カレーなどでおなじみのスパイス「ウコン(Curcuma longa)」。近年は健康食品の素材としても注目されていますが、実際に人の脳の働き、とくに「認知機能」にどう関わるのかは、まだよくわかっていない部分が多くあります。今回紹介する研究は、軽い物忘れなどが気になり始める40〜69歳の健康な人を対象に、ウコン由来の抽出物を24週間摂取してもらい、認知機能への影響を調べたランダム化二重盲検プラセボ対照試験です。

この研究で用いられたのは、ウコンの熱水抽出物と超臨界二酸化炭素抽出物を組み合わせた「CLE」と呼ばれる抽出物です。CLEには抗炎症作用を持つとされる成分「ツルメロノールA・B」と「ビサクロン」が含まれており、これまでの研究で抗炎症活性が確認されているとのことです。脳内の炎症(神経炎症)は認知機能の低下と関連することが知られているため、研究チームは抗炎症成分を含むCLEが認知機能に影響を与えるかどうかに着目しました。

研究でわかったこと

この試験では、正常範囲内ではあるものの軽度の認知機能の弱まりがみられる健常者を、CLEを摂取するグループ(20人)とプラセボ(有効成分を含まない偽の錠剤)を摂取するグループ(20人)にランダムに振り分けました。参加者は毎日カプセルを2粒、24週間にわたって摂取し、試験開始時、12週時点、24週時点でさまざまな認知機能検査を受けました。

認知機能に関する35項目の評価指標を調べた結果、24週時点において、CLEを摂取したグループはプラセボグループと比べて、視線の動きから認知機能を調べる「アイトラッキング認知評価」および日本語版モントリオール認知評価(MoCA-J)による「見当識」のスコアが有意に高いことが示されました。見当識とは、今がいつで自分がどこにいるかを把握する能力のことです。また、アイトラッキング認知評価による「注意力」のスコアについても、24週時点でCLEグループの方がプラセボグループより有意に高いという結果が得られました。

これらの結果から、研究チームはCLEが見当識や注意力に関連する認知機能を改善する可能性があると述べています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

今回の研究は、あくまで一つの臨床試験の結果であり、これだけで結論が確定したわけではありません。35項目の評価指標のうち、有意な差がみられたのは見当識と注意力に関する一部の指標にとどまっており、それ以外の多くの認知機能項目については、グループ間で明確な差が示されたとは述べられていません。また、参加者数はCLE群・プラセボ群それぞれ20人と限られた規模の試験です。ウコン由来の成分に関心がある方も、この研究結果をもって特定の健康効果が保証されたと捉えるのではなく、今後さらに研究が積み重ねられていく過程の一つとして受け止めるとよいでしょう。

まとめ

抗炎症成分を含むウコン抽出物CLEを24週間摂取した健康な中高年者において、見当識や注意力に関わる認知機能のスコアがプラセボと比べて高くなったことが、今回のランダム化二重盲検プラセボ対照試験で報告されました。神経炎症と認知機能の関係に注目した興味深い研究成果であり、今後のさらなる検証が期待されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:正常範囲内の軽度な認知機能低下を有する健常者を対象としたウコン抽出物の認知機能への効果:ランダム化二重盲検プラセボ対照試験(フロンティアーズ・イン・ニュートリション・2026年07月)