この研究は、ブラジルの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Ensaios e Ciência C Biológicas Agrárias e da Saúde

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

マンゴーはクライマクテリック果実と呼ばれる種類の果物で、収穫後も呼吸が活発に続き、追熟が進んで色・香り・風味・食感が変化していきます。研究チームは、こうした生理的変化や輸送中の物理的な傷みによって、収穫から消費者に届くまでの流通過程で多くのマンゴーが失われている点を課題として挙げています。

著者らによれば、ブラジルで商業栽培される品種のうちパルマー種は市場での受容性と収穫後のポテンシャルの点で注目されている品種です。そこで本研究は、収穫後の品質を保つ技術を改善し、品質維持と資源の無駄の削減につなげることを目的として行われました。論文は、デンプンを基材とするコーティングにさまざまな天然ワックスを加え、その効果をパルマー種マンゴーで比較した研究はまだ少ないと述べ、この比較を研究の狙いとして設定しています。

何をどのように調べたか

研究チームは、トウモロコシデンプンを基材とし、そこにミツロウ、カンデリラワックス、カルナウバワックスという3種類の天然ワックスをそれぞれ加えた食用コーティング(果実表面に塗る、食べられる薄い膜)を作製しました。デンプンを加熱して糊化させたうえで乳化剤を加え、各ワックスを混ぜて乳液状にしています。収穫したマンゴーを洗浄したのち、この乳液に30秒間浸してまんべんなく覆い、室温で48時間乾燥させました。比較対象となる対照区は、コーティングを施していない果実です。

コーティングした果実は平均29℃という条件下で保存されました。論文によれば、パルマー種は12℃では22日程度の日持ちが報告されている一方、本研究の保存温度はそれより高いため、保存期間は14日間と設定されています。実験は3反復で行われ、合計108個のパルマー種マンゴーが用いられました。2日ごとに、重量の減少、果皮の色、果肉の硬さ、pH、滴定酸度、可溶性固形分(果汁に溶けている成分の量で、甘さや熟度の目安となる値)、呼吸速度が測定され、さらに走査型電子顕微鏡による表面の微細構造の観察も行われました。

報告された主な結果

著者らの報告によると、コーティングを施した果実は12日目まで果実としての状態を保っていたのに対し、同じ条件下でコーティングしなかった果実は8日目までしか保たれませんでした。効果の大きさについては、ミツロウが最も優れ、次いでカンデリラワックス、カルナウバワックスの順であったと述べられています。

個別の測定項目では、対照区の呼吸速度が12日目まで上昇を続け、測定した全ての日において他の処理区の2倍以上の値を示したと報告されています。重量の減少はどの処理区でも保存期間とともに徐々に進みましたが、対照区ではカンデリラワックスを用いた区の3倍にのぼったとされています。pHについては、対照区の変動が他より大きく保存中に上昇し、12日目以降にコーティングした果実との差が現れました。クエン酸で表した酸度も、対照区での低下が大きく、コーティングした果実のほうが安定していたと述べられています。可溶性固形分はどの処理区でも保存中に増加しましたが、処理区間に統計的に有意な差は認められませんでした。果肉の硬さは全処理区で同様に低下しましたが、14日目にはミツロウとカルナウバワックスの区で硬さの低下が有意に小さかったと報告されています。

色については、果皮の色に処理区間の統計的に有意な差は見られませんでした。一方、果肉では対照区が10日目から濃く暗い色を示し始め、コーティングした果実のほうが色が保たれたとされています。著者らはその理由として、酸素や光、水分といった外的要因から果実表面を隔てる物理的な障壁が形成されたこと、および呼吸速度が下がって追熟と変色が遅れたことを挙げています。また電子顕微鏡による観察では、コーティングの成分が果実表面に均一には行き渡っておらず、孔や凹凸のある不均一な構造が見られました。著者らはこれを、乾燥の過程で成分が十分に安定せず分離した可能性と結びつけて論じています。

この研究が示すこと

この研究は、身近な材料であるトウモロコシデンプンと天然ワックスを組み合わせた食用コーティングが、高めの温度で保存されたパルマー種マンゴーにおいて、呼吸と水分の損失を抑え、日持ちと化学的・官能的な特性の維持につながったことを報告しています。

著者ら自身も、より大きなサンプルと長い保存期間による検討や、コーティングの各成分が個別に果たす役割の解明、さらに消費者の受容性を測る官能評価が必要だと述べています。その意味で本研究は、収穫後の品質保持と食品ロスの低減という課題に対し、簡素な素材の組み合わせが果たしうる役割を具体的な測定値とともに示した一例といえます。

著者:Rutinéia Martins Freitas(Empresa Brasileira de Serviços Hospitalares. RN, Brazil. Instituto Federal Goiano. GO, Brazil)、Lucas Silva Peixoto(Instituto Federal Goiano)、Hygor Rodrigues De Oliveira(Instituto Federal de Mato Grosso do Sul. MS, Brazil)、Geovana Rocha Plácido(Instituto Federal Goiano)、Osvaldo Resende(Instituto Federal Goiano)、Alex Fonseca Souza(Instituto Federal de Mato Grosso do Sul, MS, Brazil)、Viviane Patrícia Romani(Instituto Federal do Paraná, PR, Brazil)、Danilo Tófoli(Instituto Federal de Mato Grosso do Sul, MS, Brazil)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Rutinéia Martins Freitas, Lucas Silva Peixoto, Hygor Rodrigues De Oliveira, et al. The efficiency of coating in the preservation of Palmer variety mangoes. Ensaios e Ciência C Biológicas Agrárias e da Saúde 2026-09-02. DOI: 10.17921/1415-6938.2026v30n2p258-279. 原著ライセンス:CC BY.