著者の所属・活動拠点の国は、マレーシアです。
掲載誌:Journal of Nusantara Studies (JONUS)
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
研究の目的
飲食店にとって、SNSを使った宣伝は客を集め、つなぎとめるための重要な手段になっています。中でも、多くのフォロワーを持つ発信者に店や商品を紹介してもらう「インフルエンサーマーケティング」は広く使われています。しかし著者らによると、インフルエンサーのどのような特徴が飲食店の客の反応に結びつくのかについては、実証的な知見が限られていました。
そこで研究チームは、サウジアラビアのカジュアルダイニング(気軽に利用できる着席型レストラン)を対象に、インフルエンサーの三つの特徴が、消費者のブランドへの評価と「その店を利用したい」という購買意向にどう関係するかを調べました。三つの特徴とは、正直で信頼できると感じられる「信頼性」、その分野に詳しいと感じられる「専門性」、そして自分と似ていると感じられる「類似性(ホモフィリー)」です。
研究の枠組みには、外からの刺激(S)が人の内面の状態(O)を変え、それが行動の反応(R)につながると考える「刺激・生体・反応(S-O-R)モデル」が使われました。この研究では、インフルエンサーの特徴を刺激、ブランドに対する全体的な好意や評価である「ブランド態度」を内面の状態、購買意向を反応と位置づけています。特に、インフルエンサーの特徴がブランド態度を経由して購買意向に結びつくという「媒介」の働きを確かめることが重視されました。
どのように調べたか
研究チームは、ある一時点での消費者の考えをたずねる横断的なアンケート調査を行いました。調査はGoogleフォームを使ったオンライン形式で、InstagramとFacebookを通じて配布され、2025年9月から10月に実施されました。
回答者は、週に1回以上SNSを使っていること、過去3か月以内にカジュアルダイニングで食事をしたことの二つの条件をどちらも満たす人に限られました。著者らは、インフルエンサーが紹介するカジュアルダイニング店に対する最初の購買意向に焦点を当てたとしています。最終的な回答者は343人です。
質問項目は既存の研究で使われてきた尺度をもとに作られ、英語からアラビア語に訳したうえで、再び英語に訳し戻して意味のずれを確かめる「逆翻訳」の手順がとられました。各項目は7段階で回答する形式です。分析には、複数の概念どうしの関係をまとめて推定する統計手法(PLS-SEM)が用いられ、測定の信頼性や、各概念がきちんと区別して測れているかも確認されたと報告されています。
主な結果
分析の結果、信頼性、専門性、類似性の三つはいずれも、ブランド態度と正の関係を示しました。つまり、インフルエンサーを信頼できる、詳しい、自分に似ていると感じる人ほど、紹介された店に好意的な評価を持つ傾向があったということです。
購買意向との直接の関係では、信頼性と専門性は正の関係を示しましたが、類似性については、著者らの設定した仮説は支持されなかったと報告されています。一方、ブランド態度と購買意向の関係は、調べた経路の中で最も強いものでした(標準化係数0.494)。
さらに、媒介の分析では、三つの特徴すべてについて、ブランド態度を経由して購買意向に結びつく経路が統計的に支持されました。類似性のように購買意向との直接の関係が支持されなかった特徴でも、ブランドへの好意的な評価を通じた間接的なつながりは確認されたことになります。
研究から見えること
この研究は、インフルエンサーの特徴が消費者の購買意向と結びつく過程に、ブランドへの評価という心理的な段階が介在していることを、サウジアラビアのカジュアルダイニングという、これまで実証研究の少なかった文脈で示しました。著者らは、信頼性・専門性・類似性がインフルエンサーを選ぶ際の重要な観点になりうると述べています。
ただし著者ら自身が指摘しているように、対象はサウジアラビアのカジュアルダイニング利用者に限られ、条件に合う人を選んで集めた標本であるため、他の国や業種にそのまま当てはまるとは限りません。また一時点の調査であり、時間による変化はとらえていません。こうした範囲の中で、インフルエンサーの影響を「誰が勧めるか」と「ブランドをどう感じるか」の両面から捉える視点を提供した研究といえます。
原著論文の著者・所属:Lojaina Alnakar(Faculty of Business, Economics and Social Development, Universiti Malaysia Terengganu, 21300 Kuala Nerus, Malaysia)、Marhana Mohamed Anuar(Faculty of Business, Economics and Social Development, Universiti Malaysia Terengganu, 21300 Kuala Nerus, Malaysia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Lojaina Alnakar, Marhana Mohamed Anuar. The mediating role of brand attitude in the relationship between influencers marketing on social media and purchase intention in Saudi Arabia. Journal of Nusantara Studies (JONUS) 2026-10-10. DOI: 10.24200/jonus.vol12iss1pp37-59. 原著ライセンス:CC BY.