この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:BMC Pediatrics

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

ビタミンD不足は世界中の子どもに広くみられる課題とされています。その対策の一つとして、牛乳やその他の飲食品にビタミンDを添加する『食品強化』が行われていますが、これが子どもの血液中のビタミンD濃度を高めるだけでなく、身長や体重といった成長の指標、あるいは骨や血液に関わる他の栄養状態にどのような影響を与えるのかは、これまで研究ごとに結果が一致しておらず、はっきりしていませんでした。

今回紹介する研究は、この点を整理するために行われた系統的レビューとメタ解析です。研究チームは複数の医学論文データベースを2025年8月まで調査し、18歳未満の子どもを対象に、ビタミンD強化食品・飲料と非強化食品を比較したランダム化比較試験を集めました。最終的に12件の試験、合計2,676人の子どもたちのデータが統合・解析され、あわせてメタ回帰分析という手法で結果に影響しうる要因も検討されています。

研究でわかったこと

解析の結果、ビタミンD強化食品・飲料を摂取したグループでは、血液中の25(OH)Dというビタミンの状態を示す指標が有意に上昇したと報告されています(平均差 12.84 ng/mL)。あわせて、カルシウム調節に関わる副甲状腺ホルモン(PTH)の値も有意に低下したとされています(平均差 −9.02 pg/mL)。ただし、これらの結果には試験間のばらつき(異質性)が大きかったことも記されています。

一方で、身長や体重、鉄の貯蔵状態を示すフェリチン、血清カルシウムについては、強化食品による有意な差は認められなかったとのことです。また、ヘモグロビン値(貧血の指標の一つ)については有意な増加がみられたと報告されていますが(平均差 3.22 g/L)、この結果はわずか3件の試験に基づくものであり、そのうち少なくとも1件は鉄など他の栄養素も同時に強化されていたため、ビタミンD単独の効果とは言い切れず、慎重な解釈が必要だと著者らは述べています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

著者らは、ビタミンD強化食品・飲料が子どものビタミンD状態を大きく改善し、副甲状腺ホルモンの上昇(二次性副甲状腺機能亢進症)を抑える一方で、身長や体重といった成長そのものには明確な影響を与えなかったとまとめています。含まれた試験の範囲では安全性に関する明らかな懸念は見つからなかったとされていますが、安全性に関する報告自体がまだ限られているとも指摘されています。

このように、本研究は複数の臨床試験を統合した知見ではあるものの、試験間のばらつきが大きい結果が含まれていること、ヘモグロビンに関する結論は少数の試験・他の栄養素との同時強化の影響を考慮する必要があることなど、解釈に注意すべき点があります。著者らも、より長期間かつ十分な規模で、安全性の評価方法を統一した追加の研究が今後必要だと述べています。

まとめ

今回のメタ解析では、ビタミンD強化食品・飲料が子どものビタミンD状態を改善し、副甲状腺ホルモンを抑える可能性が示された一方、身長・体重への明確な効果は確認されませんでした。ヘモグロビンの増加についても限られたデータに基づく知見であり、今後さらなる研究による検証が待たれます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):ビタミンD強化食品・飲料が子どもの成長、骨ミネラル化、栄養バイオマーカーに与える影響:包括的メタ解析およびメタ回帰分析からの知見(BMC小児科学・2026年08月)

著者:Artha Maressa Theodora Simanjuntak(Child Health Department, Faculty of Medicine, Universitas Padjadjaran, Bandung, Indonesia)、Muhammad Gilang Dwi Putra(Child Health Department, Faculty of Medicine, Universitas Padjadjaran, Bandung, Indonesia)、Eddy Fadlyana(Child Health Department, Faculty of Medicine, Universitas Padjadjaran, Bandung, Indonesia)、Alifian Arkan Zaky Kusnadi(Department of Medicine, Faculty of Medicine, Public Health, and Nursing, Universitas Gadjah Mada, Yogyakarta, Indonesia)、Nailu Nada Zahra(Department of Medicine, Faculty of Medicine, Public Health, and Nursing, Universitas Gadjah Mada, Yogyakarta, Indonesia)、Rais Amaral Haq(Department of Medicine, Faculty of Medicine, Universitas Lampung, Lampung, Indonesia)、Made Aditya Krisnanta Gandhy(Department of Medicine, Faculty of Medicine, Public Health, and Nursing, Universitas Gadjah Mada, Yogyakarta, Indonesia)、Randika Taufiq(Child Health Department, Faculty of Medicine, Universitas Padjadjaran, Bandung, Indonesia)、Hari Nugraha(Department of Medicine, Faculty of Medicine, Public Health, and Nursing, Universitas Gadjah Mada, Yogyakarta, Indonesia)、Frengki Prabowo Saputro Wijayanto(Department of Medicine, Faculty of Medicine, Public Health, and Nursing, Universitas Gadjah Mada, Yogyakarta, Indonesia)、Rodman Tarigan Girsang(Child Health Department, Faculty of Medicine, Universitas Padjadjaran, Bandung, Indonesia)、Kusnandi Rusmil(Child Health Department, Faculty of Medicine, Universitas Padjadjaran, Bandung, Indonesia)