生姜に含まれる成分の中でも、6-パラドールという物質には脂肪酸を分解する働きがあることがこれまでの研究で示されてきました。今回紹介する論文は、この6-パラドールを一定量含むように作られた発酵生姜エキスを、健常な日本人成人が12週間摂取した場合に、内臓脂肪や体重にどのような変化が見られるかを調べたランダム化二重盲検プラセボ対照試験です。研究チームは以前、Metschnikowia属の酵母を使って生姜を発酵させることで6-パラドールを効率よく作り出す製法を確立しており、この製法による発酵生姜エキスが高脂肪食を与えたマウスで抗肥満効果や内臓脂肪の減少効果を示したことを報告していました。今回はその効果がヒトでも見られるかを確認する目的で行われた試験です。

どのように調べたのか

試験はBMIが25.0以上30.0未満で、内臓脂肪面積(VFA)が比較的高い健常な日本人成人68人を対象に実施されました。参加者はコンピューターで作成したブロックランダム化により、1日100mgの発酵生姜エキス末(6-パラドールを2.0mg含有)を摂取する試験食群(34人)と、生姜由来成分を含まないデキストリン100mgのプラセボ群(34人)に1対1で割り付けられ、12週間にわたり毎朝カプセルを摂取しました。試験は東京の医療法人静眞会たから クリニックと練馬区医師会南町診療所で2025年7月10日から10月16日にかけて行われ、オルソメディコ株式会社(東京)が実施を担当しました。試験開始時のVFAは試験食群が105.3±29.8cm²、プラセボ群が104.3±30.8cm²で、いずれも日本人でメタボリックシンドロームのリスクが高まるとされる目安(VFA100cm²以上)を上回っていました。主要評価項目は12週間後の腹部VFA(X線CTで測定)で、副次的な項目として体重、BMI、皮下脂肪面積、総脂肪面積、血圧、血液中のコレステロールや血糖関連の指標などが調べられました。脱落などにより、最終的な解析対象は65人(プラセボ群32人、試験食群33人)でした。なお本論文の著者には、World Intec株式会社(福岡県)、池田食研株式会社(広島県)、オルソメディコ株式会社(東京都)、医療法人静眞会たからクリニック(東京都)など日本の機関に所属する研究者が名を連ねています。

研究でわかったこと

12週間後、主要評価項目である内臓脂肪面積(VFA)については、試験食群とプラセボ群のあいだに統計的に有意な差は見られませんでした。皮下脂肪面積や総脂肪面積など、CTで測定した他の項目についても、両群間に有意な差はありませんでした。

一方で、あらかじめ計画されていた体重・BMIに関する部分集団解析(サブグループ解析)では、興味深い結果が得られました。参加者を試験開始時のBMIの中央値(26.6kg/m²)で二分し、BMIが25.0以上26.6未満という比較的軽度な過体重の集団(プラセボ群17人、試験食群14人)に注目したところ、体重とBMIが試験食群で有意に低い値を示しました。具体的には、12週間後の体重は試験食群で70.4±0.4kg、プラセボ群で71.7±0.3kgとなり、その差は約1.3kg(p=0.021)でした。同様にBMIも試験食群で25.5±0.1kg/m²、プラセボ群で25.9±0.1kg/m²となり、差は約0.4kg/m²(p=0.030)でした。ただし、このサブグループにおいてもVFAや皮下脂肪面積、体脂肪率、筋肉量、腹囲、血圧には両群間で有意な差はありませんでした。コレステロールや中性脂肪、HbA1cなどの血液検査値についても、全体として両群間に有意差は見られませんでした。安全性の面では、試験期間中に有害事象は報告されず、担当医師も試験食の摂取に関連する臨床的に問題となる変化は確認しなかったとされています。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

著者らは、この研究で確認された体重減少(約1.3kg、BMI change約−0.4)について、ベースライン体重の1.5〜2.0%に相当する変化であり、他の機能性成分に関する先行研究でも同程度の体重減少が内臓脂肪や代謝リスクの改善と関連づけられてきたことに言及しています。ただし著者ら自身が、この体重・BMIに関する結果はあらかじめ設定された主要な解析ではなく探索的な位置づけであり、複数の副次・探索的解析を行っていることから統計的な誤検出(第一種の過誤)の可能性も否定できないと述べています。また、内臓脂肪面積そのものには変化が見られなかった理由として、体重減少の程度や12週間という試験期間が十分でなかった可能性のほか、試験食群の1日あたりの歩数がプラセボ群より少なかったこと(プラセボ群8,396.9±2,919.2歩、試験食群6,979.6±2,328.5歩)も一因として挙げられており、身体活動量が結果に影響した可能性が指摘されています。加えて、BMIが中央値以上とより高かった参加者では効果が見られなかった点について、著者らは肥満度が高いほど軽度の代謝機能の変化が生じている可能性があり、それが6-パラドールの作用経路に影響した可能性があると考察していますが、これはあくまで推測であるとしています。本試験は実行可能性をもとにサンプルサイズが決定されたパイロット的な試験であり、正式な検出力計算は行われていません。これらの点を踏まえると、本研究は一つの臨床試験の結果であり、体重やBMIへの効果について確定的な結論を出すものではないことに留意が必要です。

まとめ

今回の試験では、6-パラドールを標準化した発酵生姜エキス(1日100mg、6-パラドール2.0mg相当)を12週間摂取しても、主要評価項目である内臓脂肪面積に統計的に有意な変化は認められませんでした。一方で、試験開始時のBMIが比較的低め(25.0以上26.6未満)だった集団に限っては、体重とBMIの有意な減少が観察されたと報告されています。摂取に伴う有害事象は確認されず、試験期間中の安全性については問題がなかったとされています。著者らは、これらの結果はヒトにおいて6-パラドールを標準化した発酵生姜エキスが体重に何らかの影響を及ぼす可能性を示す知見であるとしつつも、内臓脂肪の減少効果を裏づけるものではなく、今後さらなる検証が必要であるとしています。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:健常な日本人成人における6-パラドール標準化発酵生姜エキスによる内臓脂肪減少:ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間試験(ファンクショナル・フーズ・イン・ヘルス・アンド・ディジーズ・2026年08月)