著者の所属・活動拠点の国は、イタリアです。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
製粉で生じる「副産物」を食べ物に生かす
小麦を製粉すると、小麦粉やセモリナ(デュラム小麦の粗挽き粉)と同時に、小麦胚芽、ふすま(外皮)を多く含む部分、中間質の粉(ミドリング)などが生じます。これらは食物繊維、たんぱく質、ミネラル、脂質、フェノール化合物などを含みますが、主に家畜の飼料に回され、人の食品にはあまり使われていません。著者らは、これらを単なる残りかすではなく食品素材としての可能性を持つ「共産物」と捉え、穀物食品に生かす方法を検討しました。
論文によると、副産物を食品に使う前に乳酸菌や酵母で発酵させる方法が提案されてきました。一方で、副産物の種類ごとの違いを比べた研究は少なく、特に「カラザウ・ブレッド」についての情報は限られていました。カラザウ・ブレッドは、水分が少なくパリッとした伝統的な薄焼きパンです。研究チームは、異なる副産物を「粉のまま加えてパン酵母で膨らませる場合」と「発酵種(サワードウ)にしてから加える場合」で比較し、パンの性質、香り成分、消費者の評価を同時に調べることを目的としました。
4種類の副産物と2通りの使い方で8種類のパンを比較
使われた副産物は、丸ごとの小麦胚芽、脱脂した小麦胚芽、脱脂した小麦ふすま、小麦ミドリングの4種類です。それぞれを粉のままパン酵母の生地に加えたパンと、副産物とセモリナを8対2の割合で混ぜ、選ばれた微生物で発酵させた発酵種を加えたパンを作り、計8種類を比較しました。
パンについては、水分、灰分、酸性度(pHと、酸の量を示す滴定酸度)、有機酸、色、硬さなどの食感を機器で測定しました。また、焼き上がったパンに含まれる、パンの香りに関わるとされる揮発性成分も分析しました。消費者調査では、全体的な好ましさを9段階で評価してもらったうえで、当てはまる特徴をすべて選ぶ質問や、粗さ・硬さ・焼き色の香ばしさ・厚さが「ちょうどよい」か「足りない/強すぎる」かを尋ねる質問も行いました。
発酵させると酸味が増し、香りや好みへの影響は副産物ごとに違った
パンの水分は5.56〜7.06%で、灰分はどれも約3%とほぼ同じでした。大きな違いが出たのは酸性度です。発酵種を使ったパンは、粉のまま加えたパンよりpHが低く、滴定酸度が高い傾向にありました。粉のまま加えたパンのpHは6.17〜6.30でしたが、発酵種のパンでは最も低いミドリングのパンで4.97まで下がりました。乳酸は発酵種のパンにだけ含まれていました。色の違いは全体に小さいものでしたが、丸ごとの胚芽を使ったパンはやや暗く、発酵種を使うと黄色みが弱まる傾向がありました。
香り成分の変化の大きさや方向は、副産物の種類によって大きく異なりました。最も大きな違いが見られたのは脱脂胚芽で、発酵種にするとアルデヒド類、アルコール類、フラン類など複数の成分がそろって増えました。ほかの3種類では、成分ごとに増えるもの、減るもの、ほとんど変わらないものがありました。ただし著者らは、香りの分析は各パンを1回の製造分で行ったものであり、調べた試料と条件に限った探索的な結果だとしています。
消費者の好ましさは、多くのパンで9段階中7〜8程度(中央値)と良好でした。例外は発酵させた丸ごと胚芽のパンで、中央値は約6でした。このパンでは「渋み・乾いた感じ」や「古くなったような風味」が選ばれやすく、焼き色の香ばしさが足りないと答えた人が半数近くいました。発酵種を使ったパンは全体に評価のばらつきが大きく、低い点をつける人がいる傾向があり、ミドリングの発酵種パンで最も大きくばらつきました。発酵させた脱脂胚芽、脱脂ふすま、ミドリングのパンでは、粗さや硬さ、香ばしさなどが「強すぎる」と感じられた点が好ましさの低下と関連していました。著者らは、この分析は関連を示すもので、特徴を変えれば評価が上がることを示すものではないと注意しています。
また、香り成分の変化の大きさは消費者の評価とそのまま対応していませんでした。発酵させた脱脂胚芽のパンは香りの特徴が際立っていましたが、比較的よい評価を保っていました。
副産物ごとに合った使い方を選ぶことが大切
研究チームは、発酵種にすることが消費者の受け入れを一律に良くも悪くもしないと結論づけています。同じ微生物と同じ方法で発酵させても、元になる副産物によって結果が変わりました。発酵種化が有効な活用法になりうる副産物がある一方、粉のまま加えてパン酵母で膨らませるほうが同じくらい良好で、場合によってはより安定した評価が得られた副産物もありました。
著者らは、粉のまま加える方法は追加の発酵工程が不要なぶん簡単で、経済的にも魅力的な可能性があると述べています。一方で、発酵はより複雑で多様な風味を生み出せるものの、それを生かすには配合や工程の調整が必要だとしています。この研究は、製粉の副産物を食品に生かすには、それぞれの特性に合わせて使い方を決める必要があることを示しています。
原著論文の著者・所属:Manuela Sanna(Porto Conte Ricerche, Loc. Tramariglio, 07041 Alghero, SS, Italy)、Valentina Tolu(Porto Conte Ricerche, Loc. Tramariglio, 07041 Alghero, SS, Italy)、Simonetta Fois(Porto Conte Ricerche, Loc. Tramariglio, 07041 Alghero, SS, Italy)、Marco Serra(Porto Conte Ricerche, Loc. Tramariglio, 07041 Alghero, SS, Italy)、Piero Pasqualino Piu(Porto Conte Ricerche, Loc. Tramariglio, 07041 Alghero, SS, Italy)、Daniela Piras(Porto Conte Ricerche, Loc. Tramariglio, 07041 Alghero, SS, Italy)、Vanna Sanna(Porto Conte Ricerche, Loc. Tramariglio, 07041 Alghero, SS, Italy)、Antonio Loddo(MFM Sunalle, Via Ogliastra 10, 08023 Fonni, NU, Italy)、Tonina Roggio(Porto Conte Ricerche, Loc. Tramariglio, 07041 Alghero, SS, Italy)、Pasquale Catzeddu(Porto Conte Ricerche, Loc. Tramariglio, 07041 Alghero, SS, Italy)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Manuela Sanna, Valentina Tolu, Simonetta Fois, et al. Valorization of Wheat Milling Co-Products in Carasau Bread: Effects of Their Addition as Powders or After Fermentation on Physicochemical Properties, Volatile Profile and Sensory Characteristics. Foods 2026-10-21. DOI: 10.3390/foods15203754. 原著ライセンス:CC BY.