トウモロコシからパンやトルティーヤを作るのは、実は簡単ではありません。小麦粉と違ってトウモロコシの生地は粘りや弾力(ビスコエラスティック性)に乏しく、生地をまとめて焼き上げるのが技術的に難しいことが知られています。一方で、気候変動により干ばつなど水不足の環境でも育つ作物への関心が高まっており、干ばつ耐性のあるトウモロコシ品種を実際の食品にどう活かせるかは興味深いテーマです。今回紹介する研究は、干ばつ条件下で栽培し、さらにカルシウムを葉面散布(葉に直接肥料をかける方法)したトウモロコシ穀粒を使って、トルティーヤブレッドを作った場合の理化学的・技術的な特性を調べたものです。

研究でわかったこと

この研究では、エジプトの品種(SCP3444、V1)と、ナイジェリアの早生・高収量品種2種(Sammaz-35、V2、およびEVDT、V3)の合計3品種を、干ばつ条件・カルシウム葉面施肥下で栽培し、それぞれに対応する通常栽培(対照区)のサンプル(Con1、Con2、Con3)と比較しました。トウモロコシ粉の理化学的性質、色調、レオロジー(生地の流動・変形特性)に加え、トルティーヤブレッドにした際の食味(官能評価)や保存性(AWRC、水分保持関連の指標)も評価されています。

まず穀粒の段階では、Con1とCon2が1000粒重・容積重・かさ密度で最も高い値を示しました。白色系のトウモロコシであるCon3とV3は明度(白さ)が最も高く、たんぱく質含量はCon2とV2で有意に高いことが示されました。ミネラル分析では、V2がカルシウムと亜鉛の含量が最も高く、V3は鉄の含量が最も豊富だったと報告されています。

生地のレオロジー評価からは、V1由来の粉がより柔らかいトルティーヤブレッドの製造に適しており、冷めた後も柔らかさが保たれやすい傾向が示唆されました。消費者の受容性が最も高かったのは、黄色トウモロコシから作られたTCon1、TV1、TCon2、TV2の各サンプルでした。焼成後の重量はTV1とTCon2が最も高く、焼成前後での生地の直径の増加が最も大きかったのはTV2でした。また、明度はTV3が、黄色みはTCon2が最も高い値を示しました。

子ども(3〜10歳)の1日あたりの栄養摂取目安への貢献という観点では、TV2がたんぱく質・カルシウム・亜鉛の点で最も高い寄与を示し、鉄についてはTV3が最も高い含有量を示しました。保存性については、TV1のAWRCが最も高く、これは水分保持力が高く、より長く新鮮さを保ちやすい可能性を示すものとされています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、干ばつ耐性かつカルシウム葉面施肥されたトウモロコシ品種が、トルティーヤブレッドの技術的・栄養的・保存的な品質を高める可能性を示すものとして位置づけられています。ただし、これは複数の品種・条件を比較した一つの研究であり、扱われた品種や栽培条件は限定的です。特定の品種が「優れている」と一概に言えるわけではなく、評価項目(柔らかさ、色、栄養価、保存性など)によって最も良い結果を示した品種はそれぞれ異なっていました。健康効果や食品としての優劣を断定するものではなく、今後さらなる研究の蓄積が必要な段階と言えるでしょう。

まとめ

この研究では、干ばつ条件とカルシウム葉面施肥という環境下で育てたトウモロコシ品種を用いてトルティーヤブレッドを作り、その理化学的・技術的特性を比較しました。品種によって粒の物理特性、色、たんぱく質やミネラル含量、生地の性質、焼き上がりの品質、保存性に違いが見られ、干ばつ耐性のあるトウモロコシ品種の食品への応用可能性が示唆される結果となりました。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:干ばつ条件下で栽培したトウモロコシ穀粒から製造したトルティーヤブレッドの理化学的・技術的特性(フードシステムズ・2026年08月)