃、140℃、170℃の3段階の温度で100分間加熱して精油を抽出しました。

得られた精油に含まれる成分は、混合物を成分ごとに分けて種類と量を調べるガスクロマトグラフィー質量分析法で特定しました。さらに、精油を染み込ませた小さな紙の円盤を、カビ5種と酵母5種をそれぞれ塗り広げた培地の上に置き、円盤の周りに微生物が育たない領域(阻止円)がどれだけ広がるかを測りました。阻止円の直径が大きいほど、その微生物の生育を抑える作用が強いことを示します。

主な結果

精油の収量は、ローレルで葉100グラムあたり2.25グラム(110℃)、2.35グラム(140℃)、2.18グラム(170℃)、セージで1.16グラム、1.23グラム、1.08グラムと、どちらも140℃で最も多くなりました。検出された成分の数も、ローレルでは11、13、9種類、セージでは14、17、13種類と、140℃で最多でした。

140℃で得たローレルの精油では、ユーカリプトール(1,8-シネオールとも呼ばれる香り成分)が58.14%を占め、ほかにα-ピネン(8.09%)などが主な成分でした。セージの精油では、ツヨン(40.53%)、ユーカリプトール(28.50%)、ボルナノン(15.30%)が主成分でした。これらの主成分の割合も、温度を140℃まで上げると増え、170℃では減少していました。

カビや酵母に対する作用も同じ傾向を示し、110℃から140℃に上げるとすべての試験微生物で阻止円が大きくなった一方、170℃では全般的に小さくなりました。カビの中では、140℃で得た精油がペニシリウム・シトリナムに対して最も強く作用し、阻止円の直径はローレルで16.79ミリ、セージで15.42ミリでした。酵母ではピキア・ポリモルファに対する作用が最も強く、ローレルで19.11ミリ、セージで16.81ミリでした。

170℃での作用の低下はセージの精油でより目立ち、灰色かび病菌として知られるボトリチス・シネレアなど一部のカビは、著者らの判定基準で「耐性」に分類される程度まで阻止円が小さくなりました。全体として、ローレルの精油のほうがセージより強く、温度による変化にも比較的安定した作用を示したと報告されています。

研究が示すこと

著者らは、高温で作用が弱まった理由として、熱によって揮発性の成分が分解したり失われたりし、ユーカリプトールやツヨン、ピネン類など作用の強い成分の量が減ったためと考えています。

この研究は、精油を得る際の加熱温度は高ければよいわけではなく、今回の条件では140℃付近が成分の多さとカビ・酵母への作用の両面で最もよい結果になったことを示しています。著者らは、精油ごとに一律の温度で処理するのではなく、それぞれに適した蒸留温度を見極めることが精油の品質にとって重要だと結論づけています。

原著論文の著者・所属:Gökhan Akarca(AFYON KOCATEPE ÜNİVERSİTESİ, MÜHENDİSLİK FAKÜLTESİ)、İlker Atik(AFYON KOCATEPE ÜNİVERSİTESİ)、Ramazan Şevik(AFYON KOCATEPE ÜNİVERSİTESİ)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Gökhan Akarca, İlker Atik, Ramazan Şevik. Using Different Hydrodistillation Temperatures Affects the Chemical Compositions and Biological Activities of Essential Oils from the Leaves of Sage (Salvia officinalis L.) and Laurel (Laurus nobilis L.). Tarım Bilimleri Dergisi 2026-10-12. DOI: 10.15832/ankutbd.1848982. 原著ライセンス:CC BY.